
参院選東京選挙区に無所属で出馬した山尾志桜里氏のX投稿が話題だ。選挙中に小5男子から「女性天皇と選択的夫婦別姓」を実現してほしいと頼まれたとのポストに「小5がそんなこと言うか?」との声が沸き起こり、山尾氏は事実だと主張しながらも投稿を削除した。
削除を求める抗議文を出したと表明した「小5男子」投稿騒動
問題のポストは9日、山尾氏の公式Xに投稿された。ノートとペンを持った山尾氏がしゃがみ低い目線から男性らしき人と会話する写真に、「三鷹駅。小5男子がわざわざ来てくれました!『政治家になにをやってほしいですか?』と聞いたら『女性天皇と選択的夫婦別姓』と即答。やるよ!」という文が添えられている。
これにネットでは「ヤラセじゃないのか?」との突っ込みが続き、山尾氏は同日のうちに「私へのバッシングにとどまらないので」と説明してポストを削除した。
いっぽう10日未明にはこのポストを扱ったネット記事を挙げ、当該メディアに対し削除を求める抗議文を出したと投稿。
「虚偽の決めつけに基づく批判の拡散、特に人格攻撃に至るようなものについては、このリプライ欄も含め、法的措置を検討します。特に今回は、私以外の方を傷つけかねない悪質なものもあるため、断固たる対応を行います。」
と強い姿勢を見せている。
目を引くのは小5男子が女性天皇の実現を求めたという部分だ。これは保守陣営が猛反対する中で山尾氏が公約の筆頭に掲げている。
政見放送で山尾氏は、
〈万が一にも皇位が途絶えてしまったら、国会を開くことも総理を任命することもできなくなって日本の政治はストップします。現状は男性天皇の男のお子様にしか皇位継承を認めない今の制度のもとで、次世代のお世継ぎはたった一人になってしまっています。
そこで男性天皇の女のお子様にも皇位継承を認めることが必要だと考えます。女性天皇の提案です。将来に向けては、女性天皇の男のお子様にも女のお子様にも皇位継承を認める。女系天皇、この選択肢も排除せず議論すべきです〉
と主張している。
山尾氏以外にこうした主張を掲げる知名度のある候補や有力政党はなく、主要な争点になっていない。
またそもそも天皇制に興味がある小学生は一般的にあまり多いとは言えないだろう。ネットで“小5男児が考えることか?”という疑問が噴出したのも不思議ではない。そこで小学生の教育に関わる塾関係者に意見を聞いてみた。
まず、大手中学受験の塾関係者は「小学生が『女系天皇』と『夫婦別姓』に興味ですか……政治に興味を持つ子はいても、私はこれまで出会ったことないですね」と話す。
「参議院選挙はおそらく今度の入試問題に出る可能性はありますが、国会の仕組みなどがメインで、そんな特定の政策をどうこう勉強する子はなかなかいませんね」(同関係者)
5年生の娘をもつ母親も首をかしげた。
「結婚制度だって小5の子はしっかり理解していないし、天皇も男性だけがなっているという制度もわかんないんじゃないかな。
山尾氏を直撃「私も選挙5回目で沿道の反応にはそれなりに敏感なんですが…」
いっぽうで私立中学の受験生が8割強を占める都内の公立小学校に6年生の息子を通わせる母親は、そうした子がいる可能性があるとも指摘する。
「6年生だと公民も習うせいか最近やたら息子を怒ると『基本的人権が~』と言ってきますね(笑)。『選択的夫婦別姓』とかそういう言葉は知らないけど、天皇制は少し興味があるようで、自分でネットで調べてますね。
息子の学校で高学年はタブレットを使った授業が当たり前で、宿題もパワポで資料作るからパソコンやネットに触れる環境だし、暇さえあればYouTubeも見てます。それこそ今、選挙中だからかウザイくらい政治家の動画が流れてくるじゃないですか。中身がわかってなくても洗脳されることも十分あると思いますよ。
あとウチの子は受験対策でテレビもニュースを結構見させてますね。自然と興味がわくことはあるかもしれません」(小6男児の母親)
同じ小5の男児を持つ40代の母親も近い意見だ。
「息子は最近YouTubeで弁護士の動画ばかり見て、法律にすごく詳しくなってきたんです。家でも『それって違法じゃない?』とか『民法ではこうだよね』なんて話をよくしています。
もし政治に関心が向いていたら、今回の子と同じような発言をしていた可能性もあると思います。
騒動が大きくなった10日の夕刻。関東を襲ったゲリラ豪雨にも負けず目黒駅前で選挙カーの上に立った山尾氏は「わたし、東京選挙区、嵐を起こすかもしれないと報道されてまいりました。その予兆かと思います」とツカミを入れながら、雷鳴が響く中、ズブ濡れになって女性天皇の実現を訴えた。
「皆さん、考えてみてください。お嫁に行って男の子を産まないとその家が途絶える、そのプレッシャーが女性にとってどれだけ辛いものか。そして、それが一般の家庭じゃなくて皇室だったらどんなに苦しいか。そんな苦しい思いをさせ、そしてこの国で皇位を継承することがほとんど不可能な制度、私たちでちゃんと変えましょうよ」(山尾氏)
さらに第二の公約である憲法9条改正による自主国防の確立を紹介しながら「この2つの問題はどの政党も票にならないと思って選挙の時には引っ込めます」と既成政党の姿勢を批判。
国民民主党が山尾氏に対し、過去の不倫報道問題を背景に参院選比例代表の内定を選挙直前に取り消したことにも言及した。「私は取り消しを受けて、結果として無所属になって本当に良かったと思ってるんです」とも言ってタンカを切ると、土砂降りの中で声援を送っていた数人から拍手が上がった。
雨上がりの11日、北千住で演説に立った山尾氏に“小5男児”のことで取材を求めると、「あの男の子のことはこれ以上記事にしてほしくないので…」と暗い表情で拒んだが、女性天皇を含む公約への反応については思うところを語った。
「私も選挙5回目で沿道の反応にはそれなりに敏感なんですけど、本当に多くの女性のかたに広がっていると感じます。
女性天皇というテーマの下に『女性を生きやすい社会にしてほしい』っていう地鳴りみたいなものが女性の声になって現れてる気がするんです。
男尊女卑の世の中でいろんなものあきらめてきたとか、男の子産まなきゃっていうお家のプレッシャーが今も実はあってとか。でもそれを言うと非難を受けるから誰かにおかしいって言ってほしいという女性と、男尊女卑の国でいい国になるわけないっていう男性の声も、地響きのように感じます」(山尾氏)
騒動を糧に、女性天皇議論に一層目が向くか――。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班