軽井沢の高級スーパーで飛び交う中国語…なぜ彼らは日本の土地を買うのか「郊外型チャイナタウン化が日本でも進展」名物投資家が分析
軽井沢の高級スーパーで飛び交う中国語…なぜ彼らは日本の土地を買うのか「郊外型チャイナタウン化が日本でも進展」名物投資家が分析

SNSの普及で真偽不明の情報が飛び交う現代において、日本人の「見極める目」は退化の一途を辿っているのではないか――。中国人移住者に関するデマが拡散される一方で、生活保護受給者の実態や日本の社会保障制度を悪用するペーパーカンパニー設立の問題など、看過できない事実が浮上している。

経営・管理ビザの急増は、日本の不動産を買い漁り、空き家問題を助長する。このような移民増加の現状に対し、名物投資家の木戸次郎氏がその背景と日本の取るべき対策について警鐘を鳴らす――。 

中国人移住問題のデマと真実 

SNSの急速な普及によって情報が氾濫し、昨今は何がフェイクで何がリアルか区別がつかなくなってきている。

選挙においてもSNSでまことしやかにデマが流されると、それを事実だと信じ込んだ人たちにより、今度はそれに尾びれがついて、またそのデマが誇大化されて広まっていく。 

デマか真実かを「見極める目」については、我々日本人は急速に、そして確実に退化の一途を辿っているように思えるのだ。近い将来、事の真偽はAIに判断してもらうようになるのではないか。

海外でAIコンサルタントをしている知人によると、すでに人間を騙すためにフェイク情報を流すAIもできているようで、時代はどんどんAIに翻弄、支配されていくのかもしれない。

下手をすれば、そうしたことが発端になって戦争すら起こりかねない。実際に過去の戦争というのはデマの応酬によって引き起こされることが多かったといわれている。

そのためにも我々は読解力、考察力、洞察力を常にトレーニングしておく必要があるように思う。

筆者は以前、中国人の移住問題について、日本の優れた社会保障目当ての移住者が多い書いたが、いつのまに尾びれがついて生活保護受給者の1/3は外国人であるという噂がSNSを発端に広がった。しかし、これは明らかなデマだ。

厚生労働省のデータによると2023年度(2023年4月~24年3月)における生活保護受給世帯は全国で約165万世帯あり、このうち世帯主が外国籍(日本国籍を持たない世帯主)なのは 約4.7万世帯なので、全体の約2.8~2.9%に過ぎないのだ。

生活保護97%以上は日本国籍世帯、外国人世帯は3%未満 

つまり、日本の生活保護の 97%以上は日本国籍世帯であり、外国人世帯はわずか 3%未満だというのが真実だ。

とはいえ4.7万世帯、人数にすれば10万人前後の移住外国人が生活保護を受けているのは事実で、それにかかる費用は概算でも1000億円前後かかっていることもまた、紛れもない事実なのだ。

とりわけ日本へ移住を希望する中国人が注目する、日本の社会保障制度についてもSNSからの噂が発端になっている節はある。

第一に「医療制度にタダ乗り」説だ。それは「日本の経営管理ビザを取得すれば公的医療を格安で受けられる」といったものだ。

実際にそうした内容の動画が中国で拡散され、中国人の関心を集めている。上海などでは日本の医療機関に中国人が増加したという報告もあるが、日本の医療保険は国内限定であるので原則、日本人向けの医療機関であっても上海では使用できない。

例外的に補助が出る場合があるが、その手続きはかなり複雑なのでSNSのフェイク、誇張された噂に多くの人が惑わされているといえるであろう。

経営実態がほとんどないペーパーカンパニー 

また、経営・管理ビザ取得によって、「高額療養費制度等が無料で使える」だとか、「医療費の払い戻しは年齢が高ければ高いほど高額になる」という根も葉もない噂も拡散されているようで、その噂が発端でペーパーカンパニー設立による悪用が広まっている問題は深刻なようだ。

実際に 経営管理ビザの増加数には目を見張るものがある。2019年は2万7000人程度だったものが、2024年末には4万1615人。そして、2025年3月末までの累計では僅か3ヶ月間で1792件、そのうち中国人が70%も占めているというのだ。

2025年中には経営管理ビザの保持者は5万人を優に超えるといわれている。その中には実際の経営実態がほとんどないペーパーカンパニー形式のケースが多数あるという報告もある。

例えば、大阪の某ビルには50社が登録されているが、そのほとんどは人の気配すらないそうだ。また、知人の行政書士によると中国人の申請者の多くは実態が乏しい会社であるという。

大阪の事例では2600件、全国では数万件規模で怪しい会社が存在しているという。そしてそれが驚く速さで増殖しているということだ。

「空き家を“割安物件”として外国人に売っている」 

トランプ大統領は確かに滅茶苦茶な部分は多いが、「米国に移住したい(グリーンカードが欲しい)のなら500万ドルの投資をすればすぐにゴールドカードを出す」と移住に一定のハードルを設けており、こちらのほうが、よほど国益を考えているといえるであろう。

