〈広陵・暴力問題〉コーチが正座をさせて謹慎3か月…終わらないトラブル、被害者親族は「謝罪してほしい」学校は前監督の今後について「貢献した方ですが…」
〈広陵・暴力問題〉コーチが正座をさせて謹慎3か月…終わらないトラブル、被害者親族は「謝罪してほしい」学校は前監督の今後について「貢献した方ですが…」

暴力事案をめぐり、今夏の甲子園を大会途中に出場辞退した広陵高校。前代未聞の事態の引き金となったのは野球部内での複数の暴力事案がSNSで発信されたことだった。

いまだ暴力事案をめぐる問題に関しては被害生徒らと関係者の証言が食い違うなどしており、解決の糸口を見いだせない状況が続いている。そんな中、9月4日には広陵高校の野球部のコーチが日本学生野球協会から不適切指導を行なったなどとして3か月の謹慎処分を言い渡されていたことが一部メディアで報じられた。甲子園出場辞退から約1か月、改めて広陵高校の野球部をめぐる問題を取材した。

ネット上では厳しすぎるのではないかという声も…

今年の4月、当時52歳だった野球部のコーチが寮の清掃時間に廊下で騒いでいた2年生の部員を指導した。その際、およそ1分間、廊下に正座させたことが不適切指導だったとされ、日本学生野球協会から3か月、広陵高校からは6か月の謹慎処分を言い渡されている。

不適切指導が発覚した経緯について広陵高校の支部長が説明する。

「8月20日に野球部員の1、2年生に対して部員の中で暴力やイジメについてのアンケート調査を行いました。このアンケートでは3年生が2年生に対して行なった最初の暴力事案に関わっていたかどうか、それからこの件に関わらず暴力やイジメを受けたり加担したことはあるか、またはそうした事をされている部員を見たり聞いたことがあるかなどを調査しました。しかし、いずれも『ある』という回答はありませんでした。

その翌日に個人で何か気になることがあれば言ってほしいとヒアリングをしました。ヒアリングは野球部と関係のない教頭や学年主任が行いましたが、そこで『正座をさせて指導しているのを見ましたよ』という目撃証言が出ました」

その後、目撃証言を元に、コーチと正座をさせられた生徒から事情を聞いたという。

「廊下で大声を出して騒いでいた部員に対し、『ちょっと落ちつけ。ちょっとここに座れ』と言って正座をさせたという説明を受けております。

例えばですが、立ったままの指導ですとか、場所を移動して食堂などでお互い椅子に座っての指導が適切だったのではないかと思います」

この指導によりコーチは謹慎処分となったわけだが、ネット上では、この処分が厳しすぎるのではないかという声も散見される。

これに対し、広陵高校の支部長は、

「武道や茶道などでの礼節という意味での正座であれば礼儀の話だと思いますが、注意や指導をする上で正座をさせるというのは懲罰的な意味を含んでいるのではないかと。それで今回は不適切な指導だと学校としては捉えたということです。処分としては謹慎6か月です。

謹慎というのは野球部の指導ができないという事であり、学校の職員としては普通に勤務してもらうので給与が支払われないということはないです。甲子園を辞退したのが暴力事案がきっかけになっております。

これから学校ないしは野球部や寮内のルールを変えていこうという取り組みを行なっていくわけですが、やはり大きいのは暴力の根絶だと思っておりまして、その中でこういった事案が発覚したので学校の姿勢としても厳しい処分にするべきだ、となったわけです」

と回答した。

「前代未聞の甲子園の途中辞退を招いた方」

これまで野球部内で行なってきたアンケートやヒアリングで、暴力やイジメに関して出てきた“新しい事実”はこのコーチの一件のみだという。

今年1月に起きた、寮で禁止されているカップラーメンを食べた1年生を複数の2年生が殴るなどした暴力事案や、2023年に寮内で元部員が複数の部員から下半身を触られたり、中井哲之監督らコーチ陣からの暴言や暴力を受けたという事案について学校としてはどのように考えているか改めて尋ねた。

「今年1月の暴力事案については報道されている通り、内容について相違があるというのが学校としての見解です。今現在は第三者委員会を設置するところで今後調査をしてもらいます。

2023年の暴力事案については、被害生徒の聞き取り時にはどこで誰に何をされたかということについては言っていたのですが、記憶にあやふやな部分があり、人物や場所や時間を特定できる証言ではありませんでした。名前があがった監督、コーチ、生徒にも聞き取りはしましたが、否定したという形でした。

なので学校としては暴力事案があったという事実が認定できなかったという状況です」(広陵高校の支部長)

中井前監督の進退については、どのような状況なのだろうか。

「2023年の暴力事案については中井前監督の名前もあがっております。学校としては事実として認定できなかったとはいえ、現在第三者委員会で調査してもらっておりますのでそのあたりの結論が出た時点で再度考えるということになろうかと思います」(同前)

とはいえ、今年1月の暴力事案は中井前監督の時に起きたもので、監督責任を問われてもおかしくない。そのことについても支部長に尋ねた。

「暴力事件が起こった時の監督であり、息子(中井部長)さんも含めてこういう事態を招いた責任もあろうということで指導から外れていただいております。ただ、30年以上、ここまで広陵を強くして有名にし、学校に貢献した方というのもあります。

一方で前代未聞の甲子園の途中辞退を招いた方でもあり、難しい問題ではあります……。ですから今の時点では、第三者委員会の結果を踏まえてからのことですし、未定としか言えない状況です」(同前)

暴力事案について学校側としては、被害者たちの証言は事実と異なるというこれまでの姿勢のままのようだ。

「謝罪をしてほしいのと、行なった行為に対して償いをしてほしい」

だが、平行線のままでは被害者や被害者の親族の苦しみは決して終わらない。集英社オンラインでは♯4で2023年の暴力事案について報じた。ここで登場する元野球部員のAさんはSNSに「広陵高校の硬式野球部で在籍時に性被害に遭いました。〈中略〉寮の風呂では水の中にしずめられたり熱湯や冷水をかけられたりする殺人行為にも遭いました」と投稿しており(投稿は保護者が代理で行った)、当時の野球部内での“イジメ”を今も訴え続けている。

Aさんの母親があらためて胸中を語った。

「詳しい内容については話せませんが、8月末に2度目の第三者委員会が開かれました。ウチの子どもは第三者委員会のメンバーの方たちにも不信感をいだいており『話したくない』と言い出しました。話をしても信じてもらえないと感じたようです。

性的なことも話したくないのか、お風呂場で熱湯をかけられたという話はしましたが、その他については時間的にも話ができず、あまり進んでいません」

Aさんの母親によれば、8月30日にAさんは長期のストレスからか『自分が苦しんでるのにのうのうと始業式をやるなんて許せない。学校の始業式を阻止する』などとおかしな言動をしており、心身ともに不調だという。さらにAさんの母親はこう訴えた。

「いくら第三者委員会を開こうが、何をしようが最終的に加害者側が認めない限りは事態は進展しないですから。(加害者側に行なっている)アンケートについてどういう形式の物なのかも一切聞いておりませんし、本当のことを答えるかもわかりません。子どもの望みとしては、謝罪をしてほしいのと、行なった行為に対して償いをしてほしい、そのように思っているとのことです」

第三者委員会は12月をめどに検証を終える予定とのことだったが、場合によってはもう少し時間がかかるかもしれない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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