
アーティストとしてのスカウトかと思いきや…
――まずは芸能界に入ったきっかけを教えてください。
もともと中学生の頃からダンスを習っていて、高校もダンス部の推薦で入ったんです。
そのあとアクターズスクール渋谷校に進んで、2年間ダンスを学んでいたのですが、卒業前にダンスの発表会があって、そこに来ていた芸能事務所の方から声をかけられたんです。
姉(元モーニング娘。矢口真里)がハロプロでアイドルをしていたので、そこからのスカウトと思われがちですが、声をかけてくださった方は妹とは知らずにスカウトしてくださって、松竹芸能に所属することになりました。
その時は、ダンスを見ていただいて声をかけてもらったから、『アーティストとしてスカウトされた!』と思ってたんですけど、まさかのタレント枠での採用で(笑)。その後、レポーターやバラエティなどで4年間、芸能活動をさせてもらいました。
――これまでの活動の中で印象に残っている番組はありますか?
初めてのテレビ出演は恋愛バラエティの『捨てる恋あれば拾う恋あり』という番組で、スザンヌさんやあびる優さんなど、名だたる方々と一緒だったんです。だから、見てくださっていた方からは、「矢口美樹って誰?」って思われてたかもしれないです(笑)。
あと、お姉ちゃんと初めて共演した番組で、千原ジュニアさんや芸能界のご兄弟姉妹の方々とご一緒させてもらったことも思い出深いですね。
――逆に大変だったなという仕事は?
レポーターの仕事でネコカフェに行ったんですが、かゆみがおさえきれなくなり、そこで初めて自分が猫アレルギーだと気づきました。
あとは、ホラーが苦手なのにお化け屋敷の仕事が来てしまったこともありました。もう怖くて怖くて、どうしても出たくないから、小さい頃おばあちゃんにもらったボロボロのぬいぐるみを持参して「ワタシ、この子を抱いていないと番組にはデラレマセン…」って不思議ちゃんのふりをしてオーディションにのぞんだら、あっさり落とされて、ホッとしましたね(笑)。
――その後、つんく♂さんが手がけるグループでアイドルとしてもデビューされたそうですね。
はい、タレント活動が楽しい反面、自分の中で「もっと歌って踊りたい」という気持ちが強くなっていきました。
そんな時、姉(矢口真里)から「つんく♂さんが秋葉原にアイドルカフェを出すみたいだよ」と教えてもらって、すぐにオーディションを受けたんです。無事合格して、外神田一丁目というアイドルグループの一期生になりました。
姉のすすめでアイドルに
――なんと、お姉様からのすすめでアイドルに挑戦したんですね。
はい、当時すでに23歳で、アイドルとしては遅咲きだったので、「1年で売れなかったらやめます!」と決めていました。結果的に1年間やらせてもらいましたが、自分の中では爆発的に売れたという実感はなく…。区切りがついたのでグループを卒業しました。
――2015年にご結婚され、お子さんも誕生していますね。その後はどんな活動をされていましたか。
芸能界を一度離れて、普通の仕事も経験しましたね。
ハンドメイド作品には思い出があって。姉のバースデーイベントの時、衣装の帽子をネットで注文したかったけど、到着が間に合わないかもしれないって言っていたんです。
その帽子の写真を見て、『使うか使わないかは自由だけど、よかったら』って、似たようなものを編んでプレゼントしたんです。そしたら気に入ってくれて、その帽子を衣装で使ってくれて、インスタにアップしてくれたのは嬉しかったですね。
――再び活動を再開しようと思ったきっかけはどんなことでしたか。
子供が生まれてからは、「歌やダンスに関しては満足したのかな」と思っていたんですけど、心のどこかで「もう一度ステージに立ちたい」という気持ちがわいてきて。夫や友達に相談したら、「美樹がやりたいならやってみたら?」って背中を押してくれたんです。
――現在は、TikTokでライバーとして活躍されていますね。
はい、ライバーになるきっかけは、松竹時代にお世話になった先輩で介護タレントの西田美歩さんからご紹介いただいたことです。
「やぐ(矢口)は配信に向いてると思うよ」と言ってもらったので、当時流行っていた17LIVE(イチナナ)で配信を始めたんです。
2023年7月まで4年間はイチナナで、そこからはTikTokに移行して、今は毎日19時から21時までの2時間、配信しています。
――TikTokでの活動で大変だったことは?
1位になったら渋谷の大型ビジョンに出られるイベントがあったんですが、1回目は惜しくも2位で出られなかったから、本当に悔しくて。
リスナーさんと、どうしたら次は勝てるかを話し合って、2回目のイベントで1位になれました。配信はひとりじゃできないって、本当に感じました。
これだけ頑張れるのは、「はいよろこんで」って曲がバズったこっちのけんとさんの動画を見て励まされたことですね。
家族が超有名人という同じような境遇の方が活躍している姿を見て、「わたしも頑張ろう!」って。そこから本気でTikTokに取り組むようになりました。
YouTube投稿動画をほとんど削除した理由
――なるほど。視聴者を惹きつけるために心がけていることはありますか?
まず「自分が楽しむこと」ですね。リスナーさんからコメントがなくてもしゃべり続けます。あと、ファンの方の名前が長いと覚えづらいから、2回以上来てくれた方にはあだ名をつけるんです。
たとえば、「ベディルギウスさん」なら「ベディちゃん」とか。
――コロナ禍ではYouTubeもやられていましたが、今はほぼ全ての動画が削除されていますね。
顔出しでメイク動画とかやっていたんですけど、なんか路線が違うかなと思って…。自分であみだしたスイカの美味しい食べ方とかも投稿していたんですが、視聴者さんからしたら、何を見せられているんだろう…って思う動画ばかりで。
また落ち着いたらYouTubeを再開したいとは思っていますが、今のところはTikTokに集中したいですね。
――TikTokを始めたい人へのアドバイスはありますか?
とにかく自分が楽しむことですね。視聴者さんからのコメントがなくてもしゃべり続けること。誰かひとりでも「見に来てよかった」って思ってくれたら、それでいい。
子育ての合間に1時間だけでも配信できるから、長い時間家をあけられない主婦の方にもおすすめです。
――今後の夢があれば教えてください。
新曲を出して、それをTikTokでバズらせたい!アニメのタイアップも夢ですね。『ワンパンマン』や『鬼滅の刃』、『薬屋のひとりごと』が好きで、いつもアニメ見ながら料理してます。
音楽で物語を届ける、作品の一部になりたいんです。「この作品、美樹ちゃんの歌が合ってたね」って言われたくて。まだまだポンコツですが全力で頑張るので、ぜひお仕事ください(笑)。
アイドルから主婦、そしてライバーへ。配信という舞台で、矢口美樹の挑戦はまだまだ続く。
文/佐藤ちひろ