〈石丸氏が党離脱〉「都議選と参院選で全敗」と書いたメディアを名指しでガン詰め、女性記者には「ダブルスタンダードですね」自身は“円満卒業”を主張も周囲の反応は
〈石丸氏が党離脱〉「都議選と参院選で全敗」と書いたメディアを名指しでガン詰め、女性記者には「ダブルスタンダードですね」自身は“円満卒業”を主張も周囲の反応は

東京都議選に出馬した42候補と参院選の10候補が全員落選した地域政党「再生の道」の石丸伸二代表(43)が8月27日に記者会見し、党代表を9月16日に退くと発表した。既定方針通りだと説明している。

会見では自身の去就に絡む記事の表現に不満があるメディアを詰問する“石丸節”をみせ、東京都知事選の再出馬に意欲を見せた。一方で党関係者は石丸氏という「党の顔」を失えば活動資金にもこと欠くことになると暗い表情だ。

朝日、日経記者をガン詰め

会見開始予定時刻の10分以上前に席についた石丸氏は「メディアとのコミュニケーションの時間」を取るとまず宣言。

数日前に石丸氏の辞任を報じた朝日新聞の記者を名指しし、「石丸伸二氏が再生の道代表辞任へ、都議選と参院選で全敗」という記事の見出しについて「最後の一文、どういう気持ちでつけられた?」「(特定の意図に基づく)印象を与えてますよね」と詰問し始めた。

朝日新聞は選挙惨敗と代表が辞めることを並べることで引責辞任だと印象付けようとした、と言いたいらしい。

「一般的にはリベラル、愛と平和をうたう立場なのかなと思うんですが、実態としては愛だ平和だと叫びながら憎悪を撒き散らしてるっていうのが皆さんじゃないですか」

「自分たちは批判を加えているだけだと言いながら、しかし他の誰かがやったらそれは攻撃だと急にダブルスタンダードを使ってくる」

石丸氏の言葉はどんどんヒートアップ。朝日の見出しと何の関係があるのか分からなくなってきたところで矛先が変わり、今度は石丸氏が目をつぶる写真を掲載した日本経済新聞の電子版記事をスマホで示し、日経の記者に向かって日経が自分に「敵意(を)向けた」と主張した。

こうして報道陣にカマしたところで開始予定時刻に。会見で石丸氏が説明したのは9月15日に党代表選を行ない16日に交代するとの日程だ。

都議選と参院選に党から出馬した計52人のうち10人程度がこれまでに党を離れている。残る中で今後も再生の道で政治活動を続ける意思を持つ約40人が代表選の立候補資格と選挙権を持ち、8月31日まで立候補を受け付けるという。

「任期についてちゃんと言ってますから」

そして石丸氏自身は公募で選ばれていないので立候補も投票も資格はないとし、「私は再生の道のメンバーではなく発起人」と主張。今後も求められれば選挙の応援には応じるが、党からは「いったん抜けます」と話した。

取りざたされる広島県知事選出馬には否定的な考えを示す一方、3年後の東京都知事選出馬は「有力な選択肢の1つと捉えてます」と口にした。

会見で石丸氏は党代表を退くことは既定路線だということを最も強調した。選挙惨敗の責任をとるのではなく、再生の道の代表には「任期」がありこれを終えたとの主張だが、党代表に任期があることは出席した記者のほとんどが知らなかったもようだ。

そこで石丸氏は、

「私が任期について今まで公に言ったことはありますよ、昨年の12月、ReHacQというネットメディアのライブ配信で(大阪府の)吉村知事との対談で言及してます。『再生の道をこれから作る』『新党を作ります』と。

で、『代表は早ければ選挙の前に、遅くとも選挙が終わったら交代する』『出口戦略ももう決めてるんだ』と言って立ち上げてるんです。多分ほとんどの方、忘れてるか知らない状態だと思うんですが、ちゃんと言ってますから」

と話し、任期のことは公に話していると主張した。そして朝日と日経を槍玉にあげた意図を話した。

「なんで私がこんなところにこだわってるかというと、私が過去の発言を捻じ曲げたかのような印象を与える報道がこれまでされてきたからです。

“いや、最初から言ってたじゃないですか”と私の立場としては強く訴えたいんですけども、メディアの皆さんにそうではない伝えられ方をするともう抗いようがないですね。なので、やめてほしいなと思って今日はこの10時の(会見開始)前のくだりから釘を刺しにいったというところです」(石丸氏)

党関係者「金も人もいないから立候補者のサポートには限界がある」

この姿勢を記者席から批判したのが東京新聞の望月衣塑子記者だ。

「日経、朝日への攻撃。大変衝撃でした」と切り出した望月氏は石丸氏が安芸高田市長時代から同じ手法を繰り返してきたと指摘。

「かつてはうまくいったかもしれないが都議選、参議院選の結果はどうか。こういうやり方でメディアを攻撃することは石丸さんの信頼や評価を貶めてしまうんじゃないかと心配しています」と疑問を呈した。

石丸氏は記者の姿勢を質すことは「私個人のポリシーなので当然この先も不変です」と即答。

「大変申し訳ないんですけども、どの口がおっしゃるんだろうなと。望月さんが言われてるそのものを私はオウム返しをしているに過ぎないんですが。ダブルスタンダードってこのことじゃないですか。自分がやるのは批判だけど相手がやると攻撃だとおっしゃる」と反論し、2人のやりとりは10分強続いた。

党代表を退くことは「選挙の責任を取る、取らないの話じゃない」と言い続けた石丸氏は、「自分個人としてできる限りはやったと、やるべきことは果たしたという思いです」と“円満卒業”を強調する。

だが残される党組織は穏やかではない。昨年の都知事選で約3億円の献金を集めたと主張する石丸氏は党のほとんど唯一最大の金看板といえる。その石丸氏なしに活動資金の調達はどうなるのか。

党関係者は、

「まあお金がないよね。

石丸さんの理想を実現するためには議席獲得は必要だったけど、石丸さんが集めたお金だけでは議席は獲得できない。党はパーティーもやらないし政党助成金もない。金も人もいないから立候補者のサポートには限界がある。議席獲得はもともと難しかったと感じている党員や元党員は多いんじゃないかな」

と話す。

さらに、次の党代表が誰であろうと集める金額は石丸氏より「ゼロが一つ少なくなる」と予測し、「続投するか辞めるかは石丸さんの自由で党員がとやかく言うことではないけど、金がなくなると党の活動はできなくなるから、そこだけ何か工夫ができなかったのかなと思う」と続けた。

党は社会を再生する道を切り拓くどころか、党自身が生き残る道を探すのに追われることになるかもしれない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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