<7月5日大災害説>26年前、ノストラダムスの予言を信じて会社を辞めた男は今?「当時は予言を信じていたほうが救われる感覚があった」
<7月5日大災害説>26年前、ノストラダムスの予言を信じて会社を辞めた男は今?「当時は予言を信じていたほうが救われる感覚があった」

「7月5日に日本で大災害が起こる――?」

そんな予言が、日本のみならず海外でも話題となり、ついには訪日旅行のキャンセルや航空便の減便という“現実”を引き起こしている。まるで1999年の「ノストラダムスの大予言」を彷彿とさせるようだ。

予言を信じて経済にも実害

事の発端は、漫画家・たつき諒さんが1999年に発表した短編エッセイ漫画『私が見た未来』。特徴は、彼女が夢の中で見た未来の出来事を「夢日記」として記録し、それをもとに作品としてまとめた点にある。この作品は以前、東日本大震災を予言したとして話題になった。

その後、絶版となっていたが、2021年に『私が見た未来 完全版』として再刊されると注目が集まった。新たに収録された「2025年7月に大災難が起きる」という予知夢の記述が近頃、SNSなどで話題になっているのだ。

特に“7月5日”という具体的な日付と、“早朝4時18分”という時刻の描写が人々の不安を刺激している。

この“予言”は国内にとどまらず、香港、中国、ベトナム、タイなどアジア各国でも拡散。中でも香港では、著名な風水師による「7月に日本で大災害が起こる」との発言もあり、たつき諒さんの予知夢と重なって不安が急拡大したという。

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2025年5月の香港からの訪日客は前年同月比で約11%減少。異例の落ち込みを受けて、気象庁は「予言は科学的根拠のないデマである」と注意喚起に踏み切った。

こうした「7月5日の大予言」が巻き起こす空気は、1999年に日本中を覆った“ノストラダムスの大予言”を彷彿とさせる。

フランスの16世紀の予言者ノストラダムスが書いた曖昧な詩が「1999年7月、世界が滅ぶ」と解釈され、五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』(1973年)はシリーズ累計600万部を超えるベストセラーに。テレビや雑誌では連日の特集が組まれていた。

1999年を前に「どうせ地球が滅びるなら働く意味がない」と考え、仕事を辞めて田舎に移住したり、退職金で旅行に出たりする人も続出した。ドキュメンタリーやトーク番組でも終末論が飛び交い、『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』といった国民的漫画・アニメでもノストラダムスをテーマにしたエピソードが制作された。

さらに人気テレビ番組『進め! 電波少年』では、予言に備えて地下にシェルターを作るという企画も放送され、笑いと不安が入り混じった社会現象となった。

世界が滅亡する前に彼女を作りたい……!

「ノストラダムスの予言を信じて会社を辞めました」――そう話すのは、1999年当時20代後半で営業職だったCさんだ。

予言をきっかけに上司に暴言を吐き、そのまま辞表を提出したという。

「ちょうどそのころ、職場の理不尽さに限界が来ていて、なかば予言を言い訳にして、自分の決断に勢いをつけて会社を辞めることにしました。予言を信じていたほうが救われるような感覚が、当時の自分にはあったんです」

Cさんはその後、実家に帰り休養し、「滅亡しなかった地球」を目の当たりにしたあとにボチボチ仕事を探し、今は安定した生活を送っているという。

一方で、思春期ならではのエピソードもある。

「どうせ世界が終わるなら、気持ちだけでも伝えたいと思った」――と語るのは、1999年当時中学2年生だったDさん。

終業式から夏休みにかけて、好きだったクラスメイト3人に立て続けに告白したという。

「好きな順に行きました。最初の本命の子でやめておけば普通の告白でしたが、振られた後に、『このままでは彼女もできないまま死んでしまう!』と思ってしまい、ダメなら次、またダメならと告白して、3人目は半分やけくそのような状態でした。

結果、全員に振られました」

夏休み明けの9月、Dさんは気まずさを抱えて学校に行くことに。案の定、3人に告白したことはクラス中に広がっていたという。

「 “ノストラダムスを信じて”なんて言えず、ただただ急に3人に告白したヤバいやつという扱いでした。今思えば、予言を信じてしまったと、正直に言ったほうがマシだったと思います。

ただ、そんな理由を言ったら相手が傷つくかも……と、謎の男気もあったんですよね。あとはやっぱり、ノストラダムスを言い訳にして、単純に告白したかったんだと思いますよ」

1999年の“終末の夏”には、終末論をテーマにしたオカルト本や映像作品が売れ、街の書店には関連コーナーが設けられるほどだった。

ネット上でも、当時の異様な盛り上がりを振り返る声が多くあがっている。

〈ノストラダムスの予言を信じて学校辞めたやつ居たけど、あいつ元気かな…〉

〈父、ノストラダムスを信じて、保険も全て解約して全て金に変えて全財産使い果たそう!そして子供2人と心中しよう!と本気言っていたそうで、このコロナで陰謀論にハマらなかったの奇跡だと思う〉

〈笑われるだろうけど、30年前に母はノストラダムスの予言を信じて、関東から九州に移住した。大枚かけて鹿児島にシェルターも作った(今は売っちゃってないけど)〉

さすがに今回は、そこまでの騒ぎとなっていないが、それでも現実の経済や人の行動にまで影響を与えている事実には、驚かされるばかりだ。

取材・文/集英社オンライン編集部

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