
TikTokで大人気の「営業の乾」こと乾哲也氏が提唱する「購買意欲」の概念を取り入れた「即決メソッド」は約300社以上の企業研修に導入され、高い評価を得ている。そんな彼が教える「できる営業マン」にとっての極意とは。
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
パンフレットにはない「お客さまにとっての価値」
プレゼンで伝えないといけないもの。それは何だと思いますか?
営業の教科書的に言えば「モノやサービスのセールスポイントを分かりやすく伝えること」だと理解されている方が多いと思います。
では「セールスポイント」とは何でしょうか?
否決になってしまうプレゼンを見ると、そのモノやサービスならではの強みや魅力、特徴、性質、他社より優れた点などがくわしく述べられています。
これは正解です。けれどもプレゼンで伝えなければいけないものの半分です。後の半分は何か?
それは「ベネフィット」です。ベネフィットとは、お客さまにとっての「利点」です。ベネフィット=利点と理解してください。
セールスポイントのような特徴について話すのではなく、ベネフィット=利点について話すプレゼンの技術を「利点話法」と呼びます。
利点話法では、まずセールスポイントとベネフィットを分けます。
セールスポイントは、商材の特徴や性質でしたね。これは書きやすいのです。
けれども利点はパンフレットには書かれていません。なぜなら、今、あなたがプレゼン段階でお客さまに示そうとしている価値は、前段のヒアリングであなた自身がお客さまから引き出した「問題と願望」を根拠にしたものだからです。
・セールスポイント…… パンフレットや資料にも書かれている商材の特徴や性質。また他社と比べての優位点。
・ベネフィット …… ヒアリングで引き出したお客さまの「問題と願望」に対して、商材から得られる利益を利点として言語化したもの。
利点は、パンフレットには書かれていないので、お客さまのためにトークとして話さないと伝わりません。そしてこの言語化された言葉のみが、感情を動かし、「購買意欲」を高めることができるのです。
「わざわざそこまで」を話す
商材が保険だとしましょう。利点は次のようなものです。
・皆さん万が一に備えて保険を考えています。
・何かあった時に、まとまった補償が得られたら安心だからと言っていました。
・社長ならどうですか? 何かあった時にまとまった補償が得られる保険があったなら?
「私も、それなら安心するだろうね」とヒアリングでお客さまの「問題と願望」が引き出せました。
ですからプレゼンでは、事細かに保険の補償内容を伝えるのではなく、次のように話します。
「うちの保険は万が一の時も、1000万円の補償が受け取れます。社長も万が一の時のことが心配ですよね。だから、社長も安心できますよ」
この感覚は、できる営業さんほどピンとこないかもしれません。
そもそもその補償内容は、保険のパンフレットに書いてあります。ですからセールスポイントにも、掛け金に応じた補償額まで具体的に示してある。それにもかかわらず否決されて来た。「何が違うのか?」と思ってしまうのです。
理由は先に述べました。人を動かすのは理屈ではなく「感じること」だからです。そして「社長」が得たい利益は「安心」です。
けれども多くの営業さんは、セールスポイントばかりを事細かに話して終わってしまい、肝心のベネフィット=利点については「もう、分かっているだろう」と省略してしまうのです。
「お世辞を言わない」「大げさに言わない」「皆まで言わない」。そうしたストッパーを自らかけている営業さんは結構います。営業のスタイルは、あくまでそれぞれの感覚です。
ただ1つ言えることは、効果本位で考えたら、「わざわざそこまで言わないとダメ」なのです。
コモディティ化に負けない価値を見つける
営業担当者がプロであるがゆえに、その商材の専門家になってしまうということはどこでも起こり得ます。
不動産であれば、「この物件、駅チカでお勧めです」で終わってしまうのではなく、「お客さまの勤務先に直結の路線にすぐ乗れます。だから、お客さまも通勤が楽ですよ」までが利点話法です。
結婚相談所であれば、「うちは会員登録数が業界最高レベルです」とパンフレット通りのアピールで終わってしまうのではなく、利点話法で「出会いもたくさん可能です。だから、お客さまの理想の相手に会えますよ」までを言い切りましょう。皆まで言い切るのです。
これは圧倒的に強いわけではない商材で考えると理解が進みます。
変化の早い現代では、どんなに新しく感じた特徴や性質を持つ商材でも、半年、1年後には、ほとんどがコモディティ化して横並びの1つになってしまいます。
けれども利点話法で「○○さんにとって」「○○さんには」とお客さまにとっての自分ごと化をすれば、「購買意欲」が高まり、ヒアリングで引き出した「興味」は、プレゼンで確実に「欲求」になるのです。
パンフレットに書かれていないことを話すことは、最初は難しいとは思います。コツを2つご紹介します。トークスクリプトを作る際に、ぜひ試してください。
◯顧客目線で考える
その道のプロとして「こうあって欲しい」ではなく、「この人だったら」を常に考える。そのためにはヒアリングの際の雑談が大切です。
◯常に「だから何」で考える
セールスポイントに書かれた特徴や性質に「だから何?」を問う。やがてお客さまとこの商材の「○○だから○○になる」が見えて来ます。それを言語化すれば良いのです。
文/乾 哲也
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)
乾 哲也 (著)
今日売るには、なぜ言語化が必要なのか
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営業職のためのすごい言語化!!
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多くの営業組織では、成果に再現性がなく、数字が安定しないという問題があります。
これは、営業を経験値や力量などのやり方=暗黙知に頼っているため、
部下の育成にもつながらず、組織としての成長が止まっているのです。
個人レベルでも「感覚」で営業しているため、なぜ成果が出たのかがわからず、改善できません。
そのため毎年同じ数字しか出せず、成長も意欲も失われていきます。
組織としても精神論に頼るだけで、具体的なノウハウやトークの共有がされず、弱体化します。
結果として、売れない人は辞め、売れる人の入社を待つだけの高コスト体質になってしまうのです。
つまり、こうした問題の背景には「暗黙知」を言語化できていないという根本的な課題があります。
本書では、個人の「暗黙知」に頼らずに、
成果を再現できるような“すごい言語化”によるトークスクリプトを紹介していきます。