「復帰後の1、2年はしんどかった」長濱ねるが明かしたこの10年間で最も苦しかったこと…見据えるマルチタレントからの脱却
「復帰後の1、2年はしんどかった」長濱ねるが明かしたこの10年間で最も苦しかったこと…見据えるマルチタレントからの脱却

俳優業、執筆業、報道番組のコメンテーター…。さまざまなジャンルで活躍を続ける長濱ねる。

かつて欅坂46でグループアイドルを経験し、一時は芸能界を離れ、自分を見つめ直していた時期もある。8月5日には芸能事務所フラームへの移籍を発表。そんな長濱ねるが等身大で語ったこと――。(前後編の前編) 

長濱ねる「復帰後の1、2年はしんどかった」

珍しい名前で、一時期は自身の名前が少し苦手だったという長濱。しかし、先日発売された2nd写真集は『長濱ねる』と自身の名を冠している。どんな心境の変化があったのだろうか。

「やはりこのお仕事をするにあたって名前を覚えていただくというのは、すごく大きな意味を持つと思います。

『長濱さん』よりも『ねるさん』、『ねるちゃん』と呼んでいただくことが多くて。親しみを持って名前を呼んでいただけるのは、あらためて幸せなことだなと感じています。

写真集も自分の名刺がわりになればいいなと思いもあり、表紙に大きく名前を載せることも受け入れることができました」(長濱ねる、以下同)

2015年に欅坂46に加入したが、2019年の卒業時には「この4年間ずっと放電してるような日々で……気づいたら心が空っぽになってしまいました。人前に立つことから距離を取りたいと思っています」と引退の可能性も示唆していた。

そんな彼女は1年ほどの休養の後、芸能活動を再開する。

「ソロに転身した直後は、自分が何に向いているのか分かりませんでした。

とにかく、いただいたさまざまな仕事に挑戦し、ひとつひとつ全力で取り組んできました」

そう振り返った長濱は、今年で芸能生活10周年の節目を迎える。この10年で一番『苦しかった』と感じたことは何だろうか。

「苦しかったことは、都度都度ある気がしますが、特に、一人で活動するようになってからは、悩みを共有しにくいなと思いました。

アイドル時代は、同世代の子たちと同じ仕事現場で同じ人間関係の中にいたので、些細なことも話し合えました。一人になってからは、小さな不安や心配事も共有できる人がいなかったので、復帰後の1、2年は大変でした」

ソロとして情報番組やバラエティなどさまざまな番組に出演してきたが、これまでとは違った環境や年齢差のある周囲とのギャップに、心細い思いもした。慣れない環境で一人抱え込むことが多くなったそんな状況を、どのように抜け出したのだろうか。

「お芝居をやるようになり、ドラマの撮影現場で同世代の方々と共演し、交流を持つようになりました。そこで出会った方々に悩みや近況を話せるようになってからは、少しずつ心を開けるようになって、肩の力が抜けていった気がします」

「居心地の良い大人な自分ではあるのかな」

20歳でアイドルを卒業し、25歳で2nd写真集を企画した。5年ごとの年齢の節目を大切にしているのには理由がある。

「その時その時にどんな自分でいられたのか、5年でどのくらい変化したのか。20歳、25歳と、立ち止まって振り返るタイミングなのかな、と思っています。

25歳の自分をなにか形として残したかったので、背伸びしたわけでもなく、幼く見えるように振る舞ったわけでもなく。等身大の姿を表現できていたらいいな、と思いました」

そう明かす彼女に「思い描いていた大人になれていますか?」と尋ねると、照れたようにこう応えた。

「思っていたより幼いなとすごく感じます。でも心の健康状態はいい気がしていて、好きなことに挑戦しやすかったり、好きなことを発信できたり。そういった意味では、すごく居心地のいい自分ではあるのかな」

公私ともに自分のペースで一歩ずつ歩みを進めている長濱ねる。インタビュー中も穏やかな表情でゆっくりと話す彼女はアイドル時代に比べて大人びた雰囲気を感じる。

俳優業では、パラリーガルや警察官、介護職員などさまざまな役柄を演じてきたが、今後挑戦してみたい役について聞いてみると、長濱なりの「年齢」への想いが詰まっていた。

「母親役をやらせていただいたときに『あぁ、そういう年齢になってきたんだ』と嬉しかったんです。30代、40代と歳を重ねていけば、これまでの役柄とは変わってくると思うので。生徒が先生に、子どもが母親に…というように。

自分が歳を重ねるのと同じように誰かに愛を与えていけるような役をやってみたいなと思います」

母の役をすることで自身の成長を感じたと話す彼女は、これからの未来予想図について打ち明ける。

30歳に向けて頑張りたいこと

幅広いジャンルの仕事をしながら、この1年半は俳優業を休みなく続けているが、自分の性格との相性を交えながらこう意気込む。

「ポンっと飛んできものをすぐ返すのは、どちらかというと得意ではなくて、ゆっくり考えながら、なにかを紡ぐことの方が好きな作業ではあります。

そういった意味でも、お芝居はじっくりと考えて、深く潜っていくような作業が多いように感じます。

お芝居はそうしたひとつひとつの積み重ねがすごく居心地がよくて、極めたいと思えるほど大きなものになりました。30歳に向けて今、一番頑張りたいのはお芝居です。

居心地のいい俳優業が自身の極めたいことだと話す彼女。そんな彼女のルーツは故郷・長崎にある。26歳になった今、故郷をこう評する。

「東京で生きていくようになって、あらためて長崎がとても魅力的な街なんだと再確認しました。坂が多くて昔から西洋の風が吹いている、日本の中でもちょっと特殊な街だったのかもしれないと大人になってからすごく実感しました。

今の自分だからこそ分かる長崎の魅力を、これからの世代にも伝えていけたらいいなと思っています」

一人になって改めて気づいたこと、これからの未来を見据える淡い瞳、等身大でありのままの自分。そんな肩の力がほどよく抜けた長濱は、どこか大人びた笑顔を見せた。マルチな活動をすることで広がった視野を活かしながら、彼女はまた次のステージへと歩みを進める――。

(後編へ続く)

取材・文/小島ゆう  撮影/矢島泰輔

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