
今年50周年を迎えるスーパー戦隊シリーズ。多くの子どもたちに夢と希望を与えてきたヒーローには、必ずと言っていいほど「女性戦士」が登場してきた。
「私のターニングポイントにしたい」
「『もう無理かな』とあきらめてしまいそうな時期だったので、この役をいただけたことで自信につながっています」
そう語るのは、女優の今森茉耶。TikTokで注目を集めて芸能界に入り、2023年には若手女優の登竜門として知られる講談社主催の「ミスマガジン」でグランプリを受賞。
その後は、写真集を出版したり、「ミスマガジン2023」のファイナリストたちと共演する映画や、若手育成を目的とした作品に出演するなど、順風満帆な道を歩んでいると世間からは思われていた。
しかし、彼女自身は「このままではいろいろなことができないな」と悩んでいたという。そんなときに参加したのが、スーパー戦隊シリーズのオーディションだった。
「私が住んでいた宮崎では当時、放送が2週間遅れで、しかも朝5時くらいにやっていたので、スーパー戦隊シリーズにはとても疎かったんです。だから、これがヒロインの役なのか、そもそもヒロインが何人いるのか、あるいは敵の女幹部のオーディションなのかも分からず、『何の役を受けてるんだろう?』と思っていました」
彼女が受けていたのは、現在放送されているスーパー戦隊シリーズ50周年の節目を飾る、シリーズ第49作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』の一河角乃(いちかわ・すみの)/ゴジュウユニコーン役だった。
シリーズで初めて、女性キャラクターがブラックを演じるという大役だが、実は今森は不思議な手応えを感じていたという。
「オーディション前はブラックとは聞かされていませんでした。ただ、『何色を演じたいですか?』と聞かれると思っていたので、そのときは『ブラック』と答えようって決めて、黒い服で臨んだのです」
だからこそ、受かったときは運命を感じてしまった。
「ただ、『ブラックなんだ…。
でも、『ゴジュウジャー』で1年間演技に挑めるのは、本当に大きなチャンスだと思っています。こんな経験はもうできないかもしれない…。だからこそ、この役を私のターニングポイントにしたいと思っています」
アクションシーンは当日覚える!?
これまでもグラビア撮影でさまざまなロケ地を訪れてきた今森だが、『ゴジュウジャー』では茨城、栃木、神奈川、千葉、埼玉など、北関東中のさまざまな場所での撮影に挑んでいる。
中にはアクションシーンもあるはずだが、まだ演技経験が浅いうちは大変ではないだろうか?
「そもそも、合格を知らされてから撮影まではそこまで期間がなかったので、役作りそのものが大変でした。アクションシーンは最近になって実践するようになったのですが、実は練習してから撮影に入るわけではないんです。
現場で『今日はこういうアクションをします』と言われて、その場でアクターさんに教えてもらって、10分後には撮影という感じ……。毎回緊張感があります」
幼少期から特にスーパー戦隊シリーズに親しんでいたわけではないという点は、一見ディスアドバンテージになりそうだが、実際はそうでもない。
「スーパー戦隊シリーズは男の子向けの番組だと思っていたんです。
今回、彼女が演じる一河角乃/ゴジュウユニコーンは、クールだが必要とあらば愛嬌も武器に使う、元・警察官の探偵という役柄だ。
「一河角乃は、感情の変化や人によって態度を変えるのが分かりやすい子。あざといときはあざといし、嫌いな人にはツンツンしていて、面白いキャラクターなんです。
普段の姿はかわいくて可憐だけど、アクションシーンを演じている時は超カッコいいので、そのギャップにも注目してほしいです」
同作の紅一点であり、スーパー戦隊シリーズ史上初となる“女性ブラック”。しかも、50周年の節目となる作品だ。その重圧は徐々にのしかかっていく。
「最初は不安を抱いていただけで、責任は感じていませんでした。ゴジュウユニコーンを演じるということが、どれだけ重大なことなのかも、よく分かっていなかったんです。でも、少しずつ責任感が芽生えてきて、自分自身の役への理想も高くなってきました」
プロデューサーたちと役作りについて話す中で、「ブラックだからというわけではないけど、チームの男性陣に負けないような、女性としての強さを持っていてほしい」と言われたと話す。
「5人の中の紅一点は『華やか』というイメージがありますが、それだけではなく、力強さというものもブラックとして表現していきたいです。
今まさに撮影中ですが、1話前の自分のシーンを見返すと、『ここもう少しこうできたよな』『ここは違ったかも』と思うこともあります。
『ゴジュウジャー』は、毎週のテレビ放送だけでなく、映画『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー 復活のテガソード』が7月25日から全国での公開も控えている。
「50周年を記念する作品ということで、過去のスーパー戦隊シリーズのレッドもたくさん登場します。『最近、スーパー戦隊シリーズから離れていたな』という人も、この映画を見れば、きっと懐かしさでテンションが上がると思います。
さまざまな世代の方に楽しんでもらえる要素がたくさん詰まった本作を、たくさんの人に見ていただきたいですね」
女優・今森茉耶の可憐さと力強さを、ぜひ劇場でも見届けてほしい。
取材・文/千駄木雄大 撮影/矢島泰輔