「唇用美容液が痛い」「眉毛脱色でかぶれた」…流行メイクに皮膚科医が警鐘「15歳未満はリスク大、一生使えない化粧品ができる可能性がある」
「唇用美容液が痛い」「眉毛脱色でかぶれた」…流行メイクに皮膚科医が警鐘「15歳未満はリスク大、一生使えない化粧品ができる可能性がある」

時代とともにメイクの流行は変化し、韓国コスメやプチプラコスメが人気を集めている。コスメショップには次々と新商品が並び、手軽に「今どきの顔」を楽しめるいっぽうで、刺激の強いアイテムも増えている。

カプサイシンの成分で唇をふっくらとした印象にする効果のある「リッププランパー」や、薄眉の流行にともなう「眉毛の脱色」など、肌に負担をかける可能性があるものも。流行メイクに潜むリスクと安全な楽しみ方について、銀座ケイスキンクリニックの慶田朋子院長に話を聞いた。 

「リッププランパーは肌の弱い人にはきつい」

――韓国コスメやプチプラコスメの流行で、コスメの種類は各段に増えている印象を受けます。いっぽうで、「リッププランパーがすごく痛い」「眉毛を自分で脱色したらかぶれた」といった声もネット上に見られます。

慶田朋子院長(以下、同) 一部のリッププランパーは、唐辛子に含まれるカプサイシンなどの成分で皮膚を刺激して、腫れる作用を利用して唇を大きくしている商品です。それが皮膚にとって優しいか、いじめているかで言えば、すごくいじめていることになります。

唇は「粘膜移行部」といって、皮膚と粘膜の中間の性質を持っており、解剖学的にも皮膚とは構造が全く異なります。

また、口紅を塗る赤い部分は「赤唇(せきしん)部」、その周辺は「白唇(はくしん)部」と言います。「赤唇部」の部分が赤くツヤツヤしていると魅力が増す、ということがさまざまな研究で明らかになっているので、リップメイクはとても大事だとは思います。ですが、リッププランパーは肌の弱い人にはきついのではないでしょうか。

――私も唇が乾燥したり荒れたりしやすいです。

唇は角層が非常に薄くて水分を保持するバリア層が薄く、皮脂腺が存在しません。ほかにもアイホール(まぶたの周辺)、手のひら、足の裏にも皮脂腺はありません。

では唇はどうやって潤いを保てているのかというと、口の中からの水分(呼気の蒸気)で潤っているだけの状態。だからものすごく乾燥します。しゃべる機会の多さとか周囲の乾燥、食べ物の刺激やメイクの刺激によってかなり影響されます。

ただ幸い、唇の赤唇部も粘膜に近い性質を持つので、ターンオーバー(新陳代謝)がすごく盛んなんです。熱いお鍋を食べてやけどをして唇の内側の皮が1枚剥がれても、1日くらいで治りますよね。このように粘膜は再生スピードがとても早い。そのような特徴がある部分なので、いじめるのではなくて、優しく守っていただきたいなと思います。

――先日コスメショップへ行って「リッププランパー」を試してみたんです。「レベルMAX」と宣伝コピーが書かれた商品を唇に塗ったらむせてしまい、さらに口の中が辛くなってしまいまして。

それは相当な濃度の唐辛子成分ですね。カプサイシンは実は皮膚病の治療に使うこともあります。糖尿病などで人工透析をすると、強い痒みが出てくることがあります。

その痒みというのが常軌を逸するレベルなので、カプサイシン含有軟膏を塗って、その痛みで痒みを抑える、というような目的で使うほど、かなり刺激が強いのです。また、催涙ガスに含まれる成分としても知られています。ですからリッププランパーの使用は控えたほうが良いと思います。

炎症を繰り返すことで肌の「老化」につながる 

――眉毛の脱色のリスクについてはいかがでしょうか。 

数十年前から体毛の脱色をオキシドール(主成分は過酸化水素)などで行なっていましたが、その当時からかぶれる人はいました。毛のメラニン(色素成分)を何らかの化学作用で壊すような薬剤は当然皮膚に優しいわけはないので、一回であっても刺激性の皮膚炎を起こすリスクはあります。

あとは染毛でも脱色でも一緒ですが、毛が伸びて生え変わるごとに繰り返していくことになります。そうすると、何回目なのかは人によりますが、皮膚が感作(ある抗原に対して抗体を作ること)されて本物のかぶれ、つまり抗原抗体反応が成立してしまうことによる「接触性皮膚炎」のかぶれになる可能性もあります。

