キングオブコント最下位、レギュラー番組消滅…50歳になったエレキコミックが語る悠々自適ライフ「自分の好きなものをどうやってお金に換えるか」
キングオブコント最下位、レギュラー番組消滅…50歳になったエレキコミックが語る悠々自適ライフ「自分の好きなものをどうやってお金に換えるか」

エレキコミックの25年は順風満帆ではなかった。キングオブコント決勝での最下位、レギュラー番組の消滅、事務所方針の迷走……。

それでも自由を手にし、多方面で活動の幅を広げてきた。「長生きしたい」と語るやついいちろうと、「お客さんを笑わせたい」と語る今立進。二人が歩んできた道、そしてこれからの展望を聞いた。(前後編の後編)

まさかの結果に終わった「キングオブコント」

――25年の歩みの中で、戦友のような存在はいましたか?

やつい 最初の頃は、みんなそういう存在でしたね。その中でもラーメンズ片桐仁とは一緒に組んでやっていたりもしますし、やっぱり片桐になるのかな。

今立 一緒にライブをやっていた芸人は多いですけどね。スープレックス劇団ひとりのコンビ時代)、アンジャッシュスピードワゴンアンタッチャブル東京03の前身のアルファルファ、バカリズム……。その辺りとよく一緒にやってました。

――すごい世代ですが、同世代の芸人が今も続けていることは、お二人にとってプラスになったり、気持ち的に影響はありましたか?

やつい そうですね。僕らの世代は、今まさにトップにいる人が多い。

今立 「面白い人は残るんだな」っていう感覚はずっとありますね。ライブをやっていた頃から。

――この25年で「一番ショックだったこと」「キツかったこと」など、続けていく中で心が折れそうになった出来事はありましたか?

今立 やっぱり一つは「キングオブコント」じゃないですかね。あれももう15年前の話ですけど。

――2010年の第3回キングオブコント決勝戦では、8組中8位に……。あのとき、私は「今回は絶対エレキコミックさんが優勝する!」と思っていました。

やつい すいません!(笑)。後輩のナイツの塙にも「何やってんすか」って言われましたね。

今立 でも今となってはね、あの年の大会自体が欠番ですから。

(一同爆笑)

――そうですね、あの年の優勝者はコンビを解散してしまって……。やはり「キングオブコント」が一番つらい経験でしたか?

やつい うーん、でもやっぱり序盤が一番大変でしたかね。2000年の演芸大賞(第15回NHK新人演芸大賞演芸部門大賞)を取るまではバイトもしていたし、本当に苦しかった。

――そこからは比較的スムーズに来られた感じですか?

やつい いや、30歳になる頃にレギュラー番組が全部なくなって、事務所も迷走して「今立を俳優にする」なんて言い出した時期があって。僕は「フリーでやってくれ」と放っておかれて。

「バイトをしながらまで続けたいほど好きではなかったから(笑)」

――それは確かに危機的な状況ですね。

やつい でも、そこからがむしろ楽しかったです。事務所の縛りがなくなって、自由になった。そこからの20年は本当に良かったと思います。

――結果的にやついさんはDJをしたりフェスを開いたり、サウナ・登山・怪談など、多方面で活躍されるようになりました。今立さんはゲームの番組や雑誌でよく拝見します。そんな中で、今の活動の中で、一番のモチベーションになっているものは何でしょうか?

やつい とにかく長生きして、同期が全員いなくなってもコントをやり続けること。それがモチベーションです。大喜利力があっても、演技力があっても、早く死んだら意味がない。だから「長生き」という分野で勝とうと思ってます。

今立 僕は変わらず「面白いこと」が好きだし、お客さんの前でウケるのが一番のモチベーションですね。スベるのは嫌ですけど(笑)。

――やっぱりライブが一番のモチベーションなんですね。

今立 そうですね。お笑い芸人としてはそれしかやってないですから。

――25年前に始めた頃と、今の活動を比べて「思い描いていたこととのギャップ」や「実現できていること」はありますか?

