
〈東洋大学卒ってなんだ! 彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している こんな嘘つきが市長に選ばれるなんて信じられない! 議会に真実の追及を求める!〉6月上旬、伊東市議らに届いた怪文書から田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑の追及ははじまった。それから約2か月たった今も学歴詐称疑惑をめぐる騒動は一向にしずまる気配がない。
「除籍という言葉に不気味なものを感じました」
8月13日、百条委員会にて田久保眞紀市長の証人尋問が行われたが、大きな進展があったとは言い難く、いまだ伊東市政は混乱と停滞が続いている。
学歴詐称疑惑の追及から約2か月、これまで数々の批判を受け続けてきた田久保市長は何を思うのか。これまでの直撃取材では記者の声かけに応じなかった田久保氏が、百条委員会後、ついにその胸中を語った。
――まずは田久保市長の学歴詐称疑惑についてですが、そもそも田久保市長としては東洋大学を卒業していたという認識でしょうか?
「特に問題があるとは思ってなかったです。大学に行ってない時期もありましたがまったく行ってなかったというわけではなかったので、自分の中では何か問題があるという意識は本当になかったんです」
――問題がないというのは、卒業はしているという認識でいたということでよろしいですか?
「そうです。これまで一度も卒業証明書を取ったことがありませんでしたし、卒業に関して問題はないだろうと思っていました。そういう意味では私の確認不足、認識不足でありますし、本当に申し訳なかったのですが。
選挙公報とかに華麗な職歴や経歴を載せる方もいますけど、私自身、市議選も市長選もやっていますが公報に何年に卒業して、経歴を入れることにこだわっていなかったというか、自分でもPRしたいという思いもなく重要視してなかったので……。
確認不足で最終的に事実と違ってこのような状態になってしまっているので本当に申し訳なかったとしか言いようがありませんが……」
――学歴詐称疑惑が(発覚する)きっかけとなった“第一の怪文書”について当初はどのように思いましたか?
「じょ、除籍?って。この言葉にインパクトがありましたから。中退とか退学という言葉は聞いたことありましたが『除籍』という言葉はあまり聞き慣れない言葉だったので、不気味なものを感じました。
さらに怪文書には※印で(卒業証書の)偽造には注意とまで書かれていて。『これは何だろう』『何かあるのか』『私って除籍って処遇だったのか?』など危機感も感じました」
――その後、ご自身で車で大学に確認しに行ったという経緯でしたね。
「はい。市長就任直後で超過密スケジュールだったこともありましたし、怪文書の存在は6月上旬には知っていましたが、6月28日になってから行きました。
また、巷ではすぐ卒業証明書は取れるという話でしたが、30年以上前で学籍番号もわからず、すぐに取り寄せられる状況ではありませんでした。
窓口に行って『卒業証明書を取らせてください』と言うと、しばらく時間がかかって『卒業証書はお出しできません』という話になり、除籍になっていますと伝えられました」
「何かが動いていて自分がどんどんはめ込まれていくのかなという不安」
――除籍に関しては(本当に)その時初めて知ったなら、ショックを受けられましたか?
「卒業していないことのショックはもちろんそうなんですけど、(怪文書の)除籍って言葉が一致していたことへの不気味さの方が正直ありました。私自身そこで初めて除籍を知ったわけですから。
もちろん偶然言い当てた可能性が100%ないとは言い切れませんが、本来私しか知らない個人情報を知っている人がいるという衝撃の方がありました。
私自身出歩いていることが多かったので、連絡の行き違いがあったかもしれませんし、大学に落ち度があるとは思いませんが、母も私も除籍という連絡は受けた記憶はないです」
――田久保市長としては誰かが大学の記録を勝手に請求した、もしくは漏らした、そのように思っている?
「そこまでは私にはわかりません。ですが、なんかこう何かが動いていて自分がどんどんはめ込まれていくのかなという不安がありました」
――現時点で除籍の理由については大学に聞かれてない?
「そうですね。はい」
――(疑惑の)卒業証書についてはどのようなタイミングで手に入れられたのでしょうか?
