
2024年6月、東京都知事選のポスターにヌード風ショットで登場し、大炎上を巻き起こした女性がいた。アイドルとして活動していた桜井MIUだ。
キャッチコピーは「世界一なんでもするギャル」
――まずは、芸能界に入ったきっかけを教えてください。
桜井MIU(以下、同)京都の河原町を歩いてたら、たまたまモデル事務所の人に声をかけられて。当時は普通にカフェで働いていて、芸能の世界に興味はなかったんです。だけど、せっかくのチャンスだし仕事と両立しながらやってみようかなって。
そこの社長さんに「芸能界では何をやりたい?」って聞かれたときに、アイドルとレースクイーンに興味があると答えたら、同時にオーディション受けることになって。
結局どっちも受かって、アイドルとしては「いるかっ娘」というグループに加入して、レースクイーンのほうはスーパーGTという日本最高峰のレースでトータルで約3年ほど活動しました。
――桜井さんというと金髪ギャルというイメージがありますが、デビュー当時からそうだったんですか?
いえ、カフェで働いていたので、最初は黒髪でしたよ。グループによってコンセプトが違うから、中高生とアイドルユニットを組んでいたときはメイクもナチュラルにしていたし。
ギャルっぽくなったのは、5年前に恐竜がテーマのユニットをやっていたとき。私のイメージカラーが黄色で、それに合わせて金髪にしたら、知らないうちにギャルって言われるようになって(笑)。
今はグラビアの子と一緒に「Devilsis(デビルシス)」というユニットをやっているんですが、悪魔がコンセプトなのでそれを意識したメイクにしています。
――これまでの活動歴は?
芸能の仕事では、アイドルのほかラウンドガールやMCをやったり。普通のお仕事では、ウグイス嬢や社長秘書も経験しました。
秘書をしていたときは黒髪だったので、社内では芸能活動をしていたことはバレていなかったと思います(笑)。レースクイーンだけで生活していくのは難しいから、色んなバイトを経験しましたね。
――直球な質問ですが、都知事選のポスターが炎上した騒動について、今あらためてどう感じていますか?
私のキャッチコピーは「世界一なんでもするギャル」なので、その通り基本的にいただいたお仕事は断らないスタンスだったんです。だから、都知事選ポスターもモデルの仕事として受けたので、ああいう形になってしまったのは想定外でした。
当時はフリーで活動していたから相談する相手もいなかったし、選挙には守秘義務があるからポスターのモデルになることも誰にも話せなかったんです。政治や選挙の知識もゼロで、ポスターに候補者以外の顔が載ること自体知らなかったんです…。
炎上後、総額100万円分のカー用品を自腹で引き取る
――実際、候補者である河合ゆうすけ氏からはどのようなオファーがあったのでしょうか?
事前に聞いていたのは、私がXに載せているようなセクシー写真でお願いしたい、というものでした。Xにはファンの方に向けて、ハイレグのようなきわどい衣装を着た画像を投稿していたので、そのイメージでお受けしました。
ですが、実際に求められたのはもっと過激なもので…。だけど、一度引き受けたからにはやり通そうと思い、あのような結果となりました。それがモラルに反してた部分はあると思うし、自分でも過激すぎるとは感じてました。
――ポスターの候補者だった河合ゆうすけさんはどのような反応だったのでしょうか。
河合ゆうすけさんも、注目を集めるために過激なことをやったとはいえ、ニュースになるほどの騒動になることは想定外だったと思います。ご自身の選挙で手一杯だったので私に対してのケアまでは手が回らなかったようです。
――炎上によって困ったことはありましたか?
一番大きかったのは、当時カーシャンプーのイメージガールをやっていたので、炎上により大手カー用品店に納品されていた在庫を全部引き取ることになって、総額で100万円くらいを貯金から捻出して自腹で支払いました。
カーシャンプーの販売会社は小さなところで、これから売れていこうって時に迷惑をかけてしまって。当時は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
――炎上を受け、周囲の反応はいかがでしたか?
仲良い友達はすごく心配してくれて、「大丈夫?」って連絡がいっぱい来ていました。だけど、私と交わした会話の内容をインタビューでそのまま答えている子がいたのは悲しかったですね。
海外ミスコンで日本人初の快挙
――ポスターでの炎上やコンカフェの警察沙汰など、さまざまな騒動を経て学んだことはありましたか?
一番は「誰かに相談すること」ですね。当時はフリーでやっていたので、誰にも話をすることができなくて、その結果ああなってしまったので。実は、あのポスターがきっかけで、TG企画という芸能事務所の社長が私に興味を持ってくれて、スカウトされたんです。
社長には私がスーツ姿でポスターを剝がしている姿に興味を持っていただけたようで、実はしっかりしている子なのではないかって思ってくれたみたいです。
今はそのTG企画に所属しているんですけど、やっぱりフリーで活動するより安心ですね。
――現在は、海外のミスコンにも挑戦されていらっしゃるとか。
はい。「出てみない?」って声をかけてもらって。世界で7番目に大きな大会、エジプトの「ミス・エコ・インターナショナル」に日本代表として出場してアジア部門で1位になり、「MISS ECO ASIA 2025」という賞をいただきました。
過去10回開催されたこの大会で、日本人では初めてのことだそうです。
フィリピンの大会でも優勝して、今まで副賞も含めて5つくらい賞をいただいています。日本ってミスコンの認知度が低いので、あまり話題にはならなかったですけどね。
――今はボランティア活動もされているそうですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
茨城で野外ライブをさせていただいた時、せっかくなら地域に貢献したいなと思って、ファンの人と一緒にゴミ拾いを始めたのが最初です。それが楽しくて、今も近所でゴミ拾いをしています。
「YUIMAALU」というゴミ拾いのアプリがあって、拾ったゴミの写真をアップするとポイントがもらえるんです。
保護猫の活動もやっていて、NPO法人の「ねこひげハウス」さんと毎月譲渡会のイベントもしています。ポストカードやグッズの販売をして、その収益で保護猫たちの医療費をまかなっています。
私は炎上して注目されたぶん、知名度が上がったんですが、それを自分のためだけに使うのではなくて、少しでも誰かのためになるならそのほうがいいと思っていて。今はその知名度を、動物たちの命を救う活動に使ってもらっています。
――SNSがきっかけの炎上も多い昨今、経験者として伝えたいことはありますか。
SNSって本当に手軽だけど、だからこそ危険な部分がありますよね。何気ない投稿が大ごとになることもあるから、一度立ち止まって考えてから発信するのが大事だと思います。
――今後、挑戦したいことがありましたら教えてください。
今、ファイヤーダンスに挑戦しているところなんです。8月3日に千葉のキャンプ場でデビュー予定なので、猛練習していますね。炎を扱うパフォーマンスだけに、「安全な炎上」を目指しています。
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目を輝かせながらそう語る桜井MIUは、過去も批判もすべて受け止めながら、今は誰かの笑顔のために前を向いていた。彼女の熱意はきっと誰かの心に火を灯すはずだ。
文/佐藤ちひろ