ですから皮膚科医としては、眉の色を薄めたいのであれば、脱色よりは眉マスカラのほうが優しいかなと思います。

ついでに言えば、まつげのエクステンションよりはマスカラのほうがましです。エクステンションはグルー(のり)でかぶれたり、眼瞼下垂が進行しやすくなりますから。また、洗いにくいのでニキビダニが増えやすくなったりしますし。

「ハレとケ」という言葉がありますが、イベントや撮影がある特別な日には、いろいろなさってもいいと思います。

でも日常的なメイクは出来る限り刺激は避けるべきです。なぜなら、繰り返すことでの刺激による炎症が起こり、炎症を繰り返すことで肌が老化するからです。

「微小炎症」といって、目に見えて湿疹を起こしていないレベルの炎症でも老化を進行させることがわかっています。ですから肌に刺激を起こして一つも得はありません。

――最近は小学生でもメイクする子が増えているようです。

皮膚のバリア機能は、15歳くらいでようやく整ってきます。子どもの肌は大人と同じではないのです。また、第二次性徴が始まる11歳から20歳ぐらいまではニキビが花盛りになるので、常に炎症を起こし、バリアが傷ついた状態です。

バリア機能が弱いところにメイク用品を塗り続けると、含まれる成分や金属などが、角質を超えて表皮に浸透し、抗原抗体反応を起こすチャンスが増えてしまいます。また、若いうちは安全性などの信頼度が低い安価な商品を選びがちであることも心配な点です。たとえ大手メーカーの品であったとしても、子どもが使用する前提では作られていません。

そしてある特定の成分Aが使えなくなると、その成分Aを含む化粧品はそこから一生使えなくなってしまうんですね。

そのリスクについてほとんど知られていません。文化的・教育的な意味合いではなく、医学的な観点から若年者のメイクは危険です、と言いたいです。

「メイクは基本的に15歳まではやめたほうがいい」  

――化粧品やメイクに関して何歳からであればOKでしょうか。

日焼け止めに関しては乳児からOKです。日焼け止めやニキビをカモフラージュしながら紫外線から肌を守るベースメイクは、将来の光老化予防のために絶賛おすすめしたいです。「眉毛を整える」といったことも特に害はありません。ただ描いたり塗ったりといったものに関しては、基本的に15歳まではやめたほうがいいでしょう。高校生からは、ニキビと相談しながら質の良い化粧品を使う分には構わないと思います。

それまでは、メイクは七五三など特別な機会だけに限っておいていただいたほうが安全です。バリア機能が弱い頃に化粧品を使ってしまうと、将来大人になって本当にメイクを楽しみたいときに、使えない成分が出てきてしまうリスクがありますから。

――リッププランパーを使わずに「ふっくらした唇」にするにはどうしたらいいのでしょうか。

ふっくらした唇にするには、まずしっかりと保湿をするだけでもずいぶん変わると思います。

あとはメイクをする大人の場合、リップを塗るときに、唇の輪郭よりも少し大きめに描いたり、立体的に描くといったテクニックで唇のふくらみを見せられます。

ただ、なかなかメイクと同じ土俵では語れませんが、どうしても「唇が薄い」とか「縦じわが気になる」とか、「上下のバランス悪い」といったコンプレックスがあるようでしたら、美容医療という選択肢もあります。信頼できるドクターに控えめにヒアルロン酸を入れてもらえば、確実に唇の形を整えることができます。毎日リッププランパーで唇を腫れさせるよりは、むしろそちらのほうが安全かもしれません。

私はヒアルロン酸注入指導医ですので、その方らしさを損なわない自然な仕上がりをモットーにしています。唇への注入も同じく、本当に控えめ、でも確かに美しくなるように施術します。縦じわがちょっと消え、リップラインが整い、バランスが良くなるけれど、大きくしない、というところからスタートします。そうすれば “やりすぎた感”にはなりません。もちろん、ヒアルロン酸注入は大人になってからですけどね。

眉毛に関しても18歳未満の方は受けませんが、アートメイクという方法があります。最近は毛並みを描くように薄眉に仕上げるのでとても自然です。でも流行もありますから、若いうちはメイクで描くほうがいいのではないでしょうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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