〈伊東市政大混乱〉「家が燃えているときにカーテンのシワを気にするんですか?」田久保市長派は“学歴詐称”をシワ扱い、「斎藤知事の模倣犯」と揶揄の声も
〈伊東市政大混乱〉「家が燃えているときにカーテンのシワを気にするんですか?」田久保市長派は“学歴詐称”をシワ扱い、「斎藤知事の模倣犯」と揶揄の声も

学歴詐称疑惑に端を発した議会との対立で全会一致の不信任決議を突きつけられた静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)は、市議会を解散し、出直し市議選で自分の“味方”を市議に当選させて延命を図る道を選んだとの見方が強まっている。さらには、政敵である前市長派を牽制する“隠し玉”も準備しているとの話も広がっているのだが……。

 

「市長選には少なくとも8人が出る」 

「私でなければできないことがある」。

 9月1日の不信任決議案採決の直前の8月下旬、田久保市長は支持者らにそう決意を述べ、「9月10日に市議会を解散し10月19日に出直し市議選を行なう」とのスケジュールまで伝えたと関係者は証言している。(#19)

その戦略を地元記者はこう話す。

「田久保市長は不信任の議決から10日以内に失職か辞職、または市議会解散を行なう必要があります。失職して出直し市長選に出馬する道もありますが、今の空気では再選は難しいと田久保さんは思っているようです。
そこでまず議会解散で時間を稼ぎたいのでしょう。出直し市議選で構成される次の市議会が再び不信任を議決すれば、市長は無条件で失職し出直し市長選になりますが、時間が経てば逆風が今よりは収まっていると田久保市長は考えている節があります。
さらに、次の市議会による不信任決議は19人の市議の三分の二以上の出席と過半数の賛成が必要です。つまり市議会の三分の一を超える7人が欠席すれば採決自体ができないんです。
そのため解散後の市議選で7議席をとることを目標に、田久保さんの支持者の中で候補者選びを進めているようです」(地元記者)

その言葉通り、田久保氏の支持者の一人は市議選で「7人。できるなら9~10人を立てたい」と口にした。ただ伊東市政はもはや「田久保市長派vs反田久保派」の二元論では語れないと市内の業界関係者は解説する。

「田久保さんを支持してきたのは、前市長の体制で公共事業の利権構造が固められてきたと考える人たちです。

その見方と“変革できる市長”が必要だとの立場は不変ながら、『さすがに田久保さんにはついていけない』と考え、別の市民運動出身者を市長にしたいという人たちも出始めました。選挙で7人とか10人とかを本当に擁立できるのかも不確かですが、立ったとしても全員が田久保市政の延長を望むかどうかは分からないと思います。

一方で反田久保派も割れており、前市長だけでなく田久保氏を批判してきた市議らが、市長選に出馬する動きを見せています。市長選には少なくとも8人が出るとの観測もあり、市議選も市長選も行方は混とんとしています」(業界関係者)

辞意を撤回した“市長しか見ることができない書類”?

市長選立候補が取りざたされる顔ぶれは、いずれも一定の知名度を持つ人物ばかり。今年5月の市長選では約1万4000票余りを獲得した田久保市長が、前市長を約2000票の差をつけて破ったが、有力候補の乱立で当選ラインが下がれば「支持者の一部が離れても田久保氏が再選する可能性はある」と地元記者はみる。

「メディアで猛批判を浴びても田久保氏には圧倒的な知名度があります。昨年兵庫県議会から全会一致の不信任を突き付けられたあと出直し知事選で逆転勝ちした斎藤元彦知事の例もあり、民意がどちらを向くのかわからない、という声も街の中では出ています」と市政関係者は話す。

逆風を受ける田久保市長が風向きを変えることができるのか。除籍処分を受けていた東洋大学を「卒業した」として偽物の疑いがある卒業証書を見せていたとされる問題の根本は何も解明されていないが、この問題に関しては田久保陣営は正面突破を図る構えだ。

「支持者の集まりでは“家が火事になっているときにカーテンにシワが寄っていることを気にするんですか”という反論も出ていました。叩いたら誰でも問題は出てくるでしょう、市当局が一部業者と癒着してきた構造を今なんとかしなければいけないのに学歴のことなど言っていていいのか、ということです」(支持者)

利権にまみれた市政を火が出ている家にたとえ、学歴詐称という「カーテンのシワ」程度の些事にとらわれず火消しという改革が迫られている、との主張だ。

ここで「実際に市政が火事という大ごとになっていることを示す証拠が存在する」との話も最近語られている。

「田久保さんは7月7日に一度辞意を表明し、同月31日に撤回しました。

その理由について彼女に近い市関係者は『田久保さんは本当に責任を取るため辞職を一度は決心したみたいだけど、その後“市長しか見ることができない書類”に目を通すうちに自分が市長で居続けなければ大変なことになると思い翻意した』という趣旨のことを周囲に語っています」(市政関係者)

この“市長しか見られない書類”とは何か。市役所関係者は「公文書の中にそんなものが存在するわけがない。いつの時代の話をしているんですか」と一蹴するが、こうした書類が存在するとの話は支持者の中に浸透しており、「田久保市長がこれを公開すれば、市政がゆがめられてきた決定的な証拠になる」との声まででている。  

自撮り写真を頻繁に自身のSNSに…「斎藤知事の模倣犯」 

正体不明の“書類”への憶測も飛ぶ中、当の田久保市長は自身の宣伝を強化している。

「9月5日に日本列島を縦断した台風15号により伊東市内でも家屋や道路に被害が出ました。すると田久保市長は翌6日、担当課と被害状況を視察したと自身のXにポストしたのですが、そこに並べた4枚の写真の1枚目は自分の顔のアップで、他の3枚は崩れた斜面など現場を写したものでした」(地元記者)

Xでは、自撮り写真を自身のSNSに頻繁にアップする斎藤元彦兵庫県知事を例に挙げ、

 〈完全に二番煎じ。まさに模倣犯〉 

と非難する声のほかに

〈斎藤元彦さんと同じく、田久保さんも攻撃されているんですよ?TVばかり見ている人?マスゴミの情報統制に騙されないでくださいね。〉

などと、斎藤、田久保両氏への批判は情報統制だとする主張も飛んでいる。

このまま批判する声に押されて退場するのか、それとも斎藤県知事のように窮地をしのぐのか。田久保市長の生き残りをかけた秋が始まる。

※「集英社オンライン」では、今回の記事についてのご意見、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。



メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

編集部おすすめ