「本当に申し訳ないんですけど卒業式も出ておらずそこの部分に関してきちんとした記憶がなくお答えできないのが正直なところです」
――可能性として高いのは郵送でしょうか?
「郵送であればもしかすると記録が残っているかもしれませんし、そこは改めてちゃんと大学に問い合わせたいですが、どの程度の記録が出てくるのかはまったくわかりません」
――卒業証書について大学が手違いで渡した可能性と、田久保市長が何らかの形で作られた可能性があるのでしょうか?
「そこについてはこれから分かる範囲で調べていくしかないのかなと。ただ、言えることは卒業はしておりませんし除籍になっていることも事実です。
その事実に関しては動かないことですから。
――卒業証書を提出して調べれば話が進むのでは?
「タイミングを見ています。最初の怪文書のこともあり慎重に対応しています。結局自分が除籍と知らなかったのに除籍になっていますよね。その時点で(怪文書に)※印付きで偽造って書かれると何かあるのかなと思ってしまいます。
最初の頃はここにも何かあるのかと思い、むしろ(卒業証書を)出さないようにしていた部分がありました。“何か”というのは偽造にするための策のような何かです。それと今刑事告発をされていますので、不用意に出せない部分もあります」
「卒業式に出ておらず、その後の飲み会にも出た記憶がありません」
――田久保市長自身が卒業証書を偽造したわけではないが、刑事告発されているので慎重に対応したいということでしょうか? 卒業証書を警察や検察に提出する予定はありますか?
「今はとにかく自分から情報を出すこと自体がリスクだという風に思っている部分もあります。
市民のみなさんに『もっとちゃんと説明しなきゃ分からないじゃないか』と言われても、確定したものだけで説明しようと思っていますので、今の時点では出せる情報と出せない情報が残念ながらあります。
まだ具体的に警察の方から何か提示(要請)や問い合わせがあったわけではありません。ただ刑事告発をされている方がいますから、それに向けてしっかり対応していかなくてはいけないなという風に思っています」
――7月18日に議長あてに田久保市長の同級生を名乗る方から告発文が届いていましたね。そこには卒業できない田久保さんをかわいそうに思い、同級生が余興で卒業証書を作り、卒業式の夜に居酒屋で渡したと書いてありました。
「私の手元に原文は届いてないのですが、同級生が私をかわいそうに思い卒業式の夜に飲み会で卒業式をやって渡したというのを聞いた瞬間に、どう考えても事実と違うと思いました。
一部報道で卒業式の後の飲み会で私と一緒だったという風に証言してくれた友達がいたのですが、後に『本当に私と会ってる? 大丈夫?』と確認したらあまり自信がないという話になりました。
不本意な形ですが一応、今これだけ有名になりましたので、散り散りになっていた同級生とほぼほぼ連絡がつくようになりまして、LINEグループで連絡をとっています。
そこで『卒業式のあとの飲み会で私を見た覚えある人いる?』と聞くと、やはり私を見た記憶がある友達はいませんでした」
――飲み会に行ってないし、同級生が作ったという卒業証書も受け取っていない?
「当然受け取っていません。30年以上前でまだパソコンやプリンタも今みたいになかったので偽造といってもどうやって偽造するのかも分からないですし。
みんなも『そんな技術持っている人は当時いないよね』と言っていましたし、卒業証書を作ったという人もいませんでした。
そうやって同級生と話していると、同級生の中にも卒業できていない人がいるんだって逆に知りました。
『自分は7年通って退学になっている』『俺も除籍かもしれないから見に行ってみる』とそんな風に言っている同級生もいました。告発文を出した方は匿名の知人ということですから一体誰だかもわかりません。
この告発文もですが百条委員会で匿名の知人が私から聞いた話として証言をされていましたが、それらを証拠として採用するとなると、事実と違うことに関してはちゃんと修正しないとと思い8月13日は百条委員会に出席しました」
学歴詐称疑惑について、田久保市長は終始「卒業はしているという認識だった」と繰り返した。
後編ではさらに田久保市長の進退など今後についても尋ねた。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班