
「遠方でひとり暮らしの親が倒れた! 麻痺が残り、退院後の暮らしをどうしよう……」こんなふうに、家族の介護や老後の住まい問題に急に直面することは少なくない。いざという時に慌てず、また後悔しない選択をするにはどうすればよいのか?
日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」が知見を結集して監修した、そんな疑問や不安を解消する書籍『伝説の相談員が教える幸せになれる老人ホーム探し~マンガでわかる高齢者施設~』より、一部を抜粋、再編集してお届けする。
認知症の方に合った老人ホームの選び方
認知症をもつ方が老人ホームに入る場合、まずは「認知症の受け入れ体制があるか」が大きなポイントです。老人ホームの種別ごとに、特徴を解説します。
●グループホーム
認知症をもつ方が、生活に必要な支援を受けながら共同生活を行う施設です。認知症ケアの専門スタッフが配置されており、1ユニットの定員が9人という少人数制のため、家庭的な雰囲気で過ごせるのが特徴です。
認知症の方は環境の変化に敏感で、施設での暮らしに適応するのが難しいことも多いのですが、少人数制だと比較的適応しやすいとされています。
●特別養護老人ホーム(特養)
比較的安価に入居できる公的介護施設で、経済的な負担を抑えたい方に向いています。入居対象は原則「要介護3」以上なので、認知症の症状が進んでいる方にとっては頼りになる選択肢です。
ただし地域によっては入居待機者が多く、すぐに入居できない場合も。
●有料老人ホーム
民間の介護施設で、特養に比べて割高ですが、入居条件が比較的緩やかです。施設ごとに特色が大きく異なり、認知症ケアを充実させている施設もあります。施設の運営方針や提供されるサービスをよく確認することが大切です。
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認知症という困りごとを抱え、「とにかく入居さえできれば……」と考えるご家族の気持ちもわかります。ただ、認知症の方は環境の影響を受けやすく、適切でない環境下では症状が進行するおそれもあります。
・入居後の生活は、ご本人が望む生活に近いか
・自宅での習慣や趣味を、可能な範囲で続けられそうか
・スタッフがゆとりをもって入居者に接しているか
・入居者が放置されていないか
・帰宅願望や暴言、暴力などに施設としてどう対応してきたか
認知症の方が入居するメリット・デメリット
認知症をもつ方が、施設に入ることで認知症の症状が進んでしまうことを「リロケーションダメージ」といいます。これを恐れて、施設への入居に踏み切れないというご家族も少なくありません。
しかし、このリスクは、施設スタッフの対応やご家族のサポートで最小限にできるのです。例えば、短期間老人ホームに宿泊する「ショートステイ」から始めることで、少しずつ環境に慣れていくことができます。
また、入居時に壁掛け時計やフォトフレーム、食器など、自宅で愛用していたものを持ち込むことで、不安を和らげることができます。そして、入居後も家族が定期的に訪問することでご本人が安心できるようにし、環境への適応をサポートすることも大切です。
一方で、実は、施設入居が好影響をもたらすことも少なくありません。というのも、施設では生活リズムが整えられ、十分な食事やケアを受けることで身体状態が改善することがあります。
認知症の症状は身体状態の悪化が原因の場合もあり、結果として、認知症の症状の進行が緩やかになることがあるのです。
また、施設内での交流や活動が刺激となり、精神面や行動に良い変化をもたらすことも。認知症の症状によって施設入居を諦めている方も、まずは一度施設に相談してみてください。ご本人とご家族、双方の負担を軽くして、より良い生活を実現できるはずです。
文/小菅秀樹 マンガ/マサまさる
伝説の相談員が教える幸せになれる老人ホーム探し ~マンガでわかる高齢者施設~
「LIFULL介護」編集長・小菅秀樹 (著), マサ まさる (著)
“いい老人ホーム”なんてありません!?
あなたと家族にぴったり“合う”施設を見つける方法教えます。
日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」編集長が監修。老人ホーム探しの重要なコツを、マンガでわかりやすく教える本です。ケーススタディ・マンガの各話に詳しい解説文が付いているので、知識ゼロからでも気軽に、確かな知識を得ることができます。親やご自身の「老後の住まい」を考えたい人のための1冊です。
【この本の特徴】
・オムニバス形式のストーリーマンガで気軽に読める
・施設の種類や介護保険制度などのポイントを解説文でしっかり学べる
・業界大手「LIFULL 介護」の知見を結集
・これだけはおさえておきたい、施設探し「かんたん6ステップ」収録
・「LIFULL 介護」の調査をもとにしたコラムも充実
【もくじ】
ケース1 とにかく「いい老人ホーム」に入れてほしい! ランキングを捨てて、「合う老人ホーム」を探そう
ケース2 同居イコール親孝行じゃないの? 家族の役割と「続けられる介護」とは
ケース3 「安さ」で選んだはずなのに……お金が足りない!? 高齢者施設の費用の仕組みとは
ケース4 「人生の最期はふるさとで」がベストですか? 老人ホームの立地問題
ケース5 老人ホームなんて、どこも同じでしょ? 見学の重要性と見るべきポイント
ケース6 娘だからって、自宅介護しなきゃいけないの? 退院までに急いで探す時の注意点
ケース7 施設のご飯なんて、どこも同じでしょ! 軽視しがちな「食事」が実は重要な理由
ケース8 お金がないから、特養しか無理ですよね……? 特養と有料ホームの違い、入居待ちの選択肢とは
ケース9 老人ホームなんて誰が入るか! 入居拒否の乗り越え方
ケース10 仲良し夫婦だから、一緒に入居したい! 夫婦部屋の注意点と「老老介護」問題
ケース11 元気なうちに探す終のすみか、後悔しないポイントは? 自立度が高い人の施設探しのコツ
(他、コラムや付録などを収録)