今立 僕は「できてる」と思いますね。芸人になりたい、それが夢だったので。

やつい 昔はもっとテレビに出てどうこう、って考えてたと思います。子どもの頃はテレビしかなかったから。だけどやっていくうちに「ライブを続けたい」「ラジオをやりたい」とか変わってきた。

ラジオもやって、ライブもやって、あとは「いい生活がしたい」っていうのがありました。だって、バイトをしながらまで続けたいほど好きではなかったから(笑)。

――えっ!(笑)。芸能活動を仕事として割り切って見ている部分もあるんですね。

やつい もちろん、ライブやって、くだらない話して、お金も入ってくる、それが理想です。

ただ、なかなか難しいから「自分の好きなものをどうやってお金に換えるか」を考えてやってきました。

その結果、独特な形になって、それで生活できているからライブも続けられる。だから結果としては、やりたいことはやれているんです。

――多くの芸人さんを見ても、エレキコミックさんの活動は理想的な歩み方ですよね。特に今の若い人たちは「テレビよりライブをやりたい」「自分の好きなことをしたい」という傾向が強いですし、その歩みはモデルケースになっていると思います。

やつい 今は特にそうですよね。YouTubeとかもあるし、事務所関係なく人気が出れば自立できる。あの時代にそれがあれば、また違ったと思います。

50歳を迎えて、これから挑戦したいことは……

――では25年の軌跡として、コンビとして「一番燃えた瞬間」を挙げるとしたら?

やつい うーん…………なんだろうな……。……今が一番燃えてますよぉー!!

(一同爆笑)

今立 そういうのいいよ!(笑)。書きやすいのかもしれないけど。

やつい でもやっぱり、キングオブコントを目指していた頃でしょうね。

そのときが一番燃えてた気がします。ただ僕は「理想を言いたがるタイプ」で。大会に向けて「一番強いネタ」を持っていくんじゃなく、その年に作った新ネタを必ず出してました。

周りは昔からやってる鉄板ネタを出していたんですけど、僕らはしなかった。というより、それでいいと知らなかった。「そうすればよかったんだ」って、後から思いました(笑)。

今立 新ネタをやっていくのがカッコいい、と思ってたんですよね。ちゃんと大会を分析して最適化したネタを作るとか、全然やらなかった。

やつい 若かったからトガってたんでしょうね。

――もうキングオブコントには出られないんですか?

やつい 毎年出ては準決勝で負けて。最後に出た年(2017年)は準々決勝で落ちちゃって。気づくと僕らが一番(歳が)上になってた。

そこで「もう大会はいいかな」と思って、出なくなったんです。

――最後になりましたが、これからやっていきたいことはありますか? 新しい仕事や挑戦したい分野など。

やつい 「健康寿命を伸ばしたい」と思ってます!  70歳になってまで仕事をしている芸人ってあまりいないじゃないですか。だから「あと19年しかない」と思って生きています。

でもそれとともに、「とにかく楽しい生活を過ごしたい」とも思ってます。仕事は人生の一部でしかない。仕事のためにプライベートがなくなるような人生を選ばなくてよかったと。

仕事は生活を良くするためにあるもの。だから、旅行に行きたいときは行く。やりたいことをやれるように、あまり仕事に偏らないよう心がけています。ここ十数年はずっとそう。野望的なものはもうなくなってきていて、それでいいと思ってます。

――なるほど。とはいえ、ファンとしては75歳でも単独ライブ、「75」をやってほしい気持ちもあります。

今立 まず目指すのは「51」じゃないですかね(笑)。

やつい ふと「なんでやってるんだろう?」と思わないようにしないといけいないですね(笑)。気づかないまま、続けるところまで続けていければと思います。

取材・文/ライター神山  撮影/井上たろう

■ エレキコミック第35回発表会「50」日時: 2025年9月19日(金)18:30開場 19:00開演 2025年9月20日(土)12:30開場 13:00開演 / 16:30開場 17:00開演2025年9月21日(日)12:30開場 13:00開演 / 16:30開場 17:00開演会場:東京・シアターサンモール 料金:全席指定 一般席5600円 / 学生割引3300円(要学生証の提示) / 配信3000円チケット:一般発売中

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