〈座間9人殺害で死刑執行〉「カネ目的が徐々に性的興奮に変化」白石死刑囚が語らなかった“心の闇”、女性記者の面会には「今日はキャバクラみたい」「女友達を呼んで」
〈座間9人殺害で死刑執行〉「カネ目的が徐々に性的興奮に変化」白石死刑囚が語らなかった“心の闇”、女性記者の面会には「今日はキャバクラみたい」「女友達を呼んで」

自殺願望のある9人の男女を「一緒に死のう」などと神奈川県座間市内の自宅アパートに誘い出し、約2ヶ月の間に次々に殺害したとして強盗・強制性交殺人などの罪で死刑が確定していた白石隆浩死刑囚(34)。その死刑が6月27日午前、東京拘置所で執行された。

死刑執行は2022年7月以来3年ぶりで、石破内閣発足以降は初めて。 

「犯罪史上まれに見る悪質な犯行」と死刑

確定判決によると白石死刑囚は2017年8月から10月の間、同市内の自宅アパートで男性1人(当時20歳)と女性8人(同15~26歳)の首をロープで締めて殺害、現金を奪い遺体を切断解体してゴミ集積所などに遺棄した。女性8人については全員に性的暴行を加えていた。 

裁判員裁判で行われた東京地裁立川支部の公判では、白石死刑囚の弁護側は被害者が殺害に同意していたとして刑の軽い承諾殺人罪の適用を主張。

しかし2020年12月の判決では被害者はいずれもいきなり襲われ、殺害されたとして弁護側の主張を退け、所持金を奪ったり性的欲求を満たすためにSNSで誘い出し、遺体を解体遺棄して証拠隠滅を図った「犯罪史上まれに見る悪質な犯行」と死刑を言い渡した。

その後、弁護側は判決を不服として東京高裁に控訴したが、白石死刑囚が取り下げ、2021年1月に死刑が確定していた。

鈴木法相は6月23日に執行命令書にサインしたといい、その理由を「性的、金銭的欲求を満たす身勝手な理由から、約2カ月の間に9名もの尊い人命を奪い、社会に大きな衝撃を与えた。ご遺族の方々にとっても無念このうえない事件だ。法務大臣として、慎重なうえにも慎重な検討を加え、死刑執行を命令した」と述べた。

この事件を取材、被告段階の白石死刑囚と拘置所で面会を繰り返し『冷酷 座間9人殺害事件』(幻冬舎アウトロー文庫)を著したノンフィクションライターの小野一光氏は、死刑執行の報を受けてこう語った。

「僕が彼に会ったのは2020年の7月から9月の間の計11回になります。場所は立川拘置所です。まず話してみて驚いたのは、彼が『普通』だったということですね。

9人も殺している犯行内容と本人の印象が結びつかない『軽さ』があったというか……。ただ、事件の話になると腕を組んで、目をつぶって下を向きながら話すような感じで。そのときはやはり雰囲気が変わりました」

「当時付き合っていた女性がいて、その人は殺してない…」 

取り調べや公判では金銭への執着をうかがわせる言動が目立ったとされる白石死刑囚。以前は風俗で働く女性をスカウトする「キャッチ」で生計を立てていたという経歴も含め、小野さんの見た白石死刑囚はどんな人物だったのか。

「僕は面会する際、彼に謝礼を支払ってました。それは原稿にも書いてあるんですが。当時はある出版社から謝礼を出してもらって、本人にもそれを伝えて了承してもらいました。不思議だったのは、彼は一度取材を受けると約束したら必ず守るというか、そういう生真面目さはありましたね。

あと、以前に有名なキャッチグループに所属していたようで、彼は報復を恐れていたのか、逮捕後もそのグループに関してはあまり話したがらなかったですね。その一方で犯行の動機などに関しては、まだ詳しく表に出ていない段階からかなり細かな内容も僕には話してくれたんですよ。こっちが『なんでそんなことまで喋るの』って驚くぐらい」

その犯行動機とはどういうものだったのか?

「最初はお金でしたね。とにかく、最初は『ヒモ』になろうと思って女性に部屋を借りてもらったけど、相手がそこまでお金を持っていないとわかると殺害した。だから、当初の目的は本当にお金だったんですよ。

でも、だんだんと性的な興奮の方に引っ張られていったというか。殺すことへの興奮、それに伴う性的な要素ですね。後半になると目的がどんどん変わっていって、性的な目的が主になっていった。後半になると殺害後の性行為もあったようです」

 身勝手極まりないが、そんな男でも守りたい存在があったという。

「当時付き合っていた女性がいて、その人は殺してないし、僕にもその彼女のことはあまり書かないでくれとは言っていました。

そのいっぽうで『橋本環奈や深田恭子の写真集を差し入れてくれ』という脂ぎった要求もしてきたこともあります。実際に差し入れしましたけど、途中から急に向こうが面会を拒否するようになって、それきりですよ」

女性ジャーナリストに「女の子の友達も連れてきてほしい」と言うことも

女性の目からはどううつったのだろう。これまで10回ほど白石死刑囚と面会をしてきた女性ジャーナリスト(30代)は「なんともいえないですね」と首を振りこう話した。

「最初こそ金銭を要求してきましたが、終盤は『お金いらないから来てくれ』って。彼は『雑談』を好みました。毎回、私の着ている服を褒め、他の女性記者と2人で行くと『今日はキャバクラだ!!』と破顔する。差し入れのおねだりは頻繁にあり、ゲーム『女神転生』の設定集や脱獄囚が活躍する少年漫画を欲しがっていました。

『拘置所の中では好きな音楽が聴けないから、私の好きな曲の歌詞をプリントアウトして入れてください』と頼まれたこともあり、言われた通り平沢進の『パレード』などの歌詞を印刷して差し入れました」

この女性ジャーナリストに積極的だった白石容疑者は「女の子の友達も連れてきてほしい」と言ったこともあったという。

「『あなたの似顔絵を描いたんです』と絵を見せくることもありましたが、それがどう見ても、髪型から似ても似つかないもので『使いまわしをしているな』と思いました。彼は饒舌ではありましたが、事件についてや、被害者について聞くと、私に対しては常にきょとんとしていた。本当に、彼が何を考えていたのかは、最後までわかりませんでした」

記者によって“顔”を使い分けていた白石死刑囚、すべてを闇に閉じ込めたまま、シリアルキラーは絶命した。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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