石破首相は国民をミスリードをしたいのか、算数すらできないのか…減税しても道路に穴は空かない!「ガソリン減税」で経済成長へ
石破首相は国民をミスリードをしたいのか、算数すらできないのか…減税しても道路に穴は空かない!「ガソリン減税」で経済成長へ

参院選での減税に対する自民党の姿勢が敗北を招き、税金と経済成長の関係が再び注目されている。経済誌プレジデント元編集長で作家の小倉健一氏は、「減税が経済に与える影響を再考すべき」と語る。

特に焦点は、廃止の可能性が見えてきたガソリン税の暫定税率だ。もし撤廃されれば、私たちの生活や日本経済はどう変わるのか。本稿では、小倉氏が具体的なデータに基づき、ガソリン減税の必要性と効果を解説。「減税しても道路に穴は空かない」とする根拠とは?貧困層を救い、経済成長に繋がる減税の可能性を多角的に深掘りする。 

※本稿は小倉健一、土井健太郎、キヌヨ共著『図解 「減税のきほん」新しい日本のスタンダード』(ブックフォース)からの抜粋(一部編集)に最新の動向を加筆したものです。 

ガソリン税の暫定税率、ついに廃止へ 

ガソリン税の暫定税率がついに廃止される可能性が出てきた。これまで慎重な姿勢を見せていた自民党が参院選に負け、8月に開かれる臨時国会で暫定税率に関する議論を進める用意があることを示したためである。

現在、ガソリン価格には1リットルあたり25.1円の暫定税率が上乗せされている。経済産業省資源エネルギー庁が毎週発表する石油製品価格調査によると、7月14日時点のレギュラーガソリンの店頭価格は173.2円である。

暫定税率が廃止されれば、単純計算で1リットルあたり148.1円となり、ガソリン価格は大幅に下がることになる。

利用者にとって、暫定税率の廃止はガソリン価格の引き下げという直接的な利点があり、これは大いに歓迎される動きである。

一方、暫定税率がなくなると国の税収が減るという指摘もある。例えば、石破茂首相は愛媛県での遊説の際、ガソリン暫定税率廃止そのものには肯定的だったものの、地方税分で愛媛県が57億円の損失を被ると具体例を挙げ、税収減少の大きさを説明した。

しかし、自動車関連税全体の税収を見れば、道路関連支出を大きく上回るため、税収減少が直ちにインフラ整備に影響するわけではない。石破首相は国民にミスリードをしたかったのか、そもそも簡単な算数すらできないのか、それは定かではない。

税金を減らすと政府のムダ遣いは減る。ドイツの研究結果「減税は巨大な政府を飢えさせるのか」(”Tax Cuts Starve the Beast! Evidence from Germany”、2019年)はこのことを実証データで証明した。

減税して道路に穴が空くなどというのはファンタジー

具体的には、増税もできない国債も発行できない状況で、税金を減らしても減税後に道路が崩壊したり、修繕が不可能になったという証拠は見つからなかった。減税の影響はまず役所の経費や、政治的に調整可能な社会保障費に向けられた。

道路や学校の予算のように、国民の生活に直接かかわる基礎的な支出は優先的に守られた。実際、教育・治安・文化支出には統計的に有意な変化はなかったのだ。減税して道路に穴が空くなどというのは、減税に反対するためのファンタジーに過ぎない。

暫定税率は1970年代のオイルショック時に財政を支える目的で導入された。その後、政府が法的な解釈を変更し続け、税金の延命を続けた。

ガソリンや軽油の価格に最も大きな影響を与えるのは原油価格である。日本は原油のほとんどを海外から輸入しているため、ガソリンや軽油の価格を国が単独でコントロールすることは難しいのが現状である。

近年は、コロナ禍やウクライナとロシアの紛争が世界のエネルギー供給に大きな影響を与え、原油価格も上昇した。

国は「燃料油価格激変緩和補助金」として、2022年1月から2024年度補正予算までに総額8兆1719億円を投入し、最近では「燃料油価格定額引下げ措置」を講じているが、補助金政策は中抜き構造があるために、政府のアリバイづくりのために、国民の税金は今日も蕩尽され続けている状態にある。

ガソリン税低所得層にとっての負担は各国共通の課題である

 ガソリン税が家計に与える影響は国ごとに異なるが、低所得層にとっての負担は共通の課題である。イギリスの事例(※1)を参考に、日本でも税負担軽減策を検討する必要がある。エネルギー政策の一環として、単なる課税ではなく、社会的影響への配慮が求められる段階に入っている。

低所得層の世帯にとって、車の維持費は生活費全体に占める割合が大きく、負担となっている。イギリスでは、最貧層の世帯における車の所有率は約46%であり、収入の3.1%を燃料税に費やしている。

