
営業マンであると同時に講師としてTikTokで大人気の「営業の乾」こと乾哲也氏。成約率は驚きの90%で、合計約40億円以上を売上げたトップ営業マンの彼が教える、お客様の心の扉を開くテクニックとは。
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
「決められたことをやる」だけでお客さまの心の扉は開く
笑顔はお客さまに「敵ではない」の第一印象を与えました。そのホッとした心に、さらに心地良さを与えることで心の扉は徐々に開いて行きます。
人が心地良さ、快楽、幸福を感じるのは、脳内で作られるエンドルフィンというホルモンの働きによるものです。エンドルフィンは「幸福ホルモン」とも呼ばれています。
アプローチのトークは、この「幸福ホルモン」を生成し分泌を促すために必要なものです。トークの技術には「褒める」「同意する」「反応する」の3つがあります。
はじめてのお客さまへの営業は、誰でも緊張するものです。けれども、その最初のアプローチの目的はたった1つ。
お客さまの心の扉を開くことだけです。
そしてやるべきことは、「幸福ホルモン」が脳内生成するトークだけ。その技術は3つの手法を使うだけなのです。笑顔と同じで、作業だと思ってやってみましょう。
その時間は数分から10数分です。始まれば、必ず終わるこの時間に「決められたことをやる」だけだと思えば、過剰に緊張することはなくなります。
「褒める」を躊躇するのは損でしかない
アプローチのトークは、いわゆる「雑談」です。
経済新聞を読み込み、ネットニュースをくまなくチェックし、お客さまの事前情報で完全武装し、この雑談に臨む人もいるでしょう。
けれども、今、あなたが相手にすべきことは、心地良さを感じてもらうことなのですから、まずは、お客さまを褒めることに集中します。
「初対面で何を褒めたらいい? やはり、経歴や業績など事前データが必要なのでは?」そうした心配は無用です。
目についたものを何でもいいから褒めてあげましょう。
・入口のお花、きれいですね。いつも飾られているのですか?
・そのメガネ素敵ですね。いかにも仕事できそうな印象を受けましたよ。
・今、事務所の中を案内されたのですが、社員の皆さんが挨拶してくださり、とても気持ちが良かったですよ。
相手を褒めることで、相手からも好かれることは、「営業マンのバイブル」と高く評価されている『影響力の武器』(チャルディーニ博士著)にも書かれています。人が相手に好意を抱く理由には次の3つがあります。
・自分に似ている。
・自分を褒めてくれる。
・同じゴールを目指す仲間である。
このように「褒める」ことの有効性は確かなものなのですが、営業さんの中には「褒めるのは、お世辞っぽく思われないかな」「逆に信用されないのでは」と敬遠する方もたくさんいます。でもその躊躇は大きな間違いです。
その「褒め」が「お世辞」であることは、お客さまも百も承知のことなのです。心理学では、人はお世辞と分かっていても絶対に喜ぶことが証明されています。脳は褒められれば幸福ホルモンを作り、人は快楽や幸せを感じて心地良くなるからです。つまり、お世辞でもいいのです。どんどん褒めることに得はあっても損はありません。
「お会いしたばかりですが、○○さんがとても誠実な方だということが、よく分かります。私がこれまでお会いした中で、一番素敵な方ですよ」
初対面でここまで言われたら、むしろお世辞以外の何ものでもありません。
初対面の人はいきなり褒められたら必ず「そんなことないですよ」と謙遜されます。そこで終わってはいけません。
1回褒めて、「さて本題ですが」では、せっかくの心地良さも一瞬で消えてしまいます。引かずに再度褒める。必ず2度褒めることが必要です。
「褒める」は2度目から効果が出る
「褒める」は1度で終わらずに、必ず2度以上、続けることです。
2度褒めることで、「いやいや、そんなお世辞を。上手いんだから」「またまた、そんなご謙遜を。本当ですよ」という雑談の心地良さが余韻となり、その後の「本題」も心の扉を開いたままスムーズに進むことが期待できます。
とは言え、「褒める」もノープランではネタ切れが心配です。
1つは「他者との比較」です。
「素敵なオフィスですね。私、たくさんの会社を訪問していますが、その中でもトップクラスのキレイさですよ」
もう1つはあなた自身を用いた「自分との比較」です。
「社長はとても誠実な方ですね。いえ。私は初めて会った方に誠実と言われたことはほとんどないですよ。でもこれは、お世辞でもなく、初対面の私でもそう感じたのだから、社長の誠実さは本物ですよ」
比較を使うことで客観性が増します。お世辞と分かっていても2度褒めることで「本当かな」「本気かな」と思わせる信憑性がプラスされ、脳の幸福ホルモン生成は活発になり、心の扉は大きく開くことでしょう。
相手を褒めることは、名刺を切らさずに持ち歩くのと同じくらい基本だと考えてください。
「今日は全員、『センスがいいですね』で褒めよう」「今日は雨だから、室内の快適さを褒めよう」と準備しておけば、自然と良さを見つけるようになり、決してウソではない「褒める」がスムーズにできるようになります。
1つ、コツがあります。
文/乾 哲也
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)
乾 哲也 (著)
今日売るには、なぜ言語化が必要なのか
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フルコミッション一筋21年、成約率90%のトップセールスマンが伝授!
営業職のためのすごい言語化!!
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多くの営業組織では、成果に再現性がなく、数字が安定しないという問題があります。
これは、営業を経験値や力量などのやり方=暗黙知に頼っているため、
部下の育成にもつながらず、組織としての成長が止まっているのです。
個人レベルでも「感覚」で営業しているため、なぜ成果が出たのかがわからず、改善できません。
そのため毎年同じ数字しか出せず、成長も意欲も失われていきます。
組織としても精神論に頼るだけで、具体的なノウハウやトークの共有がされず、弱体化します。
結果として、売れない人は辞め、売れる人の入社を待つだけの高コスト体質になってしまうのです。
つまり、こうした問題の背景には「暗黙知」を言語化できていないという根本的な課題があります。
本書では、個人の「暗黙知」に頼らずに、
成果を再現できるような“すごい言語化”によるトークスクリプトを紹介していきます。