〈ORANGE RANGE直撃〉夏×懐かしい平成あるあるMVが若者にもリバイバルヒット「水着のお姉ちゃんが出てくるって、今の時代に新しく映ってるのかな」
〈ORANGE RANGE直撃〉夏×懐かしい平成あるあるMVが若者にもリバイバルヒット「水着のお姉ちゃんが出てくるって、今の時代に新しく映ってるのかな」

5人組ロックバンド・ORANGE RANGEの2007年に発売された名曲「イケナイ太陽」が、いま再び人気を集めている。“令和ver. Music Video”と題した同曲の新しいミュージックビデオ(以下、MV)が7月2日にYouTubeで公開されるやいなや、SNSなどで大きな話題となり、YouTubeの「人気急上昇中音楽」にて1位を獲得。ORICON発表のYouTubeチャート(2025/7/4~25/7/10)では2位にライクインし、再生回数はなんと公開から約2週間で1000万回を超えている。本人たちは、この状況をどのように捉えているのだろうか。ORANGE RANGEのメンバーであるNAOTOとHIROKIに話を聞いた。

「イケナイ太陽」リバイバルヒットにメンバー驚き

ORANGE RANGEは、今年「ナツい夏★プロジェクト」を始動。「イケナイ太陽(令和ver. Music Video)」はその一環として制作されたもので、夏(なつ)にかけて7月2日に公開された。
「令和ver.」と名付けられた MVだが、その内容は“平成”一色だ。「ガラケーデコ」「壁ドン」「ポッキーダンス」など、こちらも懐(ナツ)にかけて72個の“平成あるある”が盛り込まれており、SNSではネタ探し投稿が急増。さらにお笑いコンビ・マユリカの2人が平成の男子高生・女子高生に扮して出演する。

ORANGE RANGE – イケナイ太陽 (令和ver. Music Video)

――「イケナイ太陽(令和ver. Music Video)」は、どういう流れで制作されることになったんですか。

HIROKI  何かこの夏盛り上げられたらなっていう「ナツい夏プロジェクト」のもと、いろいろな仕掛けを作っている中の1つというか。「イケナイ太陽」は過去の曲ではありますけど、もう1回ミュージックビデオを作り直して、夏の起爆剤にできたらなっていう感じでスタートしましたね。

――皆さんは、今回の反響はどのようにとらえていますか。

HIROKI いや、びっくりですね! ここまで仕掛けがバッチリとハマるとは想像していなかったです。

NAOTO わかりやすく実感したのが、最近は喋ってくれなくなっていた親戚の高校生が「見たよ」と言ってくれたことで。今までも正月とかお盆には会っていたのですが、「何してんの、このおじさん?」という感じだったんですよね(笑)。

――当時を知る世代はもちろん、若い世代にも届いているということですね。

HIROKI MVを撮ってるタイミングでは、「平成あるある」を面白がってくれるのかな? くらいまでは想像できていたんですけど、「エモい」「泣けてくる」「涙が出た」って反応も多くて、そこは予想外のリアクションでした。

自分ら世代の人たちにとっては、思春期だった10代のころに過ごしたあの景色みたいなものがフラッシュバックしてきて、重なり合うものがなにかあるのかな。

若い世代には、シンプルにごちゃごちゃ感、わちゃわちゃ感、パーティー感みたいなところが、もしかしたら新しく映ってるのかな。水着のお姉ちゃんが出てくるって、やっぱり今の時代では減ってる気もするし。

――なぜこんなにも多くの人にウケていると思いますか。

NAOTO 300万再生ぐらいまではコントロールできる組織力みたいなのが、(所属レーベルの)ソニーにあるんじゃない?(笑)

HIROKI ひたすらクリックする部署?(笑)。こればっかりはわからないことも多いけど、マユリカさんが出てくれたのは結構でかいと思います。

――マユリカのお2人は、昨年の「M-1グランプリ2024」の決勝で、「上海ハニー」(ORANGE RANGEの楽曲)をネタとして使っていましたね。

HIROKI 面白かったですね! 絶妙なチョイスというか。今回の撮影現場でお話したんですけど、まずは謝罪から始まったんですよ(笑)。「勝手に使ってしまってすみませんでした」「いえ、とっても嬉しかったです」みたいに。

ネタに関しては、使ったのはサビでなくて、Aメロのラップなんですが、「すぐには出てこないけど、でも聞いたことあるな」みたいな、絶妙なラインを狙ったそうです。

NAOTO 曲をネタに使ってもらえるのは、単純に嬉しいですね。お笑い好きなんですけど、ネタになるのはレアすぎて。カバーしてもらうよりも、お笑いのネタに使ってもらうってレアじゃないですか。ある程度、認知されてないとネタにならないので。だから、超嬉しいですね。