これは富裕層の1.9%と比較しても明らかに高い割合である。燃料税は直接的な燃料費だけでなく、物流コストの上昇を通じて商品価格全体を引き上げる効果を持つ。結果として、食料品など日常的な必需品の価格が上昇し、間接的な影響が家計を圧迫する。

税負担の軽減が貧困問題の解決に資するはず 

適切な交通手段を利用できなければ、貧困層は社会的排除に直面するリスクがある。徒歩圏内にない食料品の買い物、金融、レジャー、医療、教育施設にアクセスできないからである。

日本においても、ガソリン価格に占める税金の割合は約42.6%と高く、自動車の世帯保有率は77.6%に達している。特に地方では公共交通機関が限られており、自家用車への依存度が極めて高い。

低所得層においても43%が自動車を保有しており、車の所有は生活の必需である。ガソリン税の負担は、そうした層の生活費に直接影響を及ぼしている。近年、日本ではエネルギー価格の高騰が続いており、それに伴う税負担が家計に重くのしかかっている。

こうした状況を受けて、政府は燃料税やエネルギー関連税の一時的な減免を検討すべき段階にある。イギリスの研究(「積極的な逆進性」2013年)では、これらの税を半減させることが生活費の軽減に大きく寄与し、貧困層を支援する効果的な方法の一つとされている。日本でも同様に、税負担の軽減が貧困問題の解決に資するはずである。

道路に穴があくのだとすれば、税の使い道が間違っているだけにすぎない 

ガソリン税を含めた自動車関連税の減税を主張すると、よく「税収不足になり道路に穴があいてもいいのか!」という指摘が返ってくる。

しかし、クルマ関連税の税収は、消費税も含めると年間約9兆円にも上る。一方、道路関連支出は約8兆円である。我々は1兆円も多く税を取られているのである。

したがって、道路に穴があくのだとすれば、それは税収不足のせいではなく、税金の使い道が間違っているだけにすぎない。むしろ、過剰な課税が家計を圧迫し、地域経済に悪影響を及ぼしている現状をこそ問題視すべきである。

燃料税の削減は、家計の支援にとどまらず、経済全体にも好影響を及ぼす。

物流コストが削減され、商品の価格が低下する可能性がある。これにより、消費者の購買力が向上し、結果として経済活動が活発化する効果が期待できる。

また、税負担の軽減は労働市場の柔軟性を高め、労働者がより自由に職を選べる環境を整えることにもつながる。低賃金労働者にとって、交通費の高騰が就労機会を狭める現実は見過ごせない。

貧困層に過度な負担を強いている現状 

税収の減少を懸念する意見も根強いが、イギリスの事例では、税率を下げることで税収が減少するどころか、不正行為や密輸を減らし、経済活動の活性化を通じて税収を補う可能性が示されている。

日本でも同様の効果が期待できる。特に税負担の軽減によって可処分所得が増えれば、消費が拡大し、経済全体の改善にもつながると考えられる。国民の生活が安定すれば、結果として政府の税収も安定するという好循環を形成することができる。

結論として、日本政府はイギリスの事例を参考に、燃料税を含む間接税の減税を真剣に検討すべきである。減税は貧困層への直接的な支援であると同時に、経済全体の活性化にもつながる政策である。

現在の税制度が逆進的であり、貧困層に過度な負担を強いている現状を直視し、速やかに税負担の軽減を実施するべきである。生活基盤を守るために、税の再設計が求められている。

文/小倉健一

※1"Aggressively Regressive: The ‘Sin Taxes’ That Make the Poor Poorer"(『積極的な逆進性──貧乏人をより貧しくする「罪税」』、クリストファー・スノードン著、イギリス経済問題研究所、2013年)

図解「減税のきほん」新しい日本のスタンダード

小倉健一 , キヌヨ , 土井健太郎
石破首相は国民をミスリードをしたいのか、算数すらできないのか…減税しても道路に穴は空かない!「ガソリン減税」で経済成長へ
図解「減税のきほん」新しい日本のスタンダード
2025.06.301200円(税込)163ページISBN: 978-4991335617『図解 減税のきほん』は、減税に関する複雑な議論をわかりやすく解説した画期的な一冊です。
減税が社会に与える影響について、「サービスの低下」や「格差拡大」といった一般的な懸念に対し、実際のデータや過去の事例を基に、客観的な分析を提供します。 ドイツの事例や日本での経験を通じて、減税が経済活動や社会サービスに与える影響を詳細に検証。 図解やイラストを効果的に活用し、専門的な経済理論や「ブランシャールらの実証分析」などの研究成果を、一般読者にも理解しやすい形で紹介しています。 政府の規模と社会の関係性、税制が経済に与える影響など、現代社会における重要なテーマを、データに基づいて丁寧に解説。 経済政策に関心を持つ方から、社会問題を深く理解したい方まで、幅広い読者におすすめの一冊です。
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