
2018年に実施された『AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙』では2位となるほどの人気を集めた須田亜香里。2022年のグループ卒業後は、持ち前のトーク力を生かしてバラエティやラジオに出演するほか、俳優業にも力を入れている。
握手会で意識していた“相手からの画角”
2023年に舞台『Bumblebee7』で主演を務めるなど、演技にも取り組む須田亜香里。今年9月19日には、出演映画『男神』が公開される。本作で彼女が演じる山下愛子は、建設会社の社長の娘で、同じ会社の男性陣よりも数倍も働く“男勝り”な女性。
顔を泥だらけにし、ショベルカーを運転するなど、アイドル時代からは想像もできない演技を見せる。
――愛子は言葉も荒々しい女性ですが、演じる上で難しかった点はありましたか。
須田亜香里(以下、同) あんまりなかったです(笑)。私、形から入るのがすごく好きなので、衣装を着て、メイクを泥だらけにすると、必然的にちょっと動きが荒々しくなるというか。座る時には膝揃えなくなるし、あぐらかきながらグミ食べていたりとか(笑)。
――でも、やはりアイドルの印象が強いので驚きました。
そうですか?(笑) でも、私は兄がいたりとか、母方のいとこは全員男の子だったりと、子どもの頃は全員男の子の中で1人女子みたいな環境が普通だったんですよね。メンズの中で育ったので、女の子らしく育てられたっていうよりは、メンズと一緒に遊んで楽しい育ち方をした子ども時代でした。だから、今回の役も難しいと思うことはあんまりなかったですね。
逆に“かわいらしさ”の引き出しみたいなものは、あんまり子どもの頃からなくて。母がかわいいお洋服が好きだったから、花柄とかフリルのついた洋服を着せてもらうことはあったけど、そんな服を着ても変顔していたりとか(笑)。
――これまでの話を聞くと、アイドルとしての座を掴むために相当、努力や研究したのでしょうか。
アイドルもキャラクターとして研究していたところはありました。楽曲では、曲の主人公を自分の中でイメージしていましたし、握手会の時も“オンの私”でいようというか。
握手会に来る方には、「自分なんかが会いに行っていいかな」といった不安と、何日も前から楽しみにしてくれるワクワクが入り混じって、緊張する人もいます。そういう人にどうやったら「あなたが来てくれて嬉しいです」っていう気持ちが伝わるかを、特にいらっしゃった方から見た画角でいつも考えていた気がします。
――そういったアイドル時代の経験は、演技にも活きていますか。
活きていると思います。やっぱり画角の中にどう収まるかは、映画のお仕事ではほんとに大事なことだから。こういう動きをしたら演じる役柄の人に見えるだろうなとか、ここで笑っているとこう見えるとか。画面の向こうの人はどう思うだろうって想像しながら作っていくのは、割と楽しくやれているのかなとは思います。
「いろいろ見つける時間にしたい」
かわいらしい少女時代ではなかったという須田だが、SKE48時代は、“握手会の女王”とも呼ばれる神対応でファンの心を掴み、2018年の『AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙』では自己最高となる2位に。
また、加入から約10年がたった2019年に、26thシングル「ソーユートコあるよね?」で初センターを務めている。どのような思いをもってアイドル活動に取り組んだのだろうか。
――須田さんは、様々な目標を立てて達成してきた人だと思います。最初に達成したと思えることは何でしょうか。
最初に「これをやろう」と決めて達成したのは、多分クラシックバレエをやっていた高校生時代です。『Clara(クララ)』というバレエ雑誌があるんですけど、コンクールで優勝すると顔写真付きで載れるんです。それに載りたくて、「優勝しなきゃいけない」と思ったんです(笑)。
しかも、私は力ずくでもぎ取るタイプ(笑)。私は、そのコンクールで2位だったんですけど、1位の該当者がいなくて、必然的に2位が優勝みたいな感じになって、バレエ雑誌に載る夢がかなったんです(笑)。
SKE時代も、入ってすぐの頃から家では「センターになる」と言ってましたね。そこから時間はかかったけど、ほんとにセンターをやらせてもらったり。
――なぜ達成できたと思いますか。
私は、執着心がすごく強いんです。夢叶えるために必要なことって、執着だと思います。
「ほしい」「やりたい」「叶えたい」ぐらいのポジティブな言葉だと、キラキラしてて負けちゃうと思うんです、荒波に。なんというか、ドロっとしてるぐらいの方が、力ずくで叶えるにはちょうどいいと思います(笑)。
須田は今年10月に34歳となる。40代に向けて、いまどのような活動をしたいと考えているのだろうか。
――卒業後はどのような思いをもって活動をしていますか。
まず、「こういう芸能人になりたい」とか「こうありたい」というよりは、できるだけニュートラルな状態で生きられる人間でいたいっていう感じです。自分の人生最優先で、メンタルも、生活面も安定して動じずに生きていけるように整えることを意識しています。
さきほどもお話したように、執着心が強いタイプなので、行き先を決めてしまうとそれを達成することばかり意識しちゃうんです(笑)。
センターに立ちたいって思ったらそのための努力をするし、総選挙で順位上げたいって思ったら、分析をしてそこへの道筋を作る。
今、出会った目の前の人と何が生まれてどこに行き着くっていう、そういう予定しない楽しさって素敵ですよね。 だから、「こういう仕事、やってみませんか」って言われて、仮に「え、興味ないな」って思っても、その先に何かがあるかもしれないっていう好奇心で挑戦しようと思っています。もし違ったらそれはそれでいっかみたいに(笑)、そのトライアンドエラーを楽しんでいます。
――もしかしたらそういう取り組みの中で、新しい目標が見つかるかもしれないですよね。
そうですね。今、私は33歳なんですけど、40歳になった時にやりたいことが絞れたらいいなって思ってます。30代はほんとに肩の力を抜いて、いろんなことに挑戦して、好きなこと、嫌いなこと、苦手なこと、得意なこととかいろいろ見つける時間にしたいです。
目標に向かって突き進んだアイドル時代を経て、いまは自由、ときには失敗さえも楽しんでいるという須田。今後、新たなる目標を定め、それを達成する姿を見せてくれるのが楽しみだ。
(前編はこちら)
映画『男神』9月19日(金)より公開
「決して入ってはいけない」と語り継がれる正体不明の穴に、禁忌を破り息子を助けにいったことにより起きる得体のしれない恐怖と狂気、家族の悲劇を描くファンタジーホラー。
出演/遠藤雄弥 彩凪翔 岩橋玄樹 須田亜香里 カトウシンスケほか
監督・脚本/井上雅貴 原案/「男神」(八木商店)
配給/平成プロジェクト 配給協力/東京テアトル
2025年/日本/93分/カラー/シネスコ/5.1ch
(C)2025「男神」製作委員会
公式サイト https://otokogami-movie.com/
取材・文/羽田健治 撮影/廣瀬靖士