〈崖っぷちの田久保市長〉「ウソで調査を妨害」百条委は刑事告訴、東洋大も“市長が卒業できないと認識しうる資料”を提出…9月1日には不信任決議案の採決へ
〈崖っぷちの田久保市長〉「ウソで調査を妨害」百条委は刑事告訴、東洋大も“市長が卒業できないと認識しうる資料”を提出…9月1日には不信任決議案の採決へ

学歴詐称が疑われる静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)について、市議会調査特別委員会(百条委)は8月29日、東洋大学の提供資料を基に市長が嘘をついてきたと断定した。これに基づき市議会で定例会初日の9月1日に田久保市長を地方自治法違反容疑で刑事告発する議案と不信任決議案がともに全会一致で可決される見通しになった。

田久保市長は、市が「事実でない」と否定する情報を個人のSNSで発信しながら、定例会見で「質問は受けない」とも言い始め、田久保市政は末期症状となっている。

 直属の秘書広報課が「市の公式な見解を示すものではありません」

29日には地元記者クラブとの定例市長会見が午前に開かれた。田久保市長は前日「発表案件以外の質問には答えない」と宣言。市幹部が翻意を求めたが受け入れないまま会見は始まった。

中継映像によると記者クラブ側は冒頭、田久保市長の態度は『説明責任を放棄していると言わざるを得ない』として取材に誠実に対応するよう求める要請書を手渡した。

無言で受け取った田久保市長は発表を始め、発表内容の具体策を問う以外の質問には『最後にお答えをする』と答えを先送りした。

そして終盤、田久保市長は不信任決議案の可決が確実になっていると報じられていることを「まだ議会の方でお示しいただいていないことについての報道も先行しております」と批判。

コメントもしていないのに「私の方針」が伝えられているとも主張し、「そのような事実を鑑みしばらくの間フリーの質問(への回答)は控える」と主張して一方的に会見を打ち切り部屋を出て行った。

疑惑発覚後、後援会主催の記者会見を複数回開き、饒舌だった市長が答えなくなったのはなぜか。

田久保市長はメガソーラー設置事業と前市長時代に計画された新図書館建設の阻止を公約に5月に当選。実際には両事業は現在、止まっているが、学歴詐称疑惑で追い込まれるとこの二つの計画を止める「使命」が自分にはあると主張して辞職を拒んだ。

そして、前市長の在任中の行為によりメガソーラー事業が復活する芽が残っていると印象づける発信を個人のXで続けている。

これを、ほかでもない市長の下で働く市当局者が否定し始めた。

直属の秘書広報課が市ホームページで28日に市長のSNS発信は「市の公式な見解を示すものではありません」と表明。29日には都市計画課がメガソーラーについて「工事の進捗はみられない」と発信し市長の主張を否定した。

このため田久保市長はこの問題を突っ込む質問を受ければ、統治の崩壊が一層あらわになると考えた可能性がある。

東洋大は“資料”を百条委に提出

さらに市長としての能力に疑念を抱かせる場面も展開された。

会見中、7月30日のカムチャツカ半島付近の地震による津波に絡み、市政の混乱で副市長の空席が続く伊東市は災害時の体制に問題があるとの指摘と、緊急時の指示体系をたずねる質問がでた。

田久保市長はこれにもキレ気味に「何度も何度も申し訳ないんですが、議事の進行の方、まずしっかりとさせていただきたい」と述べ、答えを拒もうとした。

だが問題は市民の安全に直結する。記者が「把握していないのか?」と強く詰めると、田久保市長は逃げられないことを悟る。だがここで突然、市長は同席した市幹部らに緊急時の序列を聞き始めたのだ。7月30日には伊東市沿岸にも津波警報が発令されている。その時も頭に入っていなかったらしい。

殺伐とした会見の終了から約4時間後、学歴詐称疑惑を調べる市議会百条委が最後の会合を開催。ここで、田久保市長を地方自治法違反容疑で刑事告発する方針が決まった。

東洋大を卒業したと嘘をつき、これを否定するため百条委で偽証するなど調査を妨害したという理由だ。

「田久保氏は当選後に市の広報誌に『東洋大卒業』と掲載させ、偽造の疑いがある“卒業証書”を中島弘道市議会議長らにチラ見せして卒業したと主張しました。しかし騒動が大きくなると『卒業したと思っていたが6月28日に東洋大へ行くと除籍されていたことを初めて知った』と言い始めました。卒業したと勘違いしていたので詐称ではない、との論理です」(地元記者)

この言い分に対し百条委は、東洋大が提供した資料などから「通常の常識をもってすれば勘違いが起こりうる状況ではなかった」(井戸清司委員長)と判断。卒業できなかったことを認識してきた田久保市長は偽の卒業証書を使って大卒と称してきた、と断定した。

百条委は個人情報だとして東洋大の回答の内容を明かしていないが、市政関係者が打ち明ける。

「29日付で届いた回答を根拠にした報告書文面が同日夕方には完成しており、大学は以前から百条委に協力してきたようです。

東洋大は規定により田久保氏が卒業したかどうかは答えていないはずです。しかし代わりに本人が“卒業できるわけがない”と思っていたことを明確に示す資料を出しました。これは“田久保氏が取得した単位数が卒業に必要な水準に遠く及ばないこと”を示すデータのようです」(関係者)

9月1日に不信任決議案が採決されることに

実は百条委から東洋大への依頼は今回が2回目で、最初に提供された資料では不十分だとして百条委が再度提供を求めていた。

「騒ぎのとばっちりを受けた東洋大は早期の収拾を望んできました。このため百条委の要求に一歩踏み込んで応じたと受け止められています」(同関係者)

卒業していないと田久保市長が認識していたなら持ち歩いていた“卒業証書”は偽物になる。

これの提出を拒んだこと、そして7月に行なった出頭要請を田久保市長が拒んだことを百条委は違法とみなした。

また田久保市長は2回目の出頭要請には応じ8月13日に証人尋問を受けたが、この際に質問の趣旨に合わない答えを繰り返したとし、これは「証言拒否」にあたるとしたほか、卒業証書とされるものを中島議長らにチラ見せしかしなかったのに「19.2秒」見せたなどと証言したことは虚偽証言にあたるとも認定。

計4つの項目を告発理由とすることが委員9人の全員一致で決まった。

「翌30日の議会運営委員会で、9月1日からの定例会初日に不信任決議案が採決されることになりました。全員が賛成する見通しです。百条委報告書を了承し告発を決める議案も前回一致で通る見通しで、可決直後に告発状が伊東警察署に提出されそうです」(地元記者)

不信任決議が通れば田久保市長は10日以内に失職か辞職、議会解散を選ぶことになる。伊東市政の動乱はピークへ向かっている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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