
「日本人ファースト」を売りに急伸するいっぽうで「外国人や外国ルーツを持つ人への差別だ」との批判も強まる参政党。支持急拡大が他党を脅かす中、某ホストクラブのホスト名義のアカウントが、同党に投票すれば料金を割り引くと示唆する内容の告知をSNSで行ない、党候補者が返信で感謝を表明。
参政党、公選法に抵触する可能性のポストが問題に
問題の投稿は「投票済み証明書が初回無料引換券に」との告示とともに、東京選挙区の投票用紙に参政党候補のさや氏と、比例代表の用紙には参政党と、それぞれ記した記入例を写した写真が添えられていた。
これが7月11日午前にポストされ、さや氏は同日夜、
〈感謝で一杯です!!みんなの思いを無駄にしないよう精一杯頑張ります〉
と返信。
この二つのポストが持つ意味について社会部記者は「公選法は選挙運動で有権者に飲食物を提供することを原則禁止しています。さや氏や参政党に投票すれば無料引換券がもらえると読める書き込みを、候補者本人が歓迎する内容を書いているので同法に抵触する可能性があります」と話す。
党も同じ判断をしたとみられ、さや氏の返信から約12時間後にXで、
〈【お詫び】 参議院選挙 東京選挙区さや候補の投稿につきまして、不適切な内容が含まれていたことを深くお詫び申し上げます。候補者の認識不足により、公選法に抵触する可能性のある投稿へ投票への感謝に対するコメントを行ってしまいました。〉
とする謝罪文を公表し、さや氏も同趣旨の謝罪を表明した。元の投稿もさや氏の返信も現在は削除されている。
党や、さや氏は元ポストの投稿者について「特別な関係ではなく、あくまで支援者のお一人」と強調している。
では、元ポストのホストはなぜ客への投票勧誘ともとれる応援を参政党に寄せたのか?
大手ホストグループ「冬月グループ」の副社長、みとなつ氏も参政党を強く推し、自分が管轄する店のスタッフ150名も「参政党に投票したいと思います」とXにポストしている。
参政党を応援する心情をたずねると、みとなつ氏は言う。
「神谷宗弊さん(党代表)の言葉が心を揺さぶるものがあるからですね。日本人ファースト、減税、反移民、改憲に賛成して関心を持っています。公約の中でも特に関心を持つのは、やはり『日本人ファースト』。日本人から搾り取った税金をどんどん海外へ流すのが許せなかった。まずは日本国内の苦しんでいる日本人を助けてから外国を助けろよって思うので。
ホスト業界は政治に関心を持つ人達の割合は少ないので『これに入れろ』と指示する行為はなかったと思うし、私自身もしていません。ですが若い子たちの政治への関心が参政党の登場で格段に強くなっているのは感じます」
別のホストグループ統括のB氏も「今回神谷さんのスピーチを聞き応援したくはなりました。ホスト業界を救うとは言っていませんが、話は聞いてくれそうだと感じました。自民党は話を聞くどころか悪扱いなので。口だけの自民党とは違い国民と一緒に未来のための国を作っていくという言葉に強く惹かれました」と期待を口にした。
しかし今年5月、参政党はホスト業界への規制を強化する内容の改正風営法に賛成している。ホスト規制を「悪扱い」ととらえるのならそれは参政党も同じである。
神谷氏が歌詞を原案した歌がホストの心にブッ刺さる
ホストクラブ業界でこうした考えが出てくる背景を業界に詳しいライター、C氏が解説する。
「なぜ参政党がホストに刺さったのかと言えば、今歌舞伎町で起きているひったくりなどの多くがベトナム、トルコ、中国などの外国人犯罪者ということがあります。外国人取り締まりを強く宣言する参政党になびいたのでしょう。
またホストはこれまで選挙に無関心で、選挙がいつどこで行われているかもわからないような人が大半でした。しかし昨今のホスト規制などで『政治にやりたい放題やらせてていいのか。お前らそろそろ動けや』という意味で投票を促す運営者は多くいます。特に参政党と国民民主党、日本保守党が注目されています」(C氏)
こうなれば客も推しのホストと同じように動くことになる。立ちんぼをしながらホストに入れあげる23歳のDさんは語る。
「毎日『イチ、ニ、参政党』」とか言ってるホストのショート動画が流れてきて、なんだかよくわかんないです。でもあるホストが『参政党に投票しよ! 減税されます。税金を外国人優遇のためではなく、日本人のためだけに使ってくれると思います』って言ってたから、へー税金が安くなるなら参政党に入れてもいいのかな、って思いました」
こうした現象を間近で見ながらもクールに語る人もいる。
「参政党は明らかに社会の不満分子を取り込もうとしていますね。ホストらは社会の問題を内部ではなく外国人のせいと思いがちです。夜の男は根底に自己肯定感の低さを抱えているので、『日本人であるお前がすごい。日本人だから優遇する』という言葉が彼らに刺さるんでしょうね」
さらにEさんが続ける。
「“現状に不満→自民が政策を間違った→優遇される外人のせいだ→オレたちは日本人なのになぜ苦労しないといけない”となったところに日本人ファーストが刺さって参政党支持になるといったところでしょう。
あと参政党はYouTubeで神谷氏が歌詞を原案した『ヒーローは現れない』とかいう歌を流してますが、これがもう“勉強して就職しても報われなくて、ホストになった”みたいな人にすごく刺さる歌詞なんです。こういう伝わりやすい言葉で演説したり動画を作ったりというのも作戦としてはうまかったですね」(Eさん)
問題のポストを謝罪したさや氏は13日の選挙ラストサンデーに演説で、
「日本人ファースト、この言葉を伝えに参りました。自民党に差別されてきた。日本人が差別され続けてきた気がしています。外国人が優遇されていく中で、私たち日本人はどんどん貧しくなっていった」
と外国人優遇論を全開にし、支持者から喝さいを浴びた。
演説会場には、「人間にファーストもセカンドもない」などと書いたプラカードを持ち抗議する女性たちもいた。
「私はルーツがミックスで、父が外国人なんです。だから、自分が排除されているように感じています。どうしてここまで日本人ファーストが支持されるのかと考えると……みんなしんどいのかな、と思います。外国人はスケープゴートにされているんでしょうね」(女性)
終盤に入った参院選。次の日曜日、民意はどのような形で現れるのか――。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班