実際にペーパーカンパニーが日本の不動産を買い漁っているのは事実であり、経営管理ビザを取得するために、合同会社を設立して不動産賃貸事業を営むパターンが一般的となっているのだ。

また、少額でも賃貸運用できる投資物件向けの法人を多数設立していて、複数物件をまとめて購入・管理する事例も散見されている。

特に日本には全国の住宅の約13.8%にあたる約900万戸もの空き家が存在しており、地方では更に高い空き家率となっている。Bloombergは「日本は非居住者でも不動産を購入しやすく、空き家を“割安物件”として外国人に売っている」と報じている。

空き家は平均600万円程度、中には数十万円からの物件もあり、外国人などからの購入が増えているそうだ。車を買うような価格なのだから、多くの外国人が飛びつくのは当たり前のことだろう。

なぜ、これほど日本の不動産を買い漁るのか 

なぜ、彼らがこれほど日本の不動産を買い漁るかといえば、何ら難しい規制もないし、何より母国である中国では不動産を所有することができないからだ。

ベトナムなどもそうだが、社会主義国の多くは使用権の売買はできても所有権ではないのだ。その上、社会保障制度は世界有数に優れている上に治安が良く、政治的にも安定している。

さらに慢性的な円安状態によりディスカウント価格で日本の不動産を買えるのだから、相当お得に映るのだと思う。

さらに中国にはいわゆる相続税が存在しない。だから、日本の不動産資産は子孫への相続が容易で安全であるといえるのだ。仮に非居住者から非居住者に相続された場合、そしてその不動産が転売された場合などは税務当局も税金の徴収は難しくなるはずだ。

近年、旧軽井沢や中軽井沢の億を超える高級別荘地や高級リゾートマンションに香港、シンガポール、台湾系、中国系の富裕層の買いが入っているという分析は報告されている。

が、それとは別に中軽井沢・南ヶ丘・追分・千ヶ滝・借宿などのエリアでは、築年数の古い中古別荘が500万円~1500万円程度で取引されることも珍しくない。

中国語が飛び交う、軽井沢のスーパー

日本人所有者が維持できなくなったり、相続などで不要になったりした「空き別荘」を中国人または合同会社名義が現金一括またはローンを使って購入する事例が報告されている。

実際に、軽井沢の駅前で不動産業を営む知人によると別荘地にとどまらず、最近では住宅地でも中国人が頻繁に購入しているという事例が多いという。この場合、日本人代理人が登記上代表の場合もあるという。

現在、私は軽井沢で生活しているが、スーパーマーケットには生鮮品を買い漁る中国人旅行者が実に多い。

軽井沢では有名なツルヤやデリシアといった大型スーパーにも日本人居住者と同じくらいの人数が押し寄せている。平日、休日問わず日本語よりも中国語が聞こえてくるほうが圧倒的に多いほどだ。

実は軽井沢町は全国でも特に民泊規制が厳しい自治体で有名だ。

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届け出型民泊は、軽井沢町では「ほぼ全面的に制限」されている。

軽井沢は民泊に厳しいはずなのだが… 

営業するには「旅館業法の簡易宿所営業許可」が必要だが、これも別荘地や住環境を守る目的から、町は積極的に認めていない。正直言って合法的に民泊を行うのは非常に困難、いや不可能な地域といえる。

それなのに生鮮品を買い漁る中国人旅行者が異常なほどいるということはどう考えても不自然で、隠れ民泊をしているのだろうか(真実はわからないが)。

あくまでも一般論として、よくある隠れ民泊、隠れハイヤー(タクシー)のスキームは 「知人宅」「友人への短期貸し」「身内利用」や「友人の送迎」「知人の送迎」を装うケースだ。

利用者は中国本国でSNSやWeChat経由で予約をし、 中国国内でAlipayやWeChat Payなどで事前決済をして日本側には痕跡を残さないというカラクリのようだ。

物件の様子も住民票なしで電気・水道がほぼ使われないばかりか、 住民不在でも頻繁に高級ミニバンやレンタカーが停まっていて、大きなスーツケースを持った旅行者が出入りしており、民泊行為をしているなら違法である可能性が出てくる。

仮に違法民泊であれば、更なる問題が出てくる。正規ホテル利用なら地域税・雇用を創出するが、違法民泊は課税対象外なので収益があっても絶対に申告されないし、住民票も納税もない“幽霊所有者”が増加すれば所有者不明化し、やがては防災・治安対策が難しくなる。

中国人を引き付けている日本の教育制度

さらに中国人を引き付けている大きな理由は日本の教育制度だろう。中国では受験競争の激しさを背景に、東京大学への中国人留学生の流入が近年急増している。

東京大学の公式集計によると、2024年11月1日時点で中国からの留学生は3545名となっている。これは全留学生4793名中の約70%に相当する。2014年当時は中国人留学生が約1270名だったので10年で3倍近い増加をしたこととなる。

さらに京大では全留学生2942名中、1674名(約57%)、早大では全留学生中5562名中の約3300名(約60%)が、慶應でも全留学生2169名中、約1100名(約50%)が中国人留学生である。それぞれ日本の頂点の大学に、1万近い中国人留学生がいるのだ。

