〈金属バット×東京ダイナマイト・ハチミツ二郎〉「テレビからのオファーを1つ断ると、一気に来なくなって…」2組の実力派漫才師の共通点
〈金属バット×東京ダイナマイト・ハチミツ二郎〉「テレビからのオファーを1つ断ると、一気に来なくなって…」2組の実力派漫才師の共通点

2023年に行なわれたツーマンライブ『8・20金属バットvs東京ダイナマイト ワンマッチ興行』は吉本興業のライブ配信で月間売上2位。劇場で不動の人気を誇る2組の漫才コンビ・金属バットと東京ダイナマイトのハチミツ二郎による対談が実現した。

(全3回の1回目)

因縁の2組

東京で活動する多くの芸人たちから厚い信頼を寄せられている、ハチミツ二郎と松田大輔のコンビ・東京ダイナマイト。とくにハチミツ二郎は、芸人仲間が結成した「二郎会」なる組織を束ねる頼れる兄貴、また酒豪としても知られていた。

だが、2018年に急性心不全・呼吸不全で入院、2021年には新型コロナウイルス感染症に罹患して危篤状態に陥った。さらに、2023年には母親をドナーに腎移植手術を受け、現在は人工透析を続けながら、車椅子での生活を送っている。

そして、昨年4月、ハチミツ二郎は自身のnoteで「2024年3月24日をもちまして東京ダイナマイトの漫才師としての活動は休止となりました」と宣言。その間、プライベートでは離婚を経て、一人娘を育てるシングルファーザーでもある。

2023年3月、「THE SECOND ~漫才トーナメント~」Hブロックの第2試合、対戦カードは東京ダイナマイトと金属バット。お笑いファンの注目が集まる中、ハチミツ二郎の体調不良により、東京ダイナマイトは欠場を余儀なくされ、金属バットの不戦勝が決まる。対戦相手のいないステージで金属バットが披露したのは、東京ダイナマイトの漫才をコピーしたネタだった。

それから5ヶ月後の2023年8月、幻となった対決を実現するかようなツーマンライブ「金属バットvs東京ダイナマイト ワンマッチ興行」が企画された。しかし、このライブまでにハチミツ二郎の体調は回復せず、左大腿会陰部筋肉内膿瘍及び敗血症性ショックの治療中という理由で、公演は延期となった。

そして2ヶ月後の10月20日にこのワンマッチ興行が、新宿のルミネtheよしもとでようやく開催。共演を長く待ち望んだ多くのファンたちは歓喜し、2組によって披露された漫才は今でも語り継がれている。



そんな伝説的なライブを経て今、東京ダイナマイトのハチミツ二郎と金属バットによる鼎談が実現した。

東京ダイナマイトの漫才を完コピ

──二郎さんが最初に金属バットと会ったのは?

ハチミツ二郎(以下、二郎) 「東京出てきたの?」「いや、まだ大阪です」っていうやりとりをした記憶があるから、東京の劇場の楽屋かな。

友保隼平(以下、友保) 新宿のルミネtheよしもとですかね。

小林圭輔(以下、小林) THE SECONDで当たるよりは前やったと思います。

二郎 会う前からもちろんネタは知ってたけど。あんなインパクトあるから。

──金属バットのお二人が東京ダイナマイトを知ったのは?

友保 わしはM-1(2004年の決勝)ですね。

小林 俺もM-1かな。

友保 全国放送の決勝のステージやのに、登場から刃物持って、えらいおそろしい。

二郎 俺たちがまだ侍だった頃ね。

友保 侍ちゃいます、あれヤ●ザです。

二郎 あの頃のM-1は審査員も厳しかったから。だって点数が50点とかだよ。



友保 あの頃はエグかった。

──2023年のTHE SECONDについても聞かせてください。東京ダイナマイトと金属バットが対戦するはずが、二郎さんの体調不良によって東京ダイナマイトが欠場、不戦勝が決まっている中、金属バットは東京ダイナマイトの漫才をコピーしたネタを披露しました。

友保 あれめっちゃスベッたな。

二郎 ネタ見てる人なんてほとんどいなかったでしょ。会場にいた審査員のお客さんと、エントリーした芸人くらいしか見てないんじゃないか。

小林 ですかね。配信はありましたけどね。

二郎 対戦はなくても、ネタはやらないといけなかったの?

