
警視庁麻布署は3日、SNSの投稿で名誉を傷つけたとして、個人投資家でインフルエンサーの田端信太郎氏を侮辱罪の疑いで東京地検に書類送検したことが、捜査関係者の取材でわかった。フリマアプリ大手「メルカリ」の一部の社員に対して「クソな無能」とX(旧Twitter)などに投稿した疑いが持たれている。
「バカ、クソ、無能なカスタマー対応をする会社」とSNS上で暴言
これまで有名企業の役員をつとめ「AbemaPrime」のコメンテーターとしても知られる田端信太郎氏(50)は「趣味は炎上」と名乗り、インフルエンサーとしても注目されている。全国紙経済部記者が、田端氏の経歴をこう説明する。
「田端氏は1975年の石川県生まれで、慶應義塾大学を卒業後、NTTデータに就職。そこからライブドアやLINEの執行役員などを経て、19年に独立をしました。
Xのフォロワーが38万人で、自身のYoutubeチャンネル『田端大学 投資学部』はチャンネル登録者数が32万人を超えています(いずれも2025年9月8日時点)。
株価や仕事論などの情報を発信する一方で、自らを『愛と誠のアクティビスト』と名乗り、物言う株主として活動しています。過去には、行き過ぎた投稿内容で炎上をしており、取締役を解任された騒動がありました」
その田端氏が侮辱罪などの容疑で書類送検になっていたことが、集英社オンラインの取材で明らかになった。今回の事件を捜査関係者が語る。
「田端氏は、書類送検の容疑は田端氏が24年11月から12月の間、自身のXでメルカリが社外向けに公表している社員のインタビュー記事について、『無能を雇うのを株主からしたらやめてほしい』などと自身のXで投稿したとして、公然で侮辱した疑いが持たれています。
被害者は4月、侮辱罪にあたるとして麻布警察署に告訴状を出し、受理された。田端氏はこれまでにも、『バカ、クソ、無能なカスタマー対応をする会社』『メルカリの広報が無能なのはそういうとこやぞ!』などとSNS上で発言し、批判を行なってきました」
メルカリは集英社オンラインの取材に対して、田端氏との騒動や告訴状の受理について「全て事実です」と回答した。そのうえで、「今後も従業員等を守る責務を果たすことを目的に、法的措置を含め対応を行ってまいります」とコメントした。
6月に家宅捜索 田端氏は「違法性はない」「自信ある」
田端氏をめぐってのトラブルはメルカリだけではなく、数人が警察に被害届を出し、すでに書類送検されているという。
被害を受けたという一人、企業の広報支援を手掛ける株式会社シプードの舩木真由美代表取締役に話を聞くと、「田端さんをめぐってのトラブルで、警察が介入していることは事実です」と回答した。
当時の様子については、
「話したいのは山々なのですが、田端さんや田端さんファンからの誹謗(ひぼう)中傷がいまでも怖く、当時のことを話すのはどうしても控えたいです。攻撃がまた始まってしまうと考えると、本当に辛いんです。まだ捜査中ということもありごめんなさい」
と被害の内容については回答を控えた。一方で、相談を受けていたという舩木さんの知人はこう解説する。
「本人はSNS上で田端さんから『無能』『バカ』などと誹謗(ひぼう)中傷され、一時期、心療内科へ通っていました。田端さんが無能とXで発言すると、複数の匿名アカウントも便乗し、心なき声が届くことで心を病まれていました。幸いにも私やパートナーの方がいたから良かったですが、本人は『誰も頼れる人がいなかったら自死を考えていたかもしれない』と言うほど追い込まれていました」
捜査関係者によると、田端氏は舩木さんとのトラブルをめぐっても、6月中に港区の自宅に家宅捜索が入り、名誉毀損(きそん)と侮辱の容疑で8月20日に東京地検へ書類送検されていた。
田端氏は6月の家宅捜索時に「民事に問題が発展すると思ったけど、まさか警察が来るとは思わなかった」と驚きつつ、「違法性は絶対にない。自信がある」と述べていたという。
SNS上での誹謗(ひぼう)中傷に詳しいベリーベスト法律事務所の五十嵐優貴弁護士はこう解説する。
「公然と他人の人格などを蔑視する価値判断を表示した場合、侮辱罪に該当する可能性があります。
今回の田端さんの言動は侮辱罪の構成要件に該当すると考えられ、社会的影響力の大きさや同趣旨の投稿を繰り返していることが、悪質性の判断に影響すると見られます」
侮辱罪をめぐっては、2022年に法改正され、法定刑の上限が「1年以下の拘禁刑」に引き上げられた。
背景には、フジテレビのバラエティー番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が20年5月に自殺した問題で、当時のTwitterでは「キモい」などと書き込まれたことで、略式命令を受けた男2人の科料が9000円だったことから、厳罰化を求める声が続出したことがある。
田端氏の主張
一連の投稿の背景をめぐって、田端氏はSNSなどで2024年4月24日時点にメルカリの株を3万株保有していたことから、「3万株を保有するアクティビティスト個人投資家」と称して、当時約700億円の赤字などをはじめとする業績不振について、アメリカ事業からの撤退や30%程度の配当を開始する株主還元を求めていた。なお、保有株は今年2月に売却したという。
また、メルカリに対しては以前から否定的な視点で、過去には
<そうだよ、転売ヤーの片棒を会社ぐるみで担ぐメルカリ社員なんだから!>
とも投稿している。実際に、直近8月にもマクドナルドのハッピーセットに付く「ポケモンカード」をめぐって、メルカリには大量出品が相次ぎ、メルカリの企業体制に批判を集めている。
渦中の田端氏はどう捉えているのか。9月16日、本人に質問状を送付したところ以下の回答があった。
〈私は警察の刑事さんたちとやりとりし、捜査に全面協力しております。当方にも当方として主張したい立場がありますので、取材は喜んでおうけします〉<原文ママ>
翌17日、田端氏の事務所に訪れると、田端氏は3件の罪で書類送検されていることについて「事実です」と認めた。後編では60分にわたるインタビューの様子をお届けする。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班