
現在、日経平均株価が連日最高値を更新し、日本経済復活への期待が熱狂的に報じられている。とはいえ、この株価上昇でも潤うのは一部の輸出企業ばかりで、国民は物価高に苦しみ、実質賃金は低下し続けている。
日経平均過去最高値! 日本経済は本当に復活したのか
株式市場はかつてない熱狂に包まれている。日経平均株価は連日最高値を更新し、新聞やテレビは「日本株バブル再来」「日本経済は復活した」といった見出しで賑わっている。
街角の証券会社の窓口には久しぶりに個人投資家の姿が戻り、証券アプリのダウンロード数も急増しているという。しかし、私はこの光景を前にして、むしろ不安を覚える。
なぜなら、現在の市場を動かしているのが「個別企業の実力」ではなく、「指数」だからである。投資家の多くは企業の事業内容や競争力、経営者の力量を見ることなく、日経平均やTOPIXに連動した投資信託やETFをひたすら買い込んでいる。
そこには「個別株はリスクが大きいから、指数に投資しておけば安心だ」という心理が働いているのだろうと思う。しかし、この安心感こそ幻想に過ぎないと思うのだ。
その指数は「円安」という一時的な追い風に大きく依存しているからだ。輸出大手企業の利益は円安によって膨らんでいるが、それは決して「日本全体が豊かになった」ことを意味しない。実際には輸出産業の一部だけが潤い、その裏側で庶民は物価高にあえいでいる。
円安が進むと、輸出企業は確かに利益を増やす。だが、私たちの生活に直結するのはむしろ「輸入品の高騰」だ。エネルギー、食料、原材料の多くを海外に依存している日本では、円安はそのまま生活コストの上昇に直結する。
家庭の電気代はここ数年で目に見えて上がった。ガソリン代も補助金が切れればすぐに170円台、180円台に逆戻りする。スーパーに行けば牛乳、卵、パン、冷凍食品まで次々に値上げされ、内容量が減る「ステルス値上げ」も横行している。
外食チェーンも値上げラッシュで、かつて500円で食べられたランチはいまや800円、900円が当たり前になった。
共働き家庭ですら「去年より生活が苦しい」と口を揃える
実質賃金は下がり続け、共働き家庭ですら「去年より生活が苦しい」と口を揃える。
若い世代は「将来のための貯金どころではない」と嘆き、年金生活者は「電気代を払うためにエアコンを我慢する」という声まで聞こえる。円安放置のツケを最も重く負担しているのは、株高を実感できない庶民なのである。
円安のもうひとつの副作用は、外国資本による日本資産の買い漁りだ。日本の不動産、森林、水源地、そして企業株式までもが「安く買える資産」として標的になっている。
軽井沢や北海道ニセコのリゾート地は、中国や欧米の富裕層に買い占められ、地元の若者はマイホームを持つことすら困難になっている。
森林や水源地が外資の手に渡れば、将来的には水の供給や環境保全に影響が出かねない。電力、通信、港湾といったインフラ企業も海外ファンドの投資対象となり、国の根幹が切り売りされているのだ。
「国富の流出」と呼ぶべき事態である
これは単なる不動産投資や資本取引ではない。「国富の流出」と呼ぶべき事態である。かつて日本企業が米国の不動産や企業を買い漁り、反発を受けた1980年代の構図が、今度は逆に日本に押し寄せているのである。ところが、政治の世界はこの惨状を直視しようとしない。石破首相と赤沢大臣は、米国との交渉で「自動車関税を15%に抑えた」と誇らしげに語る。まるで歴史的な勝利であり、国難を救ったかのように。だが実際には、自動車産業という一部の輸出企業を救ったに過ぎない。
さらに忘れてはならないのは、この交渉の裏で日本が米国に約束させられたものだ。最新鋭の戦闘機導入、ミサイル防衛網の整備、宇宙・サイバー領域での防衛協力──防衛費は今後確実に膨張する。GDP比2%を超える国防費は、過去に例を見ない規模だ。
そして財源はどうするか。
彼らは「減税すれば財政規律が崩れる」と繰り返すが、実際は財務官僚の論理を代弁しているに過ぎない。国民生活よりも、霞が関の都合が優先されているのだ。
アベノミクス相場の逆回転が起きる可能性
では、この状況が永遠に続くのか。答えは「ノー」だ。日銀が利上げに動き、米国が利下げに転じれば、金利差は急速に縮小する。そうなれば円高への転換は避けられない。
円高が進めば、輸出企業の利益は一瞬で吹き飛ぶ。円安に支えられていた日経平均も逆回転を始め、投資家心理は急速に冷え込むだろう。かつて2012年のアベノミクス相場で円安と株高が同時進行したように、今度はその逆回転が起きるのである。
こうした不安定な環境のなかで、特に目立っているのが「AI関連銘柄」だ。
例えば、PKSHA Technology(3993)は大規模言語モデルで注目されるが収益基盤は不安定と私は分析する。ABEJA(5574)に関しても上場直後に急騰したが利益体質は脆弱と見える。
エクサウィザーズ(4259)もAIサービスを展開するも赤字が続いており、さくらインターネット(3778)は国産GPUクラウドで脚光を浴びるが利益貢献は未知数である。
サイバーエージェント(4751)に関しては、自社LLM開発を強調するが、本業収益への寄与は小さい。
どんな投資家が勝ち組であり続けられるのか
マイナス面ばかりを語ってしまったが、これらは同時に「明日の本物候補」でもあるということは念頭に置いておく必要がある。無論、本物であれば株価はそれこそ何倍にも膨らむかもしれない。
しかし、熱狂に踊らされるのは危険である。万が一、現段階のまま期待が剥がれたとき、株価は急落することになる可能性を秘めている。
では、どんな投資家が勝ち組であり続けられるのか。答えは単純だ。熱狂に飛びつくのではなく、暴落の中で冷静に価値を拾える投資家である。
バブルが崩壊した後に残るのは、キャッシュを潤沢に持ち、地味だが堅実な収益を上げ続けている低PBR企業だ。
こうした企業はアクティビストに狙われやすく、改革を通じて眠れる価値が解き放たれる。指数や政治家の言葉に惑わされず、企業の本質を見抜く力こそが「常に勝ち組にいる投資家」の条件なのだ。
最後に、そうしたときにアクティビストが注目するであろう銘柄を参考までに挙げさせていただくこととする。
海外アクティビストが注目している銘柄10選
1. 平河ヒューテック(5821) – 累進配当余力大。
2. 村上開明堂(7292) – 自動車用ミラー大手。NAVファンドが保有。
3. 大平洋金属(5541) – 改革余地大、資産バリュー株の典型。
4. 日本パーカライジング(4095) – キャッシュ厚い。還元余力豊富。
5. ユタカフーズ(2806) – 東洋水産子会社。親子上場の歪み典型。
6. アリアケジャパン(2815) – 無借金経営。内需食品で安定収益。
7. オカムラ(7994) – オフィスなど内需インフラ的事業。
8. クミアイ化学工業(4996) – 還元圧力余地あり。
9. トモニホールディングス(8600) –
10. 東京産業(8070) – ネットキャッシュ潤沢。還元・改革余地大。
文/木戸次郎
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