
現役教員グループが校内の女子児童の盗撮画像などを共有していたことが発覚した事件で、グループのひとり、名古屋市立小学校の元教諭の水藤翔太被告(34)の初公判が17日に行われた。被告は起訴内容を認め反省の弁を述べたが、児童や保護者らの不安は解消されることはない。
「児童生徒の安全確保」の知らせを出した矢先に、また教師の不祥事
水藤被告のおぞましい犯行内容が明らかになった初公判。本人は「本当に反省しています」と述べたものの、児童はもちろん保護者らの不安が消えることはない。
水藤被告と同じグループのリーダー的存在で、現在、名古屋地検などで取り調べを受けている森山勇二被告(42歳)が以前に勤務していた小学校に娘を通わせていた母親は言う。
「その反省の弁は本心なのでしょうか。そういった性癖は1日や2日でできたものではないと思うし、これから反省し、自分が行なった異常な行動を専門機関などの治療を受けるなどして改善してほしいです。そして2度と子供に関わる職業には就かないでほしいです」
この母親は、このような変態行為を行なう教師らにこんな怒りを述べた。
「こんなおぞましい事件で大騒ぎの最中に、愛知県の公立中学校に勤める体育講師が、プール更衣室で着替え中の女子生徒を盗撮して逮捕されたなんてニュースを見て、2度びっくりですよ! 今の教育現場はいったい、どうしてしまったんですか?」
この事件は愛知県教育委員会が盗撮などを防ぐためのガイドラインの周知徹底を通知した直後に起きたことである。社会部記者は言う。
「実は、16日は教師による不祥事発表が大変慌ただしかった日でした。愛知県教委はこの日、3人の教諭を懲戒処分したのです。
うち一人は、県北西部の公立中学校の20代男性教諭で、去年12月にSNS上で同校の女子中学生とやりとりを始め、今年2月から3月にかけて校外でキスしたり抱きしめたりしていたことが発覚し、懲戒免職処分としたと発表しました。
このほかにも、北名古屋市立の小学校の臨時教諭(34歳)が知人女性にストーカー行為をした事案と、尾張旭市の小学校の男性教頭(48歳)が他校の女性教員の頭を触るなどのセクハラをした事案を発表しました。これらの3教師には懲戒処分や停職処分、減給処分などが下されました。
そんななか、同日に愛知県みよし市の中学校の常勤講師・須崎佳祐容疑者(24歳)が逮捕されました」
須崎容疑者は勤務先である中学校からの評価が高く、2年生を担当しており、サッカー部の顧問もしていた。また“保健体育の先生”として近隣の小学校の講師も務めていた。
「7月16日、水泳の授業終了後に女子更衣室で着替えていた生徒複数が、隣の管理室との壁上部のスキマから、かざされていたスマホを目撃。その場で授業をしていた者に報告し教頭が聴取、その後、任意同行、逮捕となりました」(前出)
これにはさすがに愛知県教育委員会の担当者も消え入るような力のない言葉でこう説明するほかなかった。
「愛知県教委から市の教育委員会には『児童生徒の安全確保および教職員に対する信頼回復に向けた取り組みについて』といった通知を出していた矢先のことでした。ほかにも、一人一人の教員に不祥事に関わる行為をしていないかどうかのチェックリスト検査や、『信頼される教職員であり続けるために 不祥事防止に向けて』と題したリーフレットを配りました。
この通知を出した直後にみよし市の学校の事案が起き、県教委としては非常に残念です。今後、このようなことが二度と起きないようにさらに呼びかけていくしかないかなと思います……」
とばっちりを受ける、真面目に働く現役教師たち
相次ぐ教員たちの事件を受け、名古屋市教委の元には100件以上の“抗議”や“問い合わせ”の電話が来ているという。
また、ネット上では「教育現場への不信感」をあらわにした書き込みもみられ、多くの真面目に働く教師たちが“とばっちり”を受けている。
数年前に都内の公立中で同僚の男性教諭A氏が盗撮事件を起こし逮捕された経験を持つ現役教師の相田先生(仮名・50代)に話を聞いた。
「Aは私と同じ社会科の30代教師でした。夏休み中に商業複合施設内で成人女性のスカート内を盗撮したとして逮捕され、のちに懲戒処分を受けました。夏休みが始まったばかりの8月初旬でしたが、逮捕の翌日に副校長から私のスマホに直接連絡があり、緊急で全教員が学校に集められました。
さらにその翌日、保護者の皆さんを招集しての保護者説明会を行いました。この日、報告したのは校長でしたが、全教員が出席し保護者の皆さんに謝罪をしました。保護者や生徒も相当にショックを受けたと思いますので、その際は本当に心からお詫びをいたしました」
夏休みが明けてからは、Aが担当する「社会科の授業」をほかの先生と共に振り分けて行うことになり、出勤中の自身の休み時間がゼロになった。
「社会科の先生は、彼(A)を含め3名しかいないため、私ともう一人の先生で全学年の授業を受け持つことになりました。教師は科目にもよりますが、月曜から金曜まで1週間で大体、24コマの授業を受け持ちます。そうすると1日に1時間ほどは空き時間がありまして、テストの採点や授業の準備などをまとめてできる貴重な時間だったのです。
しかし、彼が逮捕されたことにより週に27コマの授業を行うことになり、その時間もゼロになりました」
また、Aは学年主任を担っていたほか、学校研究の主任の役割も担っていた。これについて何の引継ぎもないまま2学期を迎え、校内は大混乱だったという。
「今回の様々な不祥事は本当に同じ教師として許せないことです。しかし全国の教師が皆こうではないから、現在のような、教師みんな変態だみたいな風潮は本当に心苦しく感じています。
また、今回問題となった教師に正式な処分が決まるまでは、新しい教員は配置されない。ただでさえ混乱した状況なのに、問題教員分の欠員が出たまま、生徒、保護者への信頼回復への対応もプラスされ、学校はヘトヘトになっていると想像される。
教師たちが今どんな思いで日々の業務をこなしてるかと思うといたたまれない。教員や補助員の数を増やして本業をしっかりできる環境やその補償をしてほしい思いを抱いてしまいます」
一連の教師による不祥事は、もちろん個々の自覚や理性、罪悪感のなさなどの問題だろう。しかし全く関係のない現役教師が事件の“とばっちり”を受けているのもまた大きな問題である。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班