〈田久保市長・独白90分〉「雰囲気がよそよそしかったのでスマホの録画ボタンを押したんです」卒業証書チラ見せ騒動の詳細と、今も市長の座にしがみつく理由
〈田久保市長・独白90分〉「雰囲気がよそよそしかったのでスマホの録画ボタンを押したんです」卒業証書チラ見せ騒動の詳細と、今も市長の座にしがみつく理由

6月上旬、伊東市議らに届いた怪文書から田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑の追及は始まった。疑惑の渦中にある田久保市長が集英社オンラインのインタビューに応じ、停滞する伊東市政や自身の今後について語った。

(前後編の後編) 

“チラ見せ”が19.2秒か10秒だったかで食い違い…当日の違和感

――8月13日の百条委員会については卒業証書の“チラ見せ”についての報道が多くされました。“チラ見せ”とは6月上旬に青木敬博副議長と中島弘道議長に卒業証書を見せた時のことですね。

「6月4日の朝9時30分、いわゆる就任の挨拶でお二人でいらっしゃいました。当初は色々雑談、最初の演説に対する質問の内容などを話していました。お二人は私が市議会議員時代から知らない仲ではなかったんです。

ですので市長室に『どうも』って入ってきた時に、なんとなく雰囲気がよそよそしいというか、いつもと違うと思いました。

それでとっさにたまたま置いてあったスマホの録画ボタンを押したんです。置きっぱなしの状態なので音声しか入っていないんですけどね」

――“チラ見せ”の時間が19.2秒か10秒だったかで田久保市長と、青木敬博副議長、中島弘道議長の主張は食い違っていますね。

「偶然なのか偶然ではないのかわかりませんが、その日に『広報いとう』の7月号などに履歴を出すなどにあたって、『卒業証書を持ってきてください』と秘書課に言われていたのでちょうど卒業証書を持ってきていたんです。

それで議長が見せてもらいたいと言うので見せました。音声には『じゃあ、わかりました。わかりました。見せますよ』って私の声が入っていて。

19.2秒、提示した後に議長からは『いいじゃん』とコメントをいただいています」

――市民の皆さんに対してはどのように思われますか? 応援や批判など様々な意見があるかと思いますが。

「ご心配もおかけしたし、ご迷惑もおかけした部分に関しては本当に申し訳ないという思いです。市民のみなさんのお考えがメインなので、どんなお考えも重要かなと思います」

――7月当初の会見では辞職を決意されていましたが、当時はどのような心境でしたか?

「私の経歴に関する問題が起きましたので、辞職して皆さんの民意をお示しいただいて再選ができれば一番いいと進めておりましたが、そこから状況が二転三転しました。

もちろん厳しいご意見もありますし、『辞めるな、負けるな』というご意見もあります。その中で今は続投し、『市長になる前の状態に戻ってしまうということだけは避けてほしい』というお声もいただきました。

私個人というよりも本来伊東市政の改革は市民の方が勝ち取った前進でもあります。ご不安やご心配をかけたことはお詫びするしかないことですが、市民の皆さんが自分たちで改革を進めることをもう少し続けられないものかと。

私もいま非常に厳しい立場ではありますが、元には戻さずいま現状やれる人がやれるところまでやるのも1つ、自分としての姿勢かなと思っています」

メガソーラーは一体何が解決済みなのかと

――田久保市長が続投されることについて、市民からは反対の声も多いかと思いますが、現在は辞職されるということはまったく考えていないわけですね。

「会見の方でもお約束を果たさせていただくということを言わせていただきました。メガソーラー問題にしてももう9年関わってきていますが完全白紙撤回に向けて、もうちょっとというところまできています。

熱海の(メガソーラー建設用の盛り土が原因だと言われている)土石流の映像を見た時のショックは大きかったですし、熱海とは同じメガソーラーではありませんが、勇気を持って止めないと同じことが起きないとも限りません。

また、新図書館建設の中止についても皆さんが期待を持って票を投じていただいておりますので、やれるだけのことはやりたいと思っております」

――伊豆高原メガソーラー計画は白紙撤回されており、新図書館の建設計画についてはすでに解決済みという声があります。それでも田久保市長はメガソーラー推進派が市長になれば(白紙撤回が)取り消され、許可が出ることもありえると主張しています。

どういうことでしょうか?

