
参政党は参議院選挙の東京選挙区で当選したさや氏(43)の本名は「塩入清香(しおいりさやか)」だと選挙の3日後に公表した。「私を日本のお母さんにして!」との発言が強烈な印象を残したさや氏だが、彼女を知る人は普段のキャラとはかけ離れていると証言する。
本名の公表を控えていた理由
参政党がXで「参議院議員 さやの本名につきましてのご報告」と題した文書を公表したのは7月23日昼すぎのことだ。本名を明らかにしたうえで、
〈選挙戦におきましては、シンガーおよびキャスターとして長年親しんでいただいた「さや(saya)」という名前で出馬させていただきました。これは、多くの方々に覚えていただきやすいという戦略的な理由もございました。
また、もう一つの理由といたしまして、本人の家族の健康状態を考慮し、これまで本名の公表を控えさせていただいておりました。家族は重い心臓疾患を抱えており、選挙期間中に想定される取材や過度な関心が、心身の負担となることを強く懸念しておりました。〉
と説明。当選を受け、国会議員としての公的責任を果たす上で必要不可欠と考えたたためで、遅ればせながら報告する、としている。
公開されているプロフィールではさや氏は横浜市出身の43歳で、青山学院女子短大を卒業。ジャズシンガーとしてCDを出しているほか、保守系の「チャンネル桜」でキャスターを務めたとなっている。
「保守界隈では顔と『saya』の名は知られており『扇さや』の名のフェイスブックのアカウントもあります。しかしこれが本名なのか、党内でも知っている人は限られています。本名を隠しているのは事情があるみたいです」と党関係者は発表前に話していた。
本名の公表について党は「当初の約束」を守るためだと説明するが、約束の有無にかかわらず候補者の本名は選挙後には当局によって公開される。
今回も総務省自治行政局がまとめた『第27回参議院議員選挙通常選挙結果調(速報)』にはさや氏の本名も記され、これに気づいた人が党発表前日の22日にはウィキペディアのさや氏のページに本名を記載していた。
「さらに選挙終了まで明らかにしなかったことと無関係でないと思われるのは週刊文春の報道です。文春は党の発表1時間前の23日正午に公開した電子版記事で、さや氏は結婚しており夫は22歳年上のスター音楽家・塩入俊哉氏(65)だと報じました。
さらに、二人が知り合った2008年ごろ、俊哉氏には妻子がおり、当時の妻は俊哉氏の女性関係を疑っていたことや、10年ほど前に俊哉氏が離婚し清香氏と再婚したとの音楽関係者の話を伝えました」(社会部記者)
この報道でSNSでは「不倫略奪婚ではないのか」との声が出て騒然となった。これにさや氏は24日、自身のXのアカウントで
〈現在騒がれている報道に関しまして、一点だけはっきり申し上げます。塩入さんが離婚された4年後に結婚しております。「略奪婚」などでは全くありません。人の道に反するようなことは、一切しておりません。〉
と反論している。
党は本名を伏せたのは取材や過度な関心が家族の負担になると懸念したためだと説明している。だが党の憲法案「新日本憲法」は第13条5項で、議員だけでなく候補者の段階から「本名、帰化の有無、収支等の情報は公開される。」と規定しているだけに、今回の弁解は通らないことになる。
夫の俊哉氏は原爆関連の朗読イベントにも参加
そのさや氏は選挙戦最終日のマイク納めで「私を皆さんのお母さんにしてくださーい」と絶叫した。支持者は熱狂で応えたが党関係者は違和感を口にする。
「『お母さんにして』なんていう過激な演説はありましたけど、普段は静かな女性です。どういうノリであんな感じになったのか……。周辺の指示かもしれないですね。普段のキャラクターのキャラとはかけ離れていたので少し冷めた目で見ていました」(党関係者)
たださや氏は徴兵制を「学校教育のなかでは教えられないことを兵役の中では教えることができる」と述べたり、「核武装が最も安上がり」と発言したりし、保守論客を目指しているようにも見える。
だが、これにも前述の関係者は「核とか徴兵制の発言も保守の先生たちの受け売りじゃないでしょうか。信念とか思想というより聞いたことをそのまま話しているみたいな」と指摘する。
興味深いのは夫の俊哉氏は原爆関連の朗読イベントにも参加し、昨年11月にもXに、
〈金曜日は朝イチで松江へ。米国の広島への原爆投下により子供を失った母の手記「星は見ている」の朗読会でした。紺野美沙子さんの想いのこもった朗読の空間にピアノの音を置くように、、、〉
とポストしていることだ。俊哉氏のことをさや氏はこれまでSNSで、夫であることは伏せながら「音楽の師匠」と呼んできた。そして6月には、
〈(俊哉氏に教わった)音楽家の魂を政治の世界にも反映できるよう、この夏を全力で駆け抜けてまいります!〉
ともポストしている。
参政党とメディアの軋轢
参政党をめぐってはほかにも騒動が続く。
「22日に神谷宗幣代表らが国会内で開いた定例記者会見で、神奈川新聞記者の出席を『事前申請がなかった』ことを理由に認めなかったんです。会見案内には申請が必要とは書いてありませんでした。
党は共同通信の取材に対し、『過去に会見に出席したことがある記者は事前申請不要だが、それ以外の記者は必要だった』と答えています。しかし神奈川新聞は神奈川選挙区の参政党候補の言動を厳しく批判しており、これへの報復ではないかとみられています」(社会部記者)
もっとも参政党とメディアの軋轢はこれが初めてではない。
「20日の投開票日、さや氏の事務所は『取材が可能なのはテレビと新聞だけで雑誌はだめ』と答えています」と雑誌編集者は話す。集英社オンラインは選挙中、街頭演説を終えたさや氏に直接取材を試みたが、党スタッフは「事前に決まっている(テレビ)2社以外はだめだ」と接近を阻止した。
「選挙中、さや氏に近づいたジャーナリストに対しては党関係者が“クズブス女”“俺の候補に手を出すな。手を出したら、マジで自殺したくなるほどの暴力を受けるよ”とブログに書き込み、その後削除しています」(ネットメディア記者)
取材の“許可”を受けたマスコミは選挙中から行なわれていた参政党によるメディアの選別をスルーしてきたが、神奈川新聞の排除で隠せなくなった形だ。それでも22日の会見時、神奈川新聞記者が退席を求められても他の記者らは抗議しなかったという。
選挙を終え重要な政治勢力になった参政党。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班