――フジテレビ系『2025 FNS歌謡祭 夏』では、INI(アイエヌアイ)のメンバーと「イケナイ太陽」でコラボレーションしましたね。

HIROKI コラボすることで、やっぱり普段聞いてない、見てない人たちも届くんだなっていうのは感じましたね。

若い世代には1周回って新しく聞こえる

「イケナイ太陽」が発売された2007年当時は、CDの売り上げがヒットの大きな指針となっていた時代。だが、昨今はYouTubeやサブスクリプションサービスでの視聴などが重要視されるなど、音楽の聴かれ方が大きく変わっている。ORANGE RANGEは、音楽を取り巻く今の状況をどのように捉えているのだろうか。

――今回のMVが大きな話題となったことで、改めてYouTubeやSNSの影響力を実感されたのではないかと思います。

NAOTO 昔は何万枚っていうわかりやすい数字があったけど、今はヒット曲の概念がなかなかわかりづらい部分もあるかもしれませんね。

HIROKI 消費されていくスピードも早くなったけど、10何年前の曲をすぐ聞けるし、手に入るっていう、掘り起こしも簡単にできる時代ですよね。

だから、あまり新曲っていうその概念すら、もうなくなってきてるんじゃないですかね。良いものは良いと、評価される時代になってきてる。何が起こるか本当にわからないですよね。

例えば、「おしゃれ番長」っていう僕たちの昔の曲に合わせてダンスをする動画がTikTokで流行ってるけど、これが10何年前の曲ってわからずにやってる可能性もありますよね。

NAOTO さっきも言ったように消費が早いから、どんどんアイデアを出して、面白いこもやらないといけない。

自分たちは、どっちかっていうとSNSとか疎い方ではあるんですよね。それこそ僕らを担当してくれているソニーミュージックのクマちゃん(隈部晋作)とかからアイデアをもらったりしてます。若者はこういうの見るんだと説明を受けて、「じゃあやってみるか!」みたいな感じです。

――キャリアを重ねると、アイデアをもらってもなかなか素直に受け入れられない人もいそうですけど。

NAOTO もちろん、それもありますよ。やらないものはやらないって言います。でも、素直に受け入れるものもある。そこはものによりますね。

今回のMVでいうと「いや、もう面白くなるので」「絶対大丈夫なんで」って言われて(笑)。やっぱりさ、面白くないと!

HIROKI まだゴールは見えてないっすけど、とりあえずやろうかって感じでした(笑)。パッションというか、情熱があるので。

僕たちは“型にはまりたくない”

「ナツい夏★プロジェクト」は、「イケナイ太陽(令和ver. Music Video)」以外にも様々な仕掛けを用意している。7月16日にはORANGE RANGEらしさ全開の新曲「裸足のチェッコリー」を配信リリース。18日と30日にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にて、「イケナイ太陽」と「花」を披露した。

――新曲「裸足のチェッコリー」は、まさにORANGE RANGEらしい夏ソングですね。

NAOTO 夏曲は、自分たちが新しいことをやりたいとか、挑戦したいという思いでは作らないんですよ。変な話ですけど、自分たちがORANGE RANGEなんだけど、ORANGE RANGEを俯瞰してサンプリングするみたいに。

――夏曲以外では、どんな音楽を作っていきたいと考えていますか。

NAOTO やっぱり僕たちは“型にはまりたくない”って気持ちがあるかな。「イケナイ太陽」みたいな曲もあるし、「花」みたいなバラードもある。バンドじゃないこともやるしっていうことをずっとやってきたので、それは大切にしたい。

仮に、他のアーティストさんが「イケナイ太陽」の後に、バラードを歌ったら、「君たち、精神的に大丈夫?」とか言われそうだけど、うちらは誰も何も言わないぐらいやり続けていたから。

それは歴史だし、財産かな。他の人たちができない領域は守りたいし、その幅をどんどん広げていきたいです。

HIROKI 周りの人たちのおかげで過去の作品をまた評価してもらえたっていう土壌はできたんで、ここからは、新譜でまた評価してもらえるような活動ができたらなと。新しい代表作みたいなものを作るのが今の目標ですね。

「イケナイ太陽(令和ver. Music Video)」で、楽曲が今、広い世代に響くことを証明したORANGE RANGE。新たなムーブメントを生み出していきそうだ。

取材・文/羽田健治 撮影/矢島泰輔

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