
迷惑系YouTuberとして名をはせた、へずまりゅう。動画撮影中の迷惑行為が原因で現在、執行猶予中の身だが、7月に行なわれた奈良市議会選挙で3位当選を果たし、なんと政治家に転身することに。
彼の更生は本物なのか? 奈良公園のシカを観光客らの不適切行為から守りたい一心で政界へ進んだ彼の信念の先にあるものは何なのか? へずまりゅうこと原田将大に包み隠さず話してもらった。
両親から絶縁されていたが「ようやったのう」と褒めてくれた
――奈良市議会議員、当選おめでとうございます。今、どんな気持ちですか?
へずまりゅう(以下同) とにかくうれしいです。その反面、奈良市の看板を背負っているというプレッシャーが半端ないですね。当たり前ですが、歩きスマホをしないとか社会のルールとマナーを守り、炎上するようなことはしないよう細心の注意を払って行動しています。
これまでも街でヤンチャそうな若い世代には話しかけられていましたが、当選後は老若男女から「がんばってね!」「応援してる」とやさしい言葉をいただいています。それも尋常ではない数です。しかも奈良だけでなく、東京や福岡でも。
――これまで最も迷惑をかけたであろうご家族の反応はどうでしたか?
実は、両親から絶縁されていたんですが、今回、おじいちゃんのお見舞いをきっかけに帰省し、お父さんからは「ようやったのう。二度と人様に迷惑かけんなよ」と言ってもらえました。おじいちゃんにもいい報告ができたので良かったです。
――過去に二度の落選(参院山口区補欠選、東京都豊島区議選)を経験していますが、今回の選挙戦で弱気になったことは?
この1年間、奈良でシカを守るパトロール活動を続けてきました。
今回の選挙戦ではほぼほぼ演説ができていません。選挙カーを自分で運転し市内を回り、ビラ配りとSNSだけで勝負しました。
というのも、演説をしようとするとなぜか、その場所に5名程度の年配のアンチの方々が待ち構えていて、大音量で私の声をかき消すのです。車で追いかけられることもありました。
演説場所は直前にしか公表していなかったので、スパイじゃないですけど内部情報をもらしていた偽の選挙ボランティアさんがいた可能性があります。
当選後にボランティア用のグループチャットに悪口を書き込んだ方が数名いたので怪しんでいます。もちろんすぐにブロックしましたけど。
演説が思うようにできなかったので、そのかわりにいろんな大学の学食にお昼ご飯を食べにいきました。大学構内ではアンチも浮いちゃうからか、食堂まではついて来ないんですよ(笑)。
学食はカレーだとか、メロンパンなど美味しいものが多くて、食事をしていると「へずまがいた! なんで?」となるので、近寄ってきた学生とスマホで写真を撮り、彼らのの質問に答えていました。
迷惑かけて目立つよりも、人に喜ばれた方が100倍いい
――政治家となって一番やりたいことはなんですか?
奈良公園のシカさんを観光客らの不適切行為から守ることです。本来は県議会議員の範疇なんですけど、彼らは何もしていないので下から上にどんどんプレッシャーをかけたいと思っています。
奈良公園でパトロールしていると、動画で捉えられてはいないのですが、ひどいケースになると、シカさんを思いっきり蹴ったり、わしづかみにしてキャッチボールをする外国人を目撃しました。マジで許せません。
そのときに注意は何度もしましたが、ある女性はやっていないと逆ギレし、動画を撮影した私のスマホを奪おうとしたのち、被害者のフリをして警察を呼ぶ。反省ゼロです。これは本当に厄介な人たちだと思いました。
――へずまさんは、これまで迷惑系YouTuberとして、知名度と発信力を高めてきました。利己で動いてきた人間が急に政治家として利他精神を唱えても、信じられない人も少なからずいると思いますが。
そうですね。例えば過去に知名度を上げるために選挙を利用したこともありますし、今回のシカさんのパトロールもきっかけは動画のための企画でした。
さらに言うなら、バズる動画を撮ろうとスーパーで会計前に商品の刺身を食べた件で、現在、執行猶予中(2026年4月まで)の身です。
確かに私は人に迷惑をかけて知名度を上げてきましたが、1年間、奈良公園をパトロールをする中で、懐いてくるシカさんに家族のような愛情がわき、また応援してくれる人たちの想いにも応えたいという気持ちが大きくなっていきました。
シカさんが更生のきっかけを与えてくれたと言っても過言ではありません。
迷惑行為をして知名度を上げるよりも人に喜ばれた方が100倍気持ちいい。過去に間違いがあっても、コツコツと善行を積み重ねれば、認めてくれる人はいる。この年になってようやく気づかされました。私はなんて遠回りしたんだと思っています。
当選の裏で、借入4社にわたる大借金を返済!
