
参院選の大惨敗を受けた自民党の両院議員総会が8月8日に開催された。石破茂総理(68)は続投意欲を示したものの、出席者からは総裁選の前倒しを求める意見が続々とあがった。
石破総理『私の首がつながっているならね……』
参院選の惨敗以来、続投意欲を重ねて示している石破総理。ただ、内心には“迷い”も生じているようだ。
「石破総理は最近、今後の内閣改造と党役員人事について周囲に問われると、『私の首がつながっているならね……』とどこか投げやりな返事だったそうです。
(参院選の敗因を総括した報告書をとりまとめた後の辞任を示唆している)森山裕幹事長が辞めたらどうするのかと問われても、『その時は、(身を)引かないといけないでしょうね』とボヤくのみ。
口では続投意欲を語っていますが、いまひとつ気迫にかけ、本気度を感じないのです」(自民党関係者)
すでに心の内では“退陣”を覚悟しているのだろうか……。実際、石破総理への風当たりは強まる一方だ。これまで“成果”として誇ってきたトランプ関税を巡る日米合意でも、ほころびが生じている。
日本政府は当初、▽税率15%未満の品目には一律15%の新税率 ▽すでに15%以上の品目には相互関税は適用されないという特例で米側と合意したと説明していた。ところが、7月末の米大統領令には、特例が適用されるのは欧州連合(EU)のみと記載されていたのだ。
「交渉担当の側近・赤沢亮正経済再生相が『説明と違う』と急きょ訪米する事態に。大統領令は修正される見込みとされていますが、野党からは『合意文書を作成していなかったことが裏目に出た』との批判が高まっており、国民民主党の玉木雄一郎代表は『石破内閣の不信任に値する事態だ』と指摘しています」(全国紙政治部記者)
党内でも退陣要求が公然とあがり、石破総理を支える機運はいっそう弱まっている。
「党内基盤が脆弱な石破総理の頼みの綱は世論ですから、政治改革でどうにかして支持率アップにつなげたいのでしょう。その焦りからなかのか、立憲民主党の呼びかけに応じ、企業・団体献金の受け皿である自民党支部の実態把握を指示した。
しかし、党内議論のないまま、独断で物事を進めようとする石破総理に、齋藤氏らは反発したものとみられます。齋藤氏は旧石破派出身ですから、かつての側近が公然と反旗を翻した格好です」(前出・自民党関係者)
安倍派出身の参院幹事長は適任なのか?
秋に補正予算の審議が控える中、参院自民党の役員人事も固まっていない。7月の参院選で武見敬三前参院会長が落選し、旧岸田派の松山政司参院議員が新会長に就任したが、参院幹事長の人事が事実上の棚上げとなっているのだ。
「参院幹事長の候補としては、旧茂木派出身の石井準一国対委員長に加えて、山本順三元国家公安委員長、岡田直樹元内閣府特命大臣らの名前があがっています。
ただ、山本氏や岡田氏は自民党派閥を巡る裏金事件の震源地である旧安倍派出身で、7月の参院選では非改選組だったため“選挙の洗礼”も受けていない。
彼らは安倍派五人衆の一人として主導的な立場にあった世耕弘成前参院幹事長とも近しい間柄です」(自民参院ベテラン)
参院自民党では「裏金事件の余波が続く中、安倍派出身の参院幹事長は適任なのか?」という意見も出ているという。
「しかし、旧安倍派を敵にまわしたくない参院会長の松山氏は、どうも決断に踏み切れない。役員人事が固まらなければ、今後の国会運営にも影響しかねません。
石破総理の求心力が低下する中で、執行部のリーダーシップが様々な面で弱体化している証左ともいえます」(同前)
石破総理は8月8日の両院議員総会で「引き続き、この日本に責任をもって参ります」と続投姿勢を改めて強調したが、出席者からは総裁選の前倒しを求める意見が続々とあがった。
そして、逢沢一郎総裁選挙管理委員長のもとで、総裁選の前倒しの実施について検討が開始されることが決定された。今後、党所属の国会議員と各都道府県連に意思確認が行われる予定という。
「総裁選前倒しに向けて、一つステージが進んだのは確かです。衆参ともに少数与党となるなか、連立組み替えの議論も高まっていますが、日本維新の会にしても国民民主党にしても、自民党内の支持を失って“死に体”となりつつある石破政権と組むメリットはない。
自民党としては、新総裁のもとで、連立の組み替えに取り組むのが現実的でしょう」(全国紙政治部記者)
こうした中で、気になる動きもあった。小泉進次郎農水相が8月27日に予定していた「小泉進次郎セミナー」を中止し、「総裁選の準備では」(後援会関係者)との声が上がっているのだ。
総裁選の前倒しが既定路線となりつつある中、“ポスト石破”を巡る党内政局もいよいよ本格化しそうだ。
取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班