
金属バットと東京ダイナマイト。東西の実力派漫才師が現在のお笑いについて語る。
大阪からじゃないと出てこない才能
──金属バットのお二人は、東京で漫才をするようになって、大阪との違いを感じたりは?
友保隼平(以下、友保) 何やろな、大阪のがカマしてくるというか、東京は険がないよな。
小林圭輔(以下、小林) 大阪の人は自分もおもろいっていうスタンスがあるのかな。
ハチミツ二郎(以下、二郎) 芸人よりも普通の人のほうがそう思ってるところはある。前にボクシングの亀田三兄弟のお父さん(亀田史郎)と大阪の西成で飯を食いに行ったことがあって、一緒に食事に行った人たちに「俺のほうがおもろいよな?」って言ってた。
友保 エラいサンプル出してきましたね。
二郎 でもそれがど真ん中の大阪人じゃない?
友保 大阪人をぎゅっと煮詰めたらああなります。
二郎 ただ実際、大阪からじゃないと出てこない才能っていうのはあるよ。たとえば、藤井隆さんは関東からじゃ絶対出ない。あれは大阪が生んだ才能。ジミー大西さんもそう。あとはキャツミとか。
小林 藤井さんとジミーさんにキャツミが並ぶのやばいすね。
友保 キャツミはバグです。
二郎 でも関西だからこそ出てくるバグでしょ。あれ東京だったら表現者になってないと思う。
──藤井隆さんはどんなところが大阪ならではなんでしょう?
二郎 くるってるじゃないですか。でも普段は真面目でおとなしい。それが一番、くるってる証拠です。
友保 あの方はド級の人ですよね。
二郎 ド級の人を許してくれるのが関西なのかな。東京だと無視されて終わりだから。でも冗談じゃなく、俺キャツミは本当に天才だと思ってるんだよ。
小林 あいつは天才です。
友保 ド級ではあるな。
令和ロマン・くるまに攻略されてM-1は終わった
二郎 吉本との関係は今どうなの。
友保 わしら吉本とはズブズブですよ。事務所なかったら何もでけへん。
小林 劇場もあるし、吉本以外だと自分たちでいろいろやらなあかんでしょ。
友保 とにかく楽して稼ぐことが大事なんで、吉本ならある程度いけば仕事もまわしてくれますし。
二郎 ギャラのほとんどを事務所に持っていかれるとかって、吉本の芸人はよくネタにしてるけど、実際はほかの事務所でもエグいところはあるからね。ネタにされてないだけで。なんなら、取り分の割合を知らない可能性すらある。
友保 おそろしい話や。
──今の若手は賞レースをきっかけに世に出ますが、それ以前は事務所の売り込みなどが強かったのでしょうか。
二郎 いや、事務所というより、テレビの作家なりディレクターなりがライブを観に来て、おもしろいと思ったやつに声かけて、わりとじっくり面倒見てましたよ。もう今はそういう足を使って見つけに来る人も、育てて面倒見る人もいない。事務所も賞レースが終わったあと、1位2位3位と順番に声かけるだけでしょう。
友保 賞レースで結果出さないと事務所は仕事くれないですからね。
二郎 吉本だけじゃなく、ほかの事務所も同じよ。準決勝に行ったとか決勝に行ったとかなると、急にマネージャーがついて仕事を入れる。本来マネージャーの仕事は、おもしろいと思った芸人をどうにか売ることのはずなのに。あのダウンタウンだって、大﨑(洋)さんがそういう存在だったんだから。
──近年の「M-1グランプリ」は、どう見ていますか。
二郎 審査員の芸人たちがまわりの目を気にしすぎているせいで、どんどん点数が上がってますよね。つまりそれは、審査員のレベルが下がってるってこと。何より去年(2024年)、令和ロマンに連覇されて、(髙比良)くるまにM-1そのものを攻略されたところで終了なんですよ。
ここまできたらもう一度、出場資格を芸歴10年未満に戻したほうがいいとは思いますけどね。
金属バットは素を出さないほうがいい
──二郎さんは昨年、2024年3月24日をもって、東京ダイナマイトの漫才師としての活動を休止すると発表されました。
