
個別セミナーには年間2000人以上の申し込みがあるなど、自身も営業マンであると同時に人気講師でもある乾哲也氏は、トップセールスになる人は特別な存在ではないと語る。凡百のセールスマンとの違いは、3つの簡単なことを知っているか、そしてやり続けているか、だけだという。
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
「トップセールス」とはお客さまが望む理想の営業の姿
アポ取りの段階から、契約に至るまで、絶対にしてはいけないのは、お客さまとの対立です。お客さまが怒ったら、商談は即中止です。
当然のことですよね。そして、先に指摘したように、下手に出る態度もダメです。「なめられる」と言ったら語弊がありますが、自信のない相手に大切なお金をかける人はいません。それがまっとうな経営判断なのです。
人は、6秒ごとに目の前の相手を無意識で判断しています。出会いは0点からのスタートですから、加点がない限りは減点が続きます。パッと見の判断で低評価を受けてしまうのは避けたいものです。
そうは言っても、実績も自信もまだまだという頃は、その内面がにじみ出てしまうものです。
私は、営業職に就いてから、仕事をする際の服装はほとんど変わっていません。スーツにネクタイ、この一択です。
スーツとネクタイの色は紺、シャツは白です。これらはすべて「仕事着」として意識した選択で、私の趣味や主張は一切入っていません。
なぜこのスタイルになったかと言えば、周囲のトップセールスが誰もがこのスタイルだったからです。実績も経験もない新人でしたが、根拠のない自信だけはありました。見た目でなめられたくない。パッと見で信用されないのはイヤだ。第一印象だけでも「売れる営業」になろうと思い、トップセールスのスタイルを借りたのです。
これが功を奏しました。新人の私に対し、お客さまは期待さえ寄せてくれたのです。私は、その期待に応えようと、「できない」「やらない」を言い訳にしないを信条に営業に取り組み、見た目通りのトップセールスを体現するに至りました。
ここに営業の心理があります。
お客さまは、トップセールスしか望んでいません。だから、自信のないアポ取りは断られます。「委ねる」「お伺いする」ようなクロージングは不発に終わるのです。
なぜなら、トップセールスは実在するからです。それ以外を選択する必要は、お金をムダにするのと同じだと、経営者は判断するでしょう。
これが営業の世界です。それがお客さまの望む営業の姿です。
そうであるなら、国内810万人の営業職は、全員がトップセールスを目指すのが必然だと私は考えています。そしてそれを可能にするのが、本書がお伝えしている“すごい営業”なのです。ここに示したのは、「営業のノウハウ」ではなく、「トップセールスへの道筋」です。
そのすべては、誰もが、今から実践できるものばかりだと自負しています。
あなたが今すぐできることがあります。
判断基準は「お客さまからそう見えるのか?」です。お客さまが望む営業を体現するために、自分の自画像をトップセールスの姿に重ねて行きましょう。
AIにはできない営業の仕事を担う存在になる
AIの進化と普及は、営業の仕事にも確実に影響しています。「AIに営業の仕事を奪われる」は、もはや現在進行形の事実です。
けれどもそこには2極化の傾向が私には見えます。それは営業だけでなく、ビジネスのあらゆる領域で同時に起きていることですが、「AIにできる仕事はAIがやるようになる」のです。
“すごい営業”には「型」があります。一見、AIが得意そうな気がしますが、実は「AIにはできない仕事」です。なぜなら、AIは「すでにあるもの」を整えることに長けていますが、「まだないもの」は、今のところは苦手な領域だからです。
“すごい営業”の「型」に入れて行くものは、お客さまの「購買意欲」に関わることがらであり、それは、まだお客さま自身にも見えていません。
その未踏の領域にアプローチし、未知なるものをヒアリングし、「購買意欲」を高めるためのプレゼンテーションを行い、クロージングに至る過程のすべては、まだ当分は人間が担うものなのです。
AIが進化を続ければ、それは「便利」と同義語となり、日常生活では意識しないものとして浸透して行くことでしょう。
それがトップセールスの役割だと、私は考えます。だからこそ、営業職は、全員がトップセールスを目指すのが必然だとお伝えしたのです。
トップセールスの共通点に学ぶ
では最後に実在のトップセールの共通点をご紹介します。
それぞれが独自の黙知を駆使している印象を持つかもしれませんが、話を聞くと「そうそう。私も」と同意することが多いのです。つまり、誰も特別なことはしていません。知っているか。やっているか。続けているか。それだけの違いです。
○誰よりも会社の決定事項に従う
営業の会社は社会の変化に適応して自らのルールを変えます。
○数字に素直
会社の変化には従いますが、上司に対してはそれほどではありません。なぜなら数字が上司だからです。数字を見て反省し、改善し、結果を出します。そして言い訳はしません。それが信頼につながっています。
○成長させる取り組みをしている
誰でも未来を展望しますが、ほとんどの営業さんは来月の給与、つまり今月の実績しか見ていません。それは今と過去しか見ていないのと同じです。けれども実績を増やして行くなら、未来の自分を成長させる取り組みを今から始めることです。今日を変える。
トップセールスを目指すことは、あなたの今日を変えることなのです。
文/乾 哲也
『できる営業マンのすごい言語化 「なんとなく」を納得に変える』(KADOKAWA)
乾 哲也 (著)
今日売るには、なぜ言語化が必要なのか
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フルコミッション一筋21年、成約率90%のトップセールスマンが伝授!
営業職のためのすごい言語化!!
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多くの営業組織では、成果に再現性がなく、数字が安定しないという問題があります。
これは、営業を経験値や力量などのやり方=暗黙知に頼っているため、
部下の育成にもつながらず、組織としての成長が止まっているのです。
個人レベルでも「感覚」で営業しているため、なぜ成果が出たのかがわからず、改善できません。
そのため毎年同じ数字しか出せず、成長も意欲も失われていきます。
組織としても精神論に頼るだけで、具体的なノウハウやトークの共有がされず、弱体化します。
結果として、売れない人は辞め、売れる人の入社を待つだけの高コスト体質になってしまうのです。
つまり、こうした問題の背景には「暗黙知」を言語化できていないという根本的な課題があります。
本書では、個人の「暗黙知」に頼らずに、
成果を再現できるような“すごい言語化”によるトークスクリプトを紹介していきます。