「私としては解決済みと言われたことにむしろ驚きではあります。一体何が解決済みなのかと。私が市長に就任して一旦止まっているように見える部分はあるかもしれません。

メガソーラーに関してはまだ裁判も続いており、事業者側もご自分の主張をされています。事業者側はもう納得して撤退をされたというわけでは決してないのが現状ですね。

新図書館については私の方で入札を停止して、この事業に対する予算を削っています。ですが、百条委員会で入札停止について行政手続き上問題がないのかと調査しています。

私もその場にいなかったのでまだ分かりませんが、何か問題があったとなるとまだまだしっかり見ていかなきゃなりません」

――先日、田久保市長はSNSで『この町で何が起きていて、何と対峙しなければならないのかは、みなさんが公開さえる(原文ママ)事実から見てとれるもので考えて、議論していただきたいと思います』と投稿されていました。この方とのLINEを公開した意図は何でしょうか?

「私が選挙で掲げた公約が二つ。いわゆるメガソーラーを完全に白紙撤回するというお約束と、もうひとつが新図書館の建設計画を白紙にするというお約束。そこに関して一筋縄ではいかないことも色々起きておりますし、感じております。

今後は確定している事実を示してこの町でどんなことが起きているか皆さんに考えていただくべきかなという風に思っています」

――また、「現在公開できる情報」として、田久保市長を刑事告発した建設会社社長とのやりとりを名前こそ伏せていましたが公開しました。

建設会社社長からのメッセージには「私は副市長にどうですか!?」(原文ママ)とあります。この方とのLINEを公開した意図は何でしょうか?(※♯15では建設会社社長の主張を掲載予定)

「市長選の前から知っている方で面識のある方です。今回は一方的にメッセージをいただいて私のほうはどう受け止めていいのかわからずご返信はしていないのですけども。

公開したのは何が起きているのか市民のかたに知っていただくことも大事なことかと思ったからです。

今何が起きているのか、皆さんの目と、それから耳と、それから自分たちの中でぜひ判断をしてもらいたいなという風に思っております。今後も事実としてお示しできることは市民の方にお示ししていきたいと思っております」

卒業証書が偽造であると認定された場合どうするか?  

――議会は不信任決議案を提出する方針ですが、議会の解散はされるのでしょうか?

「不信任決議案に関しては議会の判断になりますので私のほうから何か言う立場ではないと思っております。あと百条委員会の結論がどうなるかもわかりません」

――田久保市長は、辞職し再度市長選ということになれば出馬されると語っていましたね。

「いつそういった形になるのかという期間の問題はありますが、自分にとってやるべきことをしっかりやっていきたいなと思っております。

その時、出馬するべきと思えば出馬するでしょうし、もっと違う方に譲るべきと思えばそういった判断もあるでしょうし。自分の中でこうと決め込むのではなく、やれるところまでしっかり自分の責任は果たしていきたいと思っております」

――学歴詐称問題が起きてから生活は変わりましたか? 殺害予告なども出ていましたが何か嫌がらせを受けることはありましたか?

「生活自体はそこまで変わってないです。基本的に仕事は好きですし、役所の方もすごく気を遣ってくれて警備とかも考えてくれていますので、本当にありがたいなという感謝しかないという風に思っております」

――卒業証書が偽造であると認定された場合どうされるかお考えだったりしますか?

「仮定の話で偽造であるということについて、今からこのようにするという考えは特にしておりません。刑事告発や百条委員会など目の前の問題に自分が対応していくかというところです。

ありがたいことに今日代理人で来てくれた弁護士もそうですが、相談に乗っていただいている方も多数います。まずはこの難局を乗り切らなければいけませんので。それが保身のような言われ方をしているのも重々承知しております。

ですが私がここで退場するとこの町にどういったことが起こるのか、それを考えますとある意味、石にかじりついてでも対応できるベストを尽くしてやっていく、それだけかなと思っております」

――最後に田久保市長の伊東市に対する思いをお聞かせください。

「本当に自分のためだけだったらここまではたぶんできていなくて。新図書館の問題もメガソーラーの問題も、戦える人間が最後まで戦うべきという意味では私が役目を果たしたい。

伊東市には素晴らしい海と素晴らしい自然がありますので、それは地域の財産として何を賭しても守っていきたいと思っています」

田久保市長の訴えを伊東市民はどう受け取るのだろうか。まだまだ市長の言動には注目が集まりそうだ。

※「集英社オンライン」では、今回の記事についてのご意見、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