〈ついに不信任案可決も〉「私にしかできないことがある」田久保市長は支持者に市議会解散の方針を伝達…“暗躍”する市長派VS反市長派 バトルの行方
〈ついに不信任案可決も〉「私にしかできないことがある」田久保市長は支持者に市議会解散の方針を伝達…“暗躍”する市長派VS反市長派 バトルの行方

静岡県伊東市議会は9月1日、田久保眞紀市長(55)が学歴詐称を隠蔽するため、市議会調査特別委員会(百条委)の調査を妨害したとの地方自治法違反容疑で市長を刑事告発した。さらに直後、不信任決議案を19人の議員の全会一致で可決した。

10日以内の失職か辞職、または議会解散を迫られるが、はたしてどれを選ぶのか。市長は本会議後に報道陣に明言しなかったが、市議会を解散すると支持者に伝えたとの情報が飛び交っており、市議らは臨戦態勢に入った。 

開会から告発議案の可決までわずか24分

9月定例会初日のこの日、市議会本会議は百条委の井戸清司委員長が市長を告発する必要があると結論づけた調査結果を報告。続いて行なわれた告発を行なう議案に、全議員が賛成した。

東洋大を卒業したとして“卒業証書”とするもの周囲に見せていた田久保市長。しかし、卒業はウソで学歴を詐称したとの疑惑が深まると『6月28日に東洋大で確認すると除籍になっていたことを初めて知った』と主張し、卒業したと勘違いしていたので学歴詐称にはならない、と説明してきた。

だが、その前から卒業証書とされるものの提示を求めた中島弘道市議会議長らに“チラ見せ”をするなど、卒業していないことを以前から認識していた疑いが強まったため百条委が設置されていた。

「百条委は田久保市長に卒業証書とされるものの提出を求めましたが、彼女はこれを拒否。7月には証人尋問への出頭も拒否し、8月に再度出頭を求められると出席しましたが、その尋問時には、質問に正面から答えない事実上の証言拒否をしたり、虚偽証言をしたりしたと百条委は判断しました。

その結果、本筋の学歴詐称ではなく、百条委の調査を妨害した容疑で告発することになりました」(地元記者)

 開会から告発議案の可決までわずか24分。ここで中島議長が休憩を宣言すると、市役所から2人の職員が直線距離で約250m離れた伊東警察署に車で向かった。 

「手はず通りに告発議決直後に告発状が警察に持ち込まれました。市議会は県警とも事前に調整しており、議決から約20分後の10時45分には署内で告発が受理されました」(地元記者) 

この報告を聞いた中島議長は議事を再開し、田久保市長の不信任決議案が上程され、再び全会一致で可決された。

この手順は先週から練られ、背景には「兵庫県の事例を研究した」(地元記者)という。

兵庫県では昨年、斎藤元彦知事の一連の疑惑を調べる百条委が設けられたが、結論が出る前に疑惑とは関係のない斎藤知事の百条委での態度が問題視され、怒った議会は一気に不信任決議に突き進み全会一致で可決された。

だが、失職を選んで出直し知事選に再出馬した斎藤知事は“疑惑はウソで斎藤さんはハメられた”との情報が飛び交う中で急激に支持を伸ばし、再選している。

中島議長は閉会後「万が一、告発受理の前に不信任案を出してすぐに解散でもされたら百条委員会での告発もできなくなってしまいますので順を追って丁寧にやりました」と説明。百条委の調査が無駄にならない道を模索したことを吐露した。 

「9月10日市議会を解散、10月19日に出直し市議選」という情報も…

自身への刑事告訴や不信任の議案が議論されている間、田久保市長はずっと下を向いて忙しそうにメモをとるようなしぐさを続けた。討論に立ったれいわ新選組の犬飼このり議員がこれを見とがめ、「人の話を聞く態度ではありません。ちゃんと聞いてください」と注意したりもした。

不信任案の通過直後、田久保市長は「市民の皆様には大変なご心配とご迷惑をおかけしていることを改めて謝罪したい。本当に申し訳ございません」と口にした。

だが市民生活を左右する自身の去就については、「不信任議決通知書」を中島議長から渡されても「受け取ってすぐに即答する類のものではない。まずはきちんと持ち帰り、もう1度不信任決議の方も紙を見させていただいて考えた上で決めたい」と明言しない。

自身が議会から告発されたことについても「私の方から発言がもうできない状況になりましたので、まず内容の確認をさせていただきたい」として回答を事実上拒んだ。

「議会側は、市⻑が10日以内に迫られる失職か辞職、または議会解散かの判断を見極めるため9⽉2⽇から11⽇までを休会にすることを決めています。失職か辞職の際には以降の9⽉定例会が市⻑不在になるため、⼀般質問の日程を設けない異例の態勢を敷いています」

市議の一人がそう話すように市議会のスケジュールは今も振り回されている。だが、田久保市長自身はすでに“方針”を決めているようだと市関係者は話す。

「9月10日に市議会を解散し、10月19日に出直し市議選を行なうとコアな支持者グループに伝えたという情報を聞きました。

出直し選挙後に構成される次の市議会で過半数の賛成を阻止すれば、再度の不信任決議は止められるため、そこへ向けて田久保さんは支持者の擁立を図っているとみられてきました。

ただ、そのためには10人の当選が必要ですが、それは難しく、結局、次の議会でも不信任決議が通って失職する可能性が高いです。

そうなるといよいよ出直し市長選で、田久保さんはそこに出馬し、反田久保派の候補が複数出馬して票が割れることに活路を見出そうとしているようです」(関係者)

田久保市長は支持者に「私にしかできないことがある」と再び結集を呼び掛けているとの証言もある。「実際に5月の選挙で掲げたメガソーラー計画や新図書館建設計画の阻止は田久保さんでなければできないと思っている支持者はいますよ」と支持者の70代男性は話す。

ただ前回選挙で田久保市長を応援し、今回の騒動で見切りをつけたという市議の一人は、「支持者はどんどん離れて、今はコアなごく少数しか残っていないんじゃないでしょうかね。さらに、出直し市長選になれば、反田久保陣営が田久保さんから離れた元支持者をたきつけて立候補させ、前回田久保さんに入った票を割る計画もあるという情報も飛んでいます」と話す。

田久保氏の“闘志”は続くのか。

続いてもついていく人はいるのか。伊東市の混乱は続く。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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