二郎 その最後の日(3月24日はTHE SECONDのベスト16をかけた予選が行われた日で、東京ダイナマイトはザ・パンチと対戦)も病院から会場へ行ってますからね。車椅子に乗るようになってからは、舞台の袖からセンターマイクまで歩くのもしんどくなって。
──ご自身の腎移植手術や人工透析についても、noteなどで積極的に発信しています。
二郎 どっちかしかないと思ったね。全部を隠すか、全部をさらけ出すか。それで、さらけ出すほうを選んだ。まぁでも金属バットの二人は隠したほうがいいよ。病気とかに限らず、素とかプライベートなことは出さないほうがいい。
友保 ですかね。まぁ出すようなこともないですけど。
──小林さんは、二郎さんが活動休止について書いたnoteの記事を、Xで引用して投稿していました。「寝れんくなった 目、覚まされた、色んな意味で どうせ寝るんやろうけど」と。
小林 しましたね。
でも二郎さんの記事を読んだら、「治る病気じゃないんだ」と書かれていて。あぁ、そうなんや、そしたら、あの「元気なってからで」って言ったの、どんな気持ちで聞いてたんやろと思いまして。いらんこと言うてもうたかなって。それで目覚めました。
二郎 うん。やっぱり、金属バットは素を出さないほうがいいな。
小林 ですね。いらんこと言いました。
友保 わしらもこの先どうなるかわからんですし。
小林 二人とも、もう40歳ですよ。
二郎 40か、あと10年はちょっとずつペースを上げてやっていけるんじゃない? ただ、THE SECONDは3年連続で決勝行ってるから、どうなるかね。
友保 嫌ですわ~、そんな見られ方。
二郎 でもさすがにザ・ぼんち師匠クラスはもう出てこないか。
小林 いや、奮い立ったレジェンドの方が来るかもしれない。
友保 西川のりお師匠とか来たらおっかないで。
二郎 俺がもし漫才やるなら、トランスフォーマーみたいに座った状態から自動で立ち上がる機能が付いた車椅子でやるしかない。
友保 そんなんあるんですか?
二郎 あるにはあるのよ。
友保 ずっこいなー。絶対おもろいやん。
二郎 スベッたらシューンって座って。
友保 おもろいですやん。
3都市同日同時刻開催の東京ダイナマイト単独ライヴ
──8月30日に東京ダイナマイト単独ライヴ「ダイナマニア2」の開催が発表されましたが、東京・大阪・名古屋の3都市で同日同時刻開催というのは?
二郎 詳しいことは何も言わないです。
友保 うぇーい。
二郎 って、本当は当日まで全部シークレットでいきたかったのに、ちょっと情報が出ちゃってるんですよね。
友保 いらんこと言わないほうがワクワクしますよ。
──では最後に。相方である松田さんとの関係についても聞かせてください。
二郎 お互いのことよく知らないですね。松田さんは、ここ何年か舞台の仕事を多くしているせいなのか、この前YouTubeの撮影でサングラスしたまましゃべり出して、1回終わりました。なので、今回の単独ライブに向けて、かなり鞭打って叩き直しました。お前の仕事はこっちだぞって。
友保 二郎さんが後輩なんですか?
二郎 年は俺のほうが上だけど、芸歴は松田さんが先輩。というのも、松田さん、高校生の時に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「お笑い甲子園」っていう、劇団ひとりとかも出てたコーナーに出てるのよ。それで、デビューとしては先輩ってことにしてる。
友保 そんな先輩を叩き直して。
二郎 とにかく詳細は言えないけど、単独ライブは配信一切ナシなので、それぞれの劇場で楽しんでください。
小林 ください。
#1「金属バット×東京ダイナマイト」2組の漫才師の共通点
#2「俺らのあとにトリできるんか?」劇場でスゴまれた師匠、も併せて読む
東京ダイナマイト単独ライヴ
「ダイナマニア2」2025年8月30日(土)20時開演
東京・大阪・名古屋 三都市同日同時刻開催
チケット詳細はコチラ↓
r.ticket.fany.lol/dynamania2
取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/名越啓介