
2025年6月13日から22日まで開催された上海国際映画祭。ASIA NOWという新部門で、日本で観客動員62.4万人、興行収入8.2億円(6月19日時点)を超えた『かくかくしかじか』が上映された。
27回目を数える上海国際映画祭
日本と同じ梅雨の上海。すでに真夏のような暑さと湿気がありながらも、雨が降るとまだほんのりと涼しい。そんな夏の始まりを告げるようなこの時期に、第27回上海国際映画祭が開催された。
劇場にはフォトスポットや公式グッズのポップアップショップなどが設置され、かなりの盛り上がりを感じさせる。
『かくかくしかじか』の上映は3日間、3つの会場で行なわれた。1日目は曹杨影城という映画館。1970年代からあるという歴史ある映画館だ。
支配人のGaryさんによると、平日の朝10時の上映にもかかわらず前売りチケットは200枚以上売れたとのこと。上映がはじまると館内は笑い声や啜り泣く声が溢れ、エンドロールの前と後には拍手もわき起こった。反応は上海でも上々のようだ。
上映が終わると、チケットと特典を手に上映表の前で撮影するファンが多数。
「永野芽郁さんの演技がとてもよかった。
2日目の会場は艺海剧院。普段は演劇を上演するアートシアターだ。直前のスコールにもめげず客席は9割以上埋まっており、上海の映画ファンの熱気を感じた。
ロビーのモニターに映画のポスターが表示されると、これを撮るために上海の映画ファンたちが集結。皆、手にはチケットと入場特典のペーパースタンドを持っている。
「Mei-chanだいすき!」と日本語で反応してくれるファンも。この日も笑い声や啜り泣きの声が会場を包み、拍手とともに上映が締められた。
現地の盛り上がりに東村アキコ氏も感動!
3日目の会場は宛平剧院。こちらも普段は演劇を上演する巨大な劇場だ。この劇場ではスタッフに許可をとり、スクリーン内の写真も撮ることができた。映画祭のスタッフもファンもとても協力的で、映画祭の浸透と映画への愛を感じた。
演劇用のすり鉢状の席を埋めていく上海の映画ファン。この日も笑い声やリアクションの声が大きく響く。そしてエンドロールではまた拍手が起こった。
上映後、目を腫らして答えてくれた原作ファン。中国語版を読んでファンになり、今回の映画に足を運んだという。遠く福建省から来たというファンもいた。
3日間の取材を終え、あらためて強く感じさせられたのは、国境を越えた映画の力だ。
日本の宮崎、金沢、東京の3都市をまたぐストーリーが現地の人々に理解され、笑いと涙とともに、大きな反響をもって受け入れられている光景は感動的ですらあった。
また、日本とは笑いどころやリアクションが違う点も興味深い。大泉洋演じる日高先生が原付で登場しただけでひと笑い起きたり、お金にまつわる話では毎回笑いが起きたり、父・健一が原稿にぜんざいをこぼすシーンでは悲鳴があがったりと、賑やかな劇場は終始いい雰囲気に包まれていた。
特に上映後は感動の余韻もあったのか、多くのファンが非常にテンション高く「素敵な作品をありがとう」と取材に応じてくれた。
これには、原作者の東村アキコ氏も感動した様子でこう話す。
「上海映画祭でたくさんのお客様が観に来てくださり、笑い声や啜り泣く声、終幕後の拍手の動画を見て、リアクションの大きさに本当に感動しました。今や世界中で大人気の日本の漫画ですが、日本には昔から少女漫画という大人気のジャンルがあって、今も数多くの若い女の子たちが日々、少女漫画家を目指して頑張っています。
もちろん少年漫画にも女性の作家はたくさんいます。男の子だけでなく女の子もこうしてド根性で漫画を描いていることが上海の方々にも伝わったなら、こんなに嬉しいことはありません。
中国語字幕では「先生」は「老師」、「描け!」は「画!」だそうです。国を超えて永野芽郁さんと大泉洋さん、キャストの皆さんの素晴らしい演技がお客様に感動を与えて、関監督の作った素晴らしい映像世界を知っていただけて嬉しいです。ぜひ中国でも上映してほしいと願っています」(東村氏)
まさに「映画は国境を越える」を実感した3日間だった。
文/集英社オンライン編集部