中国国内の大学の難易度や大学院選抜の過酷さから、東大が「賢い抜け道」として魅力的に映るのはごく自然な流れだと思う。さらに東大はMEXT(文部科学省)など奨学金制度・経済面の優位性があるうえ、円安で渡航コストが低く修士選抜制度も多様であるなど、魅力は満載のようだ。

今日の米国の状態から今後の日本像も想像できる。というのも米国では中国系アメリカ人(Chinese Americans)の人口は全米において確かな伸びを示している。

2000年当時は中国系アメリカ人の人口は約260万人だったが、2023年には約500万人と20年でほぼ倍増しているのだ。このうち外国生まれの中国系移民は1700 → 2900万人へと増加していて、アジア系全体の中で中国系は22%を占める最大グループとなっている。

サブアーバン型のチャイナタウンも活況な米国 

ニューヨーク市では、中国系住民はアジア系の最大グループで、人口はおよそ63万人と全ニューヨーク市民の約9%に達し、その多くがクイーンズやブルックリンに集中している。

ブルックリンでは、過去数十年で複数のチャイナタウンが形成され、サンセットパーク、ベンソンハースト、シープスヘッドベイなどに続々とコミュニティが広がり続けている。

クイーンズも同様で、フラッシングやエルムハーストなどに中国語圏の拠点が急成長中だ。さらに、カリフォルニア(ロサンゼルス・サンフランシスコ地域)、シカゴ(都市部と郊外)、ヒューストンなど各地に中国系コミュニティが定着・拡大し、都市と郊外の両方で広がりを見せている。

従来の都市中心部にある“チャイナタウン”に加え、サブアーバン型のチャイナタウンも活況。

ショッピングモールや語学学校が文化と経済の拠点となっているようだ。

教育分野では、中国語教育を重視する移民家庭が増え、公立やチャーター校でも中国語イマージョン教育への関心が高まっている。つまり「中国人コミュニティがどんどん広がっている」という印象は単なる誇張ではなく事実に基づく現象なのだ。

彼らは何十年~百年近い年月をかけて米国社会に根付いたといえるのだ。日本でもそうした傾向は出始めている。

首都圏全体で在留中国人は着実に増加中

首都圏全体で在留中国人は着実に増加中だ。2024年末には全国で約87万人に達し、2025年中には90万人を突破するといわれている。その約7割が東京圏在住という推計がある。

新たな第二、第三、または裏チャイナタウンなるものも出現し、大久保や池袋周辺だけでなく、郊外にも中国語によるサービスや店舗が増えており、東京を中心に円状にコミュニティの拡大が進行している。

例えば埼玉県川口市の芝園団地は旧住宅公団であるUR都市機構が1978年に造成した総戸数2454戸、住民は4600人の大型賃貸団地だが、この団地にはその60%にあたる約2600人の中国国籍住民が集まり、団地内に中国語幼児園や中国食品店が整備され、新たな中国系コミュニティを形成している。

特に芝園団地では、中国IT人材やその家族が「越境コミュニティ」を形成し、公園やWeChatなどのSNSを通じて交流ネットワークが活性化していることが研究でも示されている。

川口市全体では中国籍の住民が約2万人も暮らしていて、特に芝園団地は代表的なコミュニティといえるであろう。

地方自治体レベルでも郊外型「隠れチャイナタウン化」が 

また伝統的なチャイナタウンである横浜や長崎と並び、大阪や神戸にも歴史あるチャイナ街が存在するが、近年も実態はしっかり維持・拡大しているようだ。

例えば神戸南京町では約1万人の中華圏住民が常駐し、飲食・寺院など中国文化施設も活発だ。地方自治体レベルでも中国人増加は顕著で郊外型「隠れチャイナタウン化」が確実に進んでいる。地方都市などの遠隔地でも中国人浸透が報告されるようになってきている。

富裕層だけに限らず高度人材の来日定住、経営管理ビザを使っての定住など、今後あらゆる移民者たちが日本の深刻な少子化の解決策となるかもしれない。そして、未来の日本社会を移民が支える日が来るかもしれない。

シリコンバレー「大企業の技術職」40~70%が外国出身者

米国でも一時はシリコンバレーを移民が支えたといわれてきたが、実際にシリコンバレーの大企業における技術職の40~70%が外国出身者という企業がほとんどで、インド系、中国系、ロシア、イスラエル、イラン系 などが多数活躍していた。

そして、その後に起業・経営者としても活躍しているグーグルのセルゲイ・ブリンはロシア系ユダヤ人移民だし、テスラのイーロン・マスクも南アフリカ出身だ。

ヤフーのジェリー・ヤンは台湾移民だし、今を時めくエヌビディアのジェンスン・フアンも台湾生まれで、PayPalのマックス・レヴチンはウクライナ出身だ。

出口の見えない深刻な少子化がここまで進んでいる以上、移民流入は自然な流れだと思う。

日本の政治に求められていることは不動産や企業、水、自然などの日本の大切な資産や資源を外国人にただただ規制緩和で安く買ってもらうことではなく、日本の国益になるような法整備とルールづくりをすべきだと思うのだ。

文/木戸次郎

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