
子どもには体に良くておいしいものを食べさせたい…多くの親たちが思うことだろう。最近話題の発酵食は健康に良いことはなんとなく知っているけれど、そもそもなぜ体にいいのだろうか? 幼児食にもおすすめというのは本当なのだろうか。
発酵料理教室「神楽坂発酵美人堂」の店主、清水紫織著の『作り分けなし!時短にもなる! 親子でおいしい 発酵ごはん』(グラフィック社)より一部抜粋、再構成してお届けする。
発酵とは何か?
「発酵」とは私たちの生活に根付いた知恵。
ここでは知っているようで知らない発酵のこと、麹のことを解説します。
発酵ごはんを作る前にぜひ発酵と腐敗の違いを理解しましょう。
納豆、キムチ、日本酒、ビール、味噌などの発酵食品、発酵飲料は私たちの身近な存在です。
発酵とは、私たちの目には見えない微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)によって食物が変化し、人間にとって「旨みがアップした」「栄養価が高まった」「保存性が高くなった」など有益に作用することです。
例えば、ヨーグルトは牛乳に乳酸菌が働いて発酵し、腸内環境を整えてくれる食品として知られています。
発酵させるためには微生物の力が必要です。代表的なものに麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌があります。
発酵調味料は、麹菌の力を借ります。麹菌は麹を作る菌。麹を使うことで手軽に発酵調味料が作れるのです。麹の原料は米、麦、大豆などの蒸した穀物。
麹菌はたんぱく質をアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」、でんぷんをブドウ糖に分解する「アミラーゼ」、脂質を分解する「リパーゼ」を代表とするさまざまな酵素を作り出します。これらの酵素が素材の旨みや甘みをアップさせ、食材を柔らかくします。
これが「発酵する」ということです。
「納豆は腐っているから」といわれることがありますが、「納豆菌によって発酵している」が正しく、発酵と腐敗は似て非なるものです。発酵も腐敗も微生物の働きによるものですが、前述のとおり人間にとって有益なものは「発酵」。反対に有害なものは「腐敗」となります。また、「発酵しているから腐らない」というのも正しくありません。
そう聞くと特にお子さんがいる方は「大丈夫かな」と心配になると思いますが、塩麹などある程度塩分濃度があるものは腐敗菌が生まれにくいとされています。
発酵ごはんの4つのメリット
発酵ごはんはなぜからだにいいのか? おいしさだけではなく、消化を助けたり、味覚形成をサポートしたりなどさまざまなメリットがあります。
1 消化を助け、野菜をおいしくする
麹は豊富な酵素を持つことで知られています。特にアミラーゼやプロテアーゼなどの消化酵素は、「消化・分解・吸収」の手助けをしてくれます。これは消化器官が発達段階の子どもにとって、からだへの負担を軽くしながらも栄養の吸収率を上げてくれるという嬉しい働きです。
またプロテアーゼには旨みをアップさせる、アミラーゼには甘みを引き出すという働きも。野菜などの素材のおいしさを引き出してくれます。
2 子どもの味覚形成に役立つ
発酵によって、天然の旨み成分「アミノ酸」が豊富に生み出されます。子どもが発酵ごはんを食べることで、自然な「旨み」を知り、正しい味覚を育てることができます。
また、幼少期は内臓の機能が発達段階にあるため、大人がおいしいと感じる塩分量の 1/2~1/3 が目安です。麹が作りだす旨み成分「アミノ酸」は、控えめな塩分でもおいしさを感じ満足できます。
塩分の摂取量については、大人も注意したいところ。濃い味に慣れてしまっている方は、これを機会に子どもと一緒に発酵ごはんを取り入れてください。
3 腸内環境を整える
便秘やストレスが気になっている場合、発酵ごはんがおすすめです。便秘の原因の一つとして、腸内環境の乱れが指摘されています。腸内フローラには善玉菌(有用菌)、悪玉菌(有害菌)、日和菌(どちらでもない菌)の3 つのタイプの菌があります。腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やすことがポイントです。
発酵ごはんを摂ることで、麹の酵素によって生み出される「オリゴ糖」がエサとなり、善玉菌を育て、腸内環境を整えます。腸内環境が整うと、腸内細菌が免疫機能をサポートするので、免疫機能が発達段階の子どもにとって、免疫力の向上につながります。
また腸内環境はメンタルも左右するといわれています。ストレスが気になるときは食べるものを見直してみると良いかもしれません。
4 時短なのに旨みがアップ
子育て中は仕事に、家事にやることがたくさん! 忙しいけど子どもにはおいしく、安全なものを食べてほしい……。そんなときにも発酵ごはんはおすすめです。
麹から作った塩麹で肉や魚を30分~ひと晩漬け込んでおけば、素材が柔らかくなり、本来の旨みがさらにアップ。野菜などの副菜も塩麹などがあればたくさん調味料を使わなくても味が決まるので、時短になります。忙しい子育て世代こそ発酵ごはんを!!
撮影/小嶋文子
スタイリング/鈴石真紀子
『作り分けなし!時短にもなる!親子でおいしい 発酵ごはん』(グラフィック社)
清水紫織