
お客さまからの「お断り」「再検討」など、ありとあらゆる回避の意思表示に対して、再提案の機会や、契約の決断を求めるために必要な「切り返し」。営業のすべてのシーンで必要なこの技術に必要なこととは。
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
「考えます」の8割は「ウソ」
クロージングの最終局面での、お客さまからの「考えます」のひと言は、とても堪えます。頭が真っ白になる人や、がっかりしてしまう人もいるでしょう。
気持ちは分かります。けれども、営業の現場で起きる、すべてのことは効果本位で見て、考えて、行動してください。
お客さまが「考えます」と言った時に、あなたが言うべき言葉は、まずは「そうですよね。分かります」です。
これは、その場しのぎの言葉ではありません。お客さまの言語化できていない気持ちや悩みを、「私は分かっていますよ」と、伝えるための言葉です。
お客さまとの関係性を断ち切ることなく、この場から逃げることはないというあなたの覚悟を言語化した言葉です。
では、一体何が「分かる」のでしょうか?
お客さまの「考えます」には、次の4つのカテゴライズがあります。
・1つ目は「高い」です。料金が高いという理由です。
・2つ目が「相談したい」です。相談相手は、この場にいない誰かです。
・3つ目が「他社も見たい」です。製品の比較や、料金の相見積もりです。
・4つ目が「時期尚早」です。今じゃなくてもいいという都合です。
同じ「考えます」にもたくさんの理由がありますね。けれども、これはすべて「その場から逃げたい」という1つの思いから出た言葉です。
本書は営業さんしか読んでいないという前提で、ハッキリ言いましょう。お客さまが「考えたい」と言う時、その8割は「ウソ」です。
「決めたくない」「その場から逃げたい」「ここまでいろいろ話してもらって申し訳ない。だけど、自分は悪くない」……。
ですから、あなたの「分かります」は、お客さまの「ウソ」は「全部、お見通しですよ」と伝える、余裕綽々の商談継続宣言です。堂々とした態度で、そして満面の笑顔で伝えてください。
その上で、この4つのカテゴライズの「考えます」に対して、しっかりと「切り返し」ができれば、契約は取れます。あなたの商材は売れるのです。
これら4つの「考えます」に対して、しっかり「切り返し」ができる準備を整えるのがこの章の役割です。けれども身構える必要はありません。営業の現場における最大の難関ですが、その解決のための技術は、これまで見てきた“すごい営業”の「型」です。
この「型」の構造を知り、使い方を理解すれば、誰でも「切り返し」のトークを作ることができます。そして誰でも、「考えます」の壁を突破できる「切り返し」ができるようになるのです。
実際、私は「考えたい」と言われても、その8割はこれからお伝えする“すごい営業”の「切り返し」によって売ることができています。
なぜ8割かと言えば、「担当者に相談しないと決済できない」「うちには予算がない」などの「本当の事情」がある人も2割いるからです。
「切り返し」の「型」をイメージする
「切り返し」の「型」とはどのようなものか、まずはその考え方をイメージで捉えてみましょう。
「切り返し」の対象はお客さまです。では、あなたがどのような意図で「切り返し」の技術を使い、お客さまにどのように影響を与え、どのような変化や効果が表れるのでしょうか?
そのイメージを言語化することで、「型」の理解が可能になります。
大きな球体があり、その球体を挟んで2人が図のように存在しています。
この2人の見えている世界はまったく異なります。お客さまのもとに営業にうかがったあなたの視点から、「切り返し」とは何かを見て行きます。
①あなたとお客さまは別の世界を見ている
あなたのいる世界の側から光を当てた場合、あなたから見える球体は白です。「何が見えますか?」と聞かれたら「白です」とあなたは答えるでしょう。ところがお客さまからすれば、「黒」にしか見えません。当然「え? 黒ですよ」という答えが返ってきます。
これが営業の現場におけるお客さまと営業の立場の違いです。互いの見えている世界の違いを無視して、「白だと言ってください」と営業を続けても良い返事が返ってくることは永遠にありません。そのことをしっかり認識してください。
②お客さまにあなたと同じ世界を見ていただく
白い世界を見ているあなたは、「今日、即決で決めて欲しい」と考えています。なぜなら、せっかく高めたお客さまの「購買意欲」は、明日には低下し、契約率も下がるからです。
一方、黒い世界を見ているお客さまは、すでに脳が疲れ切ってしまい、決断するのをイヤがっています。何とか先送りにしようと「考えてみます」としか言えません。
この白と黒の境界線が「壁」です。
あなたの営業は、「黒だ」と言っているお客さまに、「白だ」と言ってもらうためのものなのです。けれども、お客さまに「白だ」と分かってもらうためには、あなたが「こちら側からは白です」と言っているだけではダメです。お客さまは絶対納得しません。
ではどうすればいいのか? お客さまに、あなたの側に来ていただき、球体を見ていただくことです。そうすれば、お客さまにも「本当だ。私にも白に見える」と言っていただけます。
このように、お客さまにあなたの側に来ていただき、あなたの言っている「白だ」に対するお客さまの「納得」を取るのが「切り返し」です。
文/乾 哲也
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)
乾 哲也 (著)
今日売るには、なぜ言語化が必要なのか
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営業職のためのすごい言語化!!
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多くの営業組織では、成果に再現性がなく、数字が安定しないという問題があります。
これは、営業を経験値や力量などのやり方=暗黙知に頼っているため、
部下の育成にもつながらず、組織としての成長が止まっているのです。
個人レベルでも「感覚」で営業しているため、なぜ成果が出たのかがわからず、改善できません。
そのため毎年同じ数字しか出せず、成長も意欲も失われていきます。
組織としても精神論に頼るだけで、具体的なノウハウやトークの共有がされず、弱体化します。
結果として、売れない人は辞め、売れる人の入社を待つだけの高コスト体質になってしまうのです。
つまり、こうした問題の背景には「暗黙知」を言語化できていないという根本的な課題があります。
本書では、個人の「暗黙知」に頼らずに、
成果を再現できるような“すごい言語化”によるトークスクリプトを紹介していきます。