〈学歴詐称の伊東市長〉「辞めません、今後もヨロシク!」やっぱり辞職もウソ、3つの約束すべてを反故にして「任期いっぱいやります」もともと辞める気なかった疑惑も
〈学歴詐称の伊東市長〉「辞めません、今後もヨロシク!」やっぱり辞職もウソ、3つの約束すべてを反故にして「任期いっぱいやります」もともと辞める気なかった疑惑も

除籍になった東洋大学を「卒業した」と言って市長選に当選した静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)。市長は7月31日夜に記者会見を開き、市民に向けて約束した辞職や出直し市長選は行なわず、4年後の任期満了まで市長をやると宣言した。

偽物とみられる卒業証書を検察に提出するとの約束もすでに破っており、これで今回の事態の責任をとって「やる」といった3つの約束をすべて反故にした形だ。

「今後ともよろしくお願いいたします」“再出発”への応援を求めるも…

会見は一度は辞意を公言した田久保市長が進退を明確にする場として、市役所が閉庁した後の夜8時に伊東港のそばの施設で開かれた。

冒頭、「私の経歴の一部につきまして大きな混乱を招いてしまったことにつきまして、この場をお借りして深く心からお詫びを申し上げたい」と言い、7月に入ってから何度も繰り返し見せた長くて深いお辞儀をした。その後、田久保市長は席に着くと10分以上にわたり話し続けた。

「私としましては、今後、市民との大きなお約束、わたくしの公約でもあります新図書館建設計画の中止、そして伊豆高原メガソーラー計画の白紙撤回という、私に与えられた使命を私の全身全霊を傾けて実現してまいりたい……」

選挙で当選した自分には“使命”があると弁舌をふるった最後に、田久保市長は「本当に申し訳ございませんでした。そして、今後ともよろしくお願いいたします」と発言。“再出発”への応援を求め始めた。

これを聞いて記者からは、質疑の初っ端から「進退について話すというので来たが、辞職はしないという会見なんですか?」との質問が出され、田久保市長は「はい、そのように理解していただいて結構でございます」と即答した。

行政トップが去就の意志を覆す事態の重大さにそぐわない軽い返事に、記者からは“そんなことでいいのか”と婉曲に諭すような質問が続いた。田久保市長は、

「私も1度辞職をして市民に信を問い直すということが最善の道であろうということで会見を開かせていただいたのはその通りです。ですが、目まぐるしく状況が変化し、その中にあっても市民の皆様から『このままここで終わって元に戻ってしまうのか』というお声を多くいただくようになりました。

私としても現状や百条委員会の進行もそうですが、刑事告発のこと、色々なことを受け止め、本日このようなご報告をさせていただく次第になりました」と具体性のない説明を重ねた。

「7月末までに辞職する」と言っていたが手続きナシ

田久保市長はなぜこれほど早く辞意を撤回できるのか。経緯を考えると、そもそも辞職することを本当に考えたのかという疑問も浮かんでくる。

伊東市関係者が7月の動きを話す。

「東洋大卒の学歴が嘘だったことが隠せなくなった田久保氏は、7月7日の会見でそれを認めるとともに、自分の卒業の証しとして市議会議長らにチラ見せしていた“卒業証書”は静岡地検に提出して調べてもらうと言い始めました。

同時に、検察への提出手続きを終えれば『速やかに辞任をしたい』と言い切り、その上で『再度市長選挙に立候補したい』とも言ったのです。この三つを今後の行動として約束した形です。

偽物らしい卒業証書を地検に渡すのは市議会の調査特別委員会(百条委)の提出要求を拒む目的とみられていました。ところが市長は7月18日になって、公職選挙法の学歴詐称の疑いで告発されたことを理由に、自分の刑事訴追につながる可能性があるして、百条委だけでなく地検にも提出しない態度を取り始めたんです」(伊東市関係者)

こうなると検察への提出手続き後に辞任するとの約束はどうなるかとの疑問がわく。記者団から「いつ辞めるのか」とその場で聞かれた田久保市長は「今月中には辞職という形にしたいというのが私の希望」と述べ、7月末までに辞職する意思を複数回表明していた。

だが、この時点で田久保氏の言動はすでに一致していなかったとの指摘がある。

「市長が辞めるのなら退任日の20日前には市議会議長に辞職願などを提出し、辞職の意思を伝える必要があります。もっと急いで退任したい場合は辞職願を出した上で議会の臨時会を開き議会の過半数の承認で認められます。

このため7月中に辞職する意思があるなら、通常は遅くとも7月11日には辞職願を提出しなければならなかったんです」(伊東市関係者)

つまり7月18日になって「7月末」の退職希望を口にすること自体、手続き的にありえないというのだ。

「メガソーラーも、前市長時代に規制条例ができ計画は止まっています」

いっぽう田久保市長は冒頭発言の後もたびたび「新図書館」と「メガソーラー」を止めるために自分は市長職に残らねばならないとアピールした。

新図書館とは、ことし5月の市長選で破った前市長が進めた総工費42億円の図書館建設計画で、田久保市長は白紙化を公約に掲げ当選した。メガソーラーは田久保市長がかつて設置反対運動の中心になって止めたと宣伝してきた事業だ。

この二つの事業が「水面下で激しく動いております」と言い始めた田久保市長は「私の任期、いわゆる皆様の負託が許される限り」は完全白紙撤回へ向け努力していく、と強調するのだ。

だが市議会関係者の一人は「図書館建設は周辺開発の補助金も絡む複雑な問題でしたが、今年6月に修正予算案が市議会で全会一致で通り決着した問題です。メガソーラーも、前市長時代に規制条例ができ計画は止まっています」と指摘する。

これが事実なら田久保市長は何と闘うというのか。

そもそも、混乱打開のために約束した3つの行動を1か月足らずの間に全部反故にするような政治家の“公約”は信じられるのだろうか。会見を終え自分の車に乗り込もうとする田久保市長に「それだけ言葉が変わる中で図書館建設中止という公約はどのように担保されるのか」とたずねたが返事はなかった。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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