〈スタッフが何度も注意するも…〉映画館が「観客のマナー違反」で異例の謝罪…居合わせた客が語る迷惑客の一部始終
〈スタッフが何度も注意するも…〉映画館が「観客のマナー違反」で異例の謝罪…居合わせた客が語る迷惑客の一部始終

たびたびSNSで話題になる映画館のマナー問題。これまではユーザー同士の呼びかけや愚痴の共有にとどまっていたが、今回はついに公式の運営が謝罪文を発表したことで注目を集めた。

映画館が“観客のマナー”について謝罪

国内で23の映画館を運営する株式会社ティ・ジョイ。その一つ「T・ジョイPRINCE品川」は8月12日、公式サイトにて「T・ジョイPRINCE品川にて2025年8月8日(金)20時30分回『【吹替版】ジュラシック・ワールド 復活の大地』をご鑑賞されたお客様へ」と題した謝罪文を掲載した。

そこには次のように記されている。

「当該の上映回におきまして、一部のお客様の鑑賞マナーにより、最適な鑑賞環境をご提供できない状況にございました。映画鑑賞を楽しみにご来場いただいたにも関わらず、ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません」

文面には、スタッフによる巡回強化や上映前アナウンスの徹底など、再発防止策を講じることも記されていた。だが、実際に何が起こったのかまでは触れられていない。

映画館が観客のマナー違反を理由に謝罪文を公開するのは異例のこと。SNSではすぐさま話題となった。

「映写事故とかはたまにあるけど、鑑賞マナーによる謝罪って初めて見たな…どこかで炎上したわけでもないし、よっぽどヒドかったのか…?」

「わざわざ声明出すほどの鑑賞マナー悪い客ってどんなだったんだ」

「映画館側が謝ること?と思ったけど、マナーをたしなめるのも仕事の内って考えか……大変だな……」

この件について劇場に問い合わせてみたが、「詳細はお答えできません」との回答にとどまった。

しかし今回、実際に当日その場に居合わせた観客の一人・Aさん(匿名)から証言を得ることができた。

「私は最後尾に座っていたので、シアター全体が見渡せました。観客は7割ほど入っていて、最前列の真ん中に帽子をかぶった一人の男性がいました。その人が本編開始直後からスマホの画面を点灯させ続けていたんです」

最前列中央──多くの観客の視線の延長線上にある位置でのスマホ点灯は、否応なく目に入ってしまう。

何度係員に注意されてもやめず…

「他のお客さんが係員を呼んだのでしょう。上映開始30分ほど経過したころに係員が男性に声をかけにいっていました。すると一度はやめたんですが、5分ほどで再開。さらに30分後にも係員が来て注意し、一度はやめるものの、係員が去るとまた点灯。結局、上映終了まで繰り返していました」

Aさんによれば、係員の声かけに対して男性は反論する様子はなかったという。注意されると淡々とスマホを片付けるが、すぐにまた操作を始めてしまう。その繰り返しだった。

「上映中は、その男性の行為に対するため息やざわつきが大きくあったわけではないです。ただ、一緒に観ていたパートナーが上映後に最初に言った言葉が、そのスマホ男性のことでした。やはりほかの人も同じように、気になって集中できなかったんだと思います」

スマホを操作していた男性は上映後、普通に大勢の客と同じタイミングで早々に退席していったという。

「正直なところ、あれだけ繰り返すなら退席をお願いしてほしかったです。ほかのお客さんは皆マナーを守っていたので、本当に残念でした」とAさんは率直に語る。

T・ジョイ品川は比較的客層がよく、Aさん自身も普段から頻繁に利用している劇場だった。

それだけに、驚きも大きかったそうだ。

実際、Aさんは後日同じシアター・同じ席で別の映画を観たが、そのときは一切トラブルなく楽しめたそうだ。つまり、劇場全体が荒れているわけではなく、今回のケースは「一人のマナー違反」が極端に際立ってしまった出来事だったといえる。

映画館におけるマナーをめぐるトラブルは後を絶たない。快適に過ごしたいがために、一人で二席分を購入し、隣に人が来ないようにする観客もいるという。

また、そうしたニーズに応える形で、特別料金を払うことで、プライベート空間を確保できる「プレミアムシート」を設ける劇場も増えてきた。

劇場ごとに差が広がる映画料金

こうして劇場間の差別化が進むなか、かつては全国一律だった鑑賞料金にも差が広がっている。今回話題になったティ・ジョイは、今年9月1日から一般鑑賞料金を2200円に値上げする。

一方、TOHOシネマズは2000円、イオンシネマは1800円と、同じ映画でも劇場によって価格差が出ている。

映画館のマナー問題は、鑑賞料金の値上げやプレミアムシート導入といった「環境づくり」で、ある程度は改善されてきた。だが、今回のようにそれだけでは防ぎきれない個人の悪質なバッドマナーもある。こうした課題にどう向き合うのか──劇場側も頭を悩ませ続けている。

取材・文/集英社オンライン編集部

編集部おすすめ