
6月22日投開票の東京都議会議員選挙において、自民党は過去最低の当選者数に終わった。今年は都議選と参院選が重なる12年に1度の「巳年選挙」イヤー。
都議選に大惨敗の自民党、甘かった見通し
「今年は都議会議員選挙と、参議院選挙が同時に行なわれる12年に1回の年なんです。しかもその年で、都議会選挙で勝たずして、参議院選挙で勝った歴史がないんです」
都議選期間中の6月14日夜、筆者が取材におもむいた文京区の自民候補者の集会で、こう語っていたのは、自民党の武見敬三参院会長(73)。武見氏が語った通り、都議選と参院選がともに行なわれる12年に1度の“巳年選挙”では、2つの選挙の結果が連動してきた。
たとえば、消費税導入やリクルート事件の逆風に悩まされた1989年の都議選では、自民党は選挙前から20議席を減らして大敗。その後の参院選では、自民党は改選議席をほぼ半減させ、与野党逆転という歴史的な結果となり、宇野宗佑総理(当時)は退陣に追い込まれた。
そして今回の都議選――。政治団体「都議会自民党」の裏金問題なども重なり、自民党は無所属の自民系候補とあわせても21議席と、当選者数は過去最低に落ち込んだ。前述の“武見理論”に則れば、7月3日に公示される参院選の結果は自ずと見えてくる。
「都議選で40議席近くとれると言っていたのが、フタをあけてみれば21議席。いったい、あの調査はなんだったのか」
吐き捨てるようにしてそう語るのは、自民党の中堅参院議員だ。“あの調査”とは、5月下旬に永田町に出回った自民党の情勢調査。それによると、5月10~11日の調査では、自民党は無所属の自民系をあわせて38議席をとれる見込みを出していたのだ。
当時、筆者が取材した党幹部もこの調査を前提に、「この通りの結果なんだ。都議選も参院選もそう負けない」と楽観ムードを漂わせていた。
さらに、「野党から内閣不信任決議案が出れば、議決をまたずに即解散」というような石破茂総理(68)の“強気姿勢”をうかがわせる報道も出ていた。
だが一方で、改選を迎える参院候補者は情勢調査のデータに対し「政権浮揚の材料もないのに、こんなにとれるとは思わない」と語っていた。
自民党の選対委員長経験者も「自民調査が当たったことはほとんどない」と、当初から悲観的な反応を示していた。
「石破茂総理をはじめ、党幹部は甘すぎる自民党調査を根拠に、“いざ選挙になれば勝てる”と考えて、政権運営をすすめていたフシがあります。さらに、小泉進次郎農水相(44)の矢継ぎ早の政府備蓄米放出などもあり、支持率が下げ止まり傾向になっていたことも、楽観ムードに拍車をかけていた。
だからこそ、物価高対策としての消費減税にも一貫して後ろ向きだったし、2万円の現金給付という中途半端な公約で選挙を乗り切れると考えていた。しかし、都議選の大敗により、石破政権が描いていた戦略が崩れたのです」(前出・中堅参院議員)
唯一の希望“小泉効果”もイマイチ…
そして、石破政権の唯一の頼みの綱になっている“小泉効果”も先行きは不透明だ。都議選期間中には、小泉氏の声が吹き込まれた電話で支持を呼びかける「オートコール」が都内で流されたが、効果は限定的だったといわれている。
6月23日の農水省の発表によると、備蓄米の放出により、スーパーのコメ価格は3ヶ月ぶりに3000円台までに下落するなど一定の成果は出しているが、中長期的なコメ価格をどうしていくかといった出口戦略は見えていない。
「小泉氏は発信力とスピード感に定評がある半面、どこでボロが出るかわからない怖さもあります。
こうしたなか、石破総理は6月23日の記者会見で、参院選の目標について「非改選と合わせて過半数(125議席)をちょうだいできるよう全力を尽くす」と語った。
現在、自公両党は参院で141議席。このうち今回の参院選で改選は66議席で、非改選は75議席だ。50議席を確保できれば、過半数は維持できる計算になる。現状から16議席を減らしても目標達成となる“低すぎるハードル”なのだが、都議選の結果を受け、その達成すらも危うい雰囲気が漂ってきた。
自民党の閣僚経験者も「都議選と参院選は必ず連動する。このままいけば惨敗だろう」と危機感を強める。
さらに、自民党の岸田文雄前総理(67)は6月25日の講演で「(参院選で)与党過半数割れになるとますます物事が決められない政治になる。政権交代も起こり得る」と語った。そのうえで、野党との連携や連立の枠組み拡大の必要性にも言及したという。
石破政権の勢いが衰えをみせるなか、参院選後を見越した自民党の “多数派工作”も本格化していきそうだ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班