友保 そうなんすよ。やから、どうせならってことで。

二郎 一番めんどくさいことやったんだ。

友保 自分らの漫才とはテンポも違うんで、めっちゃむずかったです。



小林 めっちゃ緊張したよな。

友保 ごっつ緊張した。おもろかったけどな。

二郎 俺は小学生の娘と配信で観たんだけど、「次こうなるよ」とか言ってたら「なんでわかるの!?」って驚いてた。

友保 ええ話や。

金属バットと東京ダイナマイトの共通点

──その後、2023年8月に東京ダイナマイトと金属バットのツーマンライブが決まりましたが、二郎さんの治療のため一度延期となり、満を持して10月に開催されました。

友保 あのライブは反響ありましたね。

小林 まわりの芸人からもけっこう言われたよな。

二郎 だってあのライブ、その月の吉本のライブ配信で売上2位の記録持ってるんだよ。1位はピースの綾部がアメリカから帰ってきて又吉とやったライブ(『ピーストークライブ ~日本とアメリカ~』)で、2位が俺たち、3位がナインティナインの横浜アリーナ(『ナインティナインのオールナイトニッポン歌謡祭』)。

小林 そうなんすね。

友保 ナイナイさんより上なのやばいな。



二郎 会場に来た娘が、俺の知らないところで金属バットのステッカー買って、どっかに貼ってるらしい。

友保 マジすか。

小林 ありがたい。

──二郎さんは、金属バットのどこに惹かれていますか。

二郎 この前ちょうど「ダブルインパクト」(日本テレビ系)で(千原)ジュニアさんが、かもめんたるに対して「どこにルーツがあるのかわからない」みたいなこと言ってたけど、金属バットのネタもオリジナリティがある。

最近はいろんなルーツを寄せ集めて、つぎはぎのようなネタで賞レースの決勝までは行けちゃう傾向がある気がするんだけど、金属バットにはそういうのがない。

友保 わしらルーツとかないですからね。

二郎 笑い飯に通じるところはちょっとあるのかな。バカになった笑い飯みたいなノリが出る時あるでしょう。

友保 笑い飯さんは好きですけどね。

二郎 でもルーツってほどでもないか。

友保 ですね。
モロ影響受けました、みたいな感じではないんで。

二郎 あとは、テレビを避けてるのがいいよね。俺たちの頃にテレビを避けてたのは、次長課長の井上さんか俺くらいしかいなかった。

友保 テレビ断ってたんすね。

二郎 あまりにも断るから、ある時、吉本の偉い人が俺のところに来て「どうしてテレビに出ないんだ」って聞いてきて、「あんまりおもしろくないんで」って言ったら、不思議そうにしてた。

小林 みんな出たがるのに。

二郎 当時は珍しかったんだよ。でも今はテレビ出ないことにしてる芸人なんて普通にいる。みんな損することがわかってきた。

友保 テレビ出なくても、YouTubeやなんや、自分たちで好き勝手できますし。

小林 二郎さんは最初からテレビ断ってたんですか?

二郎 俺が完全に断るようになったのは、いわゆるデブキャラの一人としてバラエティ番組からオファーが来て、跳び箱とかやらされた時から。跳び箱にタックルするとか、好きにやっていいなら別だけど、「デブキャラ芸人の1位を決めるんで真剣にやってください」とか言われて。


友保 そりゃしんどいすね。

二郎 ゴールデンの有名な番組だったけど、そんなことするならもういいやって。1つ断ると、いろんな番組でスタッフが同じだったりするから、一気にオファーが来なくなる。

友保 わしらも好きな番組は出てましたけど、断ってたらオファー来なくなりました。テレビは拘束時間が長いんすよね。

二郎 ギャラの問題もある。吉本じゃない事務所にいた頃は、バラエティなんて座ってるだけでギャラもらえていいなと思ってたけど、吉本だと劇場の出番があるから、それやったほうが全然いい。劇場なら伸びてもせいぜい30分でしょ。テレビは平気で3時間とか押すもんね。

友保 はよ帰りたくなります。

二郎 ほかの事務所から来るとよくわかるけど、芸人にとって専用の劇場があるのは相当でかいよ。ただ一方で、ぬるま湯になってる側面もある。ピラミッドだから上に行くまでにしんどい思いをするのはもちろんあるけど、一度上まで行けたら、落ちていくことってほぼないでしょう。それはぬるいっちゃぬるいよね。

友保 芸人としての寿命は長いですね。

二郎 ほかの事務所だと、1回売れてテレビとかに出て、そのあとテレビタレントとして出なくなったら一旦終わりみたいな感じあるけど、吉本は劇場でずっと活躍できる。テレビに出てるとか関係なく、劇場で毎回めっちゃウケてる芸人なんてたくさんいるもんな。

友保 そんなんようけいますよ。

「俺らのあとにトリできるんか?」吉本移籍後の舞台で東京ダイナマイトがスゴまれた伝説の師匠 #2へつづく

取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/名越啓介 

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