
まもなく夏休み。共働き世帯の増加に伴い、小学生の子どもたちは平日も毎日学童に通うというケースが多いが、保護者を悩ませるのが毎日のお弁当作りだ。
夏休みの「学童弁当」作りに悩む保護者たちの声
給食が出ない学童クラブでは、夏休み中は毎日お弁当を持参する必要がある。共働き家庭が増える中、早朝のお弁当の準備は多くの保護者にとって悩みの種となっている。
都内在住の母親は冷凍食品を使い倒しているという。
「うちの子が通う学童には『父母会』があって、『弁当係』になった人が外部の弁当業者の手配、当日の配膳と片付けをするというシステムがあったんだけど、父母会を退会しちゃったのでお弁当作りを頑張ってます。
最初はおかずを手作りしていたけど、冷凍食品メインに路線変更したら、子どもも好んで食べてくれて。朝、凍ったまま入れて昼にはちょうど食べごろになってるので、冷凍食品は便利ですね」
また編集部の40代記者はこのように話した。
「うちの子の学童は基本的に弁当持参で、希望者は宅配弁当が利用できるというルールです。うちは男の子なので、コンビニの総菜とかパンが多いかな」
一方でこんな声も。40代の母親は「子どもの好き嫌いが多い」と言う。
「初めての夏休みで今から頭を悩ませています。というのも、入学前に何度か学童にお弁当を持って行かせたときに、冷凍食品のお惣菜を入れたら『あれはおいしくないからやめて』と子どもから言われてしまって。
子どもによって食べものの好き嫌いはさまざま。保護者の悩みも千差万別なのではないだろうか。
弁当作りの負担感…自治体が始めた「新たな選択肢」
学童のお弁当問題をめぐっては、自治体で新たな取り組みが広がりを見せている。
東京都調布市では、今年度の夏休み期間に市内のすべての学童クラブで、弁当事業者による弁当提供を実施することにしたという。
「これまでは、一部の学童クラブで夏休み期間中にレトルトカレーやおにぎりなどを用意する形で、保護者の負担軽減につなげるという取り組みはしていました。全体的に見ても学童クラブでのお弁当提供に関するニーズは高まっていたという背景があります。
令和6年度の春休み期間に、一部の学童クラブで弁当事業者による弁当提供の試行実施を行ないました。その結果、保護者から『良い取り組みだと思う。夏休みも利用したい』という声を多くいただいたので、保護者の方の就労支援の一環という形で、今年度からお弁当提供を実施することになりました」
このように話す同市の担当者によれば、「希望者はオンライン上で申し込みをしていただければ業者の弁当を利用できる」という。
「基本的には保護者の方にお弁当を用意していただくことが前提というスタンスではありますが、保護者が忙しかったり、どうしてもお弁当の用意が難しかったりする場合に、希望すれば市が選定した事業者の提供する弁当を利用できます。利用にあたっては、前日の夜までにオンラインで事業者に申込みをしていただく形になります。費用は保護者に負担していただきます。
ただ、食物アレルギーのあるお子様に関しては利用を控えていただくというルールにしており、その点に関しては保護者の方にも必ずご協力いただきたいと考えています」
最後に担当者はこのように付け加えた。
「現場の方と話すと、『やっぱりお母さんの作ったお弁当がいい』というお子さんが多いみたいです。コンビニのパンでも、市販のお惣菜を詰め替えたものでもいいのですが、どんな形であれ『お母さんが用意してくれたもの』が、お子さんからするとやっぱり嬉しいようですね」
気になる食中毒のリスク、何に気を付ければいい?
外部業者も選択肢に加わるなど、学童の弁当問題にかかる保護者の負担軽減に向けた取り組みが少しずつ広がりを見せるものの、「手作りのお弁当がいい」というのが多くの子どもの本音なのかもしれない。
ある学童クラブの担当者は、「うちは外部業者の利用をしていないため、お弁当の持参が原則です。特にお弁当の内容にルールは設けていませんが、コンビニのおにぎりなどを持たされたお子さんが『なんで僕だけこれなの、みんなは手作りなのに』と文句を言っているケースもありましたね」と話した。
では、食中毒が気になるこれからの季節に、どんな点に気を付けて調理すればいいのだろうか?
農林水産省では、お弁当づくりによる食中毒を予防するためのポイントとして、主に以下の点を挙げている。
・調理の前は必ず手を洗う(手や指に傷がある場合は調理用の手袋などで手を覆う)
・弁当箱や調理器具はきれいに洗ったうえでしっかり乾かしたものを使う
・野菜や果実、魚介類は流水で洗う(肉は食中毒菌が飛び散るので洗わない)
・食材はしっかり加熱する
・おかずの汁気はよく切る
・梅雨時期や夏場は、使い捨てカップを利用する
・ごはんやおかずは冷やしてから詰める
(農林水産省『お弁当づくりによる食中毒を予防するために』より一部引用)
また、多くの保護者が活用するであろう「作り置きおかず」について、同省の担当者は次のように話した。
「食材は一度加熱しても菌が完全になくなるわけではなかったり、少し残ったりします。食中毒菌の場合、人間の体温ぐらいでどんどん増えてしまいますので、作り置きのおかずはお弁当箱に詰める前に十分再加熱をしてください」
また保管に関しても注意が必要だ。学童クラブ内に保管用の冷蔵庫がないケースも多いだろうが、「保冷剤と保冷バッグを活用することも大切」と担当者は話した。
異例の暑さですでに疲弊している保護者も多いだろうが、さらに長期間の弁当作りが加われば、その負担感はあまりにも大きい。今後さらに多様な支援策が広がっていくことが期待される。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班