――当選後は、奈良市議会宛に東京の会社を名乗った者から「近日中にへずまりゅうと家族を包丁で◯すぞ」と殺害予告が届いたり、文部科学事務次官だった前川喜平氏に「へずまりゅうが奈良市議に当選した原因は、教育の失敗にある」と投稿されたりもしていますが。
殺害予告の方は、大丈夫でした。私が狙われたのではなかったんですよ。実は差出人として名前を書かれた人が被害者で、海外からその人を貶めるために、そのようなメールをいろんなところに送っている悪人がいるんですね。ニュースにするために私が使われたというのが真相のようです。
前川喜平さんについては、自分はただ奈良のために頑張るだけなので、私に絡んでくる人は日本人の敵だと思っています。前川さんもこれ以上絡んでくることはないと思います。
その一方で、タレントの古舘伊知郎さん、フィフィさん、漫画家の倉田真由美さん、にしたんクリニック社長の西村誠司さんには、SNS上などで好意的なコメントをいただいて感激しています。
私のことを知っていてくれたんだという喜びもあります。こちらから絡んでも悪いかなと思って返信できていませんが……。
――今後も、へずまさんが奈良のためにやろうとしていることを邪魔してくる人間が出てくる可能性は捨てきれません。どう乗り越えようと考えていますか?
幸い私には投票してくれた奈良市民8000人の信用があります。おかしなことがあったら、迷惑系YouTuber時代から築いた発信力を使って、民意に問いたいです。良くも悪くもこの発信力は自民党の高市早苗さんにだって負けてないと思いますよ(笑)。
――へずまさんが本当に更生されたのだとすれば、同じように世の中の役に立ちたいと思っている人々にアドバイスはありますか?
私は、迷惑系YouTuberとして世間に出ましたが、かつて警視庁の採用試験を受けています。最終面接で落ちましたが、その当時は痴漢や万引き犯を検挙したいと思っていた正義感が強い若者でした。でも大借金をきっかけにYouTubeの世界に足を踏み入れ、利己心が肥大化していきました。
20代の私は人を疑うことを知らず、結婚を見据えた彼女のだらしない父親にお金を無心され、ランボルギーニが買えるほどお金を貸しました。事業が復活したらお金を返すという話でしたが戻ってくることはありませんでした。
当時、大手製鉄会社の給料だけでは間に合わず、アイフル、アコム、プロミス、レイクと消費者金融4社から借り、実は昨年、ようやく返済し終えまして、妻がハサミですべてのカードを切り捨てました。
サラリーマン時代は消費者金融に月10万円返済しても元金が一切減らず、ちまちま稼いでもしょうがないと腐っていたんでしょうね。そして迷惑系YouTuberになったわけです。
そんな私が今思うのは、炎上してSNSでバズってもやり方を間違えていれば、将来必ず後悔するということです。悪いことをして、応援してくれる人はいない。
苦境に一発で逆転しようとするのではなく、やりたいことを見つけたら、それをコツコツと続ける。諦めないで継続することが大事だと思います。
たとえ人生を見誤っても善行を続けていれば認めてくれる人は必ず現れます。それを信じて、毎日をすがすがしくすごしてほしいです。
取材・文/全夏潤