〈新橋ガールズバー殺人事件〉「200万円使うも…カモにされて許せない」馬乗りになり何度も刺した酒が飲めないバツイチの無職男(50)“ヒロポン”に懲役19年の判決
〈新橋ガールズバー殺人事件〉「200万円使うも…カモにされて許せない」馬乗りになり何度も刺した酒が飲めないバツイチの無職男(50)“ヒロポン”に懲役19年の判決

昨年10月、新橋のガールズバーで当時18歳だった女性店員Aさんの首などをナイフで切りつけ殺害したとして殺人の罪などに問われている千明博行被告(無職・50)に対し、東京地裁は「犯行態様は強い殺意に基づく残虐なもの」と指摘し懲役19年(求刑20年)の実刑判決を言い渡した。

「被告は被害者よりおよそ30歳年上の十分な大人」

「被害者のことが好きだったのに、結局カモにされて許せなかった」

千明被告はこれまでの公判で動機についてこう語っていた。社会部記者が解説する。

「千明被告はマッチングアプリでAさんと出会った後、Aさんの勤務先のガールズバーに呼ばれ数十万円するシャンパンを注文、合計で200万ほど使った。『連絡をしたけど無視された』『付き合うのもアリと言われながらカネばかり取られた』などと公判で語っており、自身が“色恋営業の被害者”だと言いたかったのでしょう。弁護側も『被害者にも落ち度がある』『犯行は計画的なものではなかった』と主張してきました」

いっぽうの検察側は、凶器のナイフの柄にテープを巻いて準備しており計画性があったことを指摘、千明被告がAさんに馬乗りになり首や顔などに36ヶ所傷があったことに触れ、「強い殺意があった」と主張していた。

そして、9月17日におこなわれた判決で福家康史裁判長は「被告は被害者よりおよそ30歳年上の十分な大人で、被害者は最終的に被告との関係を絶とうとしていた」とし、懲役19年の実刑判決を言い渡した。

「集英社オンライン」では事件発生直後、群馬県内で同居していた千明被告の母親から話を聞いている。母親は「あんな子じゃないんだよ。考えられない」と肩を落としこう語っていた。

「なんだか女の子から電話がかかって来るようになって、そうすると翌日か2日後くらいには店に行っていました。あの子はお酒飲めないんだよ。たまに缶ビール1缶を私と半分ずつ飲むくらい。しかも、身体壊してて、ヘルニアと糖尿病、肝臓も悪くしてるから薬いっぱい飲んでるの。

それでも店には週1くらいのペースで通っていました。

(事件当日)はあの子は『ちょっと東京行ってくる』と言って家を出ました。そのとき、暗い感じで元気がなかった。なんかいつもと雰囲気が違ったの。寂しげな感じがした……」(母親)

時計は金無垢のROLEX、成人式にはクリスチャンディオール

取材中、50歳の我が子を「家族思いのいい子」と何度も話した年老いた母親。いっぽう法科専門学校時代の友人は「沸点が低くキレやすい」と証言した。

「彼は専門学生時代からロン毛で黒色が好きなオタク風の見た目。バイトもせず仕送りだけで生活していたので、実家が裕福なのかなぁと思っていました。そのためか、周りの生徒は陰で『ぼっちゃん』と呼んだり、昔あった薬物にちなんで『ヒロポン』と呼んでいる人もいました。キレやすかったので、目の前では呼べませんでしたけど……。

時計は金無垢のROLEXをしていました。成人式にはクリスチャンディオールのスーツで行ったらしく『テレビのインタビューを受けた』と自慢していましたね。女の子にモテていた印象は全くないし、当時は女性にそんなに興味がなさそうな感じでした」(専門学校時代の友人)

そんな“ヒロポン”も家庭を得たことがあった。母親によると、30年ほど前に交際相手と結婚し子どもも授かった。

だが、司法試験に落ち続け妻子と共に群馬にUターンするとすぐに離婚、裁判で親権を失い子どもとも疎遠になった。以来女性に出会うことなく趣味の“万年筆集め”に没頭したという。

「何十万円もする限定の万年筆を集めるのに血道をあげて、海外から取り寄せたりもしていました。ケースに入れて並べています。東京に行くのも、万年筆を買うときくらいしか行かなかった。上野のガード下とかに買いに行っていました。離婚してからしばらくは、『女はいらない』って感じで趣味に没頭していて、彼女はいなかったと思う」(千明被告の母親)

Aさんとの“出会い”は久しぶりの恋だったようだ。

「鼻の穴まで切られてひとつになってしまっている状態で……」

いっぽうのAさんもガールズバーで働くのには理由があった。当時の常連客はAさんからこんな話をきいていたという。

「ガールズバーで働いているのは音楽をやりたいからだと言っていました。ヴィジュアル系というか、地雷系というのか、そういう感じのフリフリの服を着てたし、メイクもそっち系でした。出勤も多くてお店ではそれなりに人気もあったと思います…」(当時の常連客)

店で働く前は近所の牛丼屋で働いていたAさんは、演劇やアニメが好きで店でも人気者だった。

昨年11月、未来ある18歳の愛娘を何度も刺し命を奪った千明被告に対し、Aさんの父親は声を震わせ胸中を話してくれた。

「あいつ(被告)は娘1人を殺したつもりかもしれないけど、そうじゃない。家族全員が傷ついて、あいつを恨むしかないんだ……。それほど殺され方がひどすぎた。現場のガールズバーで、すでに手の施しようがない状態だったようです。

安置していた病院では、医師が『ひどすぎて全身はとても見せられない』と判断したのでしょう、顔以外は布で隠されていました。でも、顔は、切り傷というか……鼻の穴まで切られてひとつになってしまっている状態で……。病院に向かう途中は『何とかならなかったのかよ』と何度も思いましたが、遺体の状態がもう衝撃的すぎて。どうしても何度もこの時の顔を思い出してしまいます」

公判でも、証言台に立った父親は「少しでも娘に良い報告が出来るよう、身勝手な理由で娘を殺したこの男に、今ある最高の刑罰が下されることを願います」と訴えていた。

懲役19年――。遺族や千明被告は今何を思うのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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