
ネタを評価されながらも不遇だった時代を乗り越え、ついにブレイクしたタイムマシーン3号。今回は“あえて”山本浩司さんのみに登場してもらい、“イジられ芸”の極意を聞いた。
小仏トンネルから抜け出せない
デブネタを武器とするタイムマシーン3号において、しっかりとキャラの立った関太さんに比べ、“じゃない方芸人”と見られがちな山本さん。しかし、その全力ツッコミとイジられ体質で場を盛り上げ、いまやバラエティに引っ張りだこ。相方以上の存在感を放つことも少なくない。
YouTubeを始めれば登録者数が100万人を突破するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。さぞ自身のキャリアに満足しているかと思いきや、話を聞いてみるとどうやら今のポジションに納得いかない部分もなくはないようで……。
――昨今の山本さんは超多忙で、“ミスター赤ヘル”山本浩二、俳優の山本耕史と並んで、「三大・山本コウジ」の一角となったと言っても過言じゃない活躍ぶりですね!
山本浩司(以下、同) 誰が言ってんすか、ソレ! 聞いたことないっすよ! てか今日、関はいないんですか?
――はい、あえての山本さんのソロインタビューです。
そんなの絶対ドッキリでしょ!
――違いますって!
いや、信じられない。どうせシソンヌの長谷川(忍)あたりがどっかでこの映像を見てるんですよ。
――ドッキリが多すぎて疑心暗鬼(笑)。とはいえ、それも人気者の証。ご自身は今の生活に満足してますか?
……そりゃ納得してないですよ。
――そうなんですか?
僕ら芸歴25年なんですが、デビュー当時は25年もやってりゃMCとして冠番組のひとつやふたつ持ってるもんだと思うでしょ。「山本浩司の壁」とか「山本浩司のTHE突破ファイル」とか。
ウッチャンナンチャンさんもとんねるずさんも、この年齢(46歳)にはとっくに冠持ってましたからね。なのに僕は若手芸人に大イジリされて……。
――大御所芸人の方々が未だに現役で活躍していて、30~40代の中堅芸人が渋滞してしまっている現状もありますよね。
そうは言ってもオードリーやハライチなんて早めにその渋滞から抜け出して冠持ってるじゃないですか。決して裏道横道を使ったわけでなく、ストレートにゴールに向かってる。
僕らはずっと小仏トンネルあたりで渋滞から抜け出せてませんよ……。
有吉さんは嗅覚がスゴイ
――さすがに中央道だとそこは抜け出して高井戸ICくらいまで来てる印象ですが(笑)。今の活躍に至るターニングポイントはやはり「有吉の壁」?
そうですね。当初は有吉(弘行)さんが(とにかく明るい)安村とかチョコプラ(チョコレートプラネット)とか、目立つ芸人に振って笑いを成立させてたんです。
でも、有吉さんって嗅覚がスゴいから、回を追うごとに目立つヤツの後ろでコソコソしてる面白そうなやつを見つけるようになるんです。
――例えば?
初期で言うとパンサーの尾形(貴弘)が前で暴れて、菅(良太郎)が言葉のセンスで笑いを取ってるところで向井(慧)を引っ張り出してなんかやらせたり。
シソンヌだったらじろうじゃなくて長谷川に、うちだったら関じゃなくて僕に……って感じで、出てくる人より隠れてる人を粒立てることで笑い生むというか。
――向井さんも長谷川さんも山本さんも現在は大活躍。
その嗅覚って売れてる人みんな持ってるんですよね。バナナマンの設楽(統)さんもそうです。
――山本さんにとって有吉さんは恩人?
こういうところで名前を出すと、ゲスナー(ラジオ番組「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER」のリスナー)とかから巡り巡って有吉さんの耳に入って「俺の話してたらしいな?」って詰められるんで、あまり名前を出すのはやめときます(笑)。
ただ、みんな口々に言うのは、有吉さんは頑張ってる芸人に対して愛がありますよね。面白い面白くない関係なく。もちろんサボっててやる気のない芸人には厳しい。
そういうところは一貫してると感じます。
イジられるのは本当はイヤ
――山本さんといえば、イジリに対して全力ツッコミで応戦というのがひとつの様式美かと思います。周囲のイジりはどうとらえてますか?
まぁ、イヤですね(笑)。
――イヤなんですか?
イヤだから本気でツッコミができるんですよ。みんな本当に人の嫌がることを言いますからね。
――このコンプラ全盛の時代に逆行してますね。
そういう意味ではこの時代はちょっとありがたくて。
昭和、平成ならみんながパワハラを受けてたから、イジられて自分だけ輝くのは難しいけど、今は芸人ですらイジっていいか躊躇する時代じゃないですか。
その中でみんなが「山本ならイジっていい」と暗黙の了解になってるから、イジリを一手に担えるというか……。時代を逆行する芸風がキャラ付けにはなってるのかもしれません。
――でもイヤなんですよね?
はい、イヤです。心では泣いてます(笑)。
でも、どうやら周りに言わせると、僕がいくらイジられてもかわいそうに見えないらしいんです。これは自分で言うのもなんですが、才能だと思うんです。
――イジられても世間をザワつかせない才能。
お見送り芸人しんいちだってキツめのドッキリをくらっても、かわいそうに見えないでしょ?
――まぁ、たしかに……(笑)。
それはあいつのプライベート(の性格)がクソで(笑)、因果応報に見えるからだと思うんです。
でも僕なんてプライベートで特に何もしてないのにかわいそうに見えないらしい。これはもう才能でしょう。解せませんけど(苦笑)。
最近では芸人どころか20代の女子アナにもイジられますからね。
――それは才能ですね。
でも、笑いにはしたいと意識はしてます。強く返したほうが盛り上がるし、相手もイヤな感じに映らない。シュンとなったら、現場も視聴者も引いちゃいますから。あくまで芸人の世界での話ですが。
――特別なトレーニングを受けている山本さんだから成立すると。
この前、千鳥の大悟さんから「お前イジられるとシメシメみたいな顔しとるな」と指摘されました。
――他のイジられ芸人にライバル意識はあるんですか?
シソンヌ長谷川や、きしたかの高野(正成)らへんは、ドッキリとかいつも同じような仕事してるなって思いますよ。ぱーてぃーちゃんのすがちゃん(最高No.1)も最近一緒になることが多いですね。あのへんと横並びになるとゲンナリしますよ……。
――でも今回はドッキリじゃありませんからね! #2では“大衆迎合”と揶揄され葛藤したタイムマシーン3号、不遇の時代について聞きます。
#2へつづく
取材・文/武松佑季
撮影/是永日和