
定例市議会の一般質問で仲川げん市長に暴言を吐いたとして、元迷惑系YouTuberで現奈良市議のへずまりゅう氏(34)が18日、大西淳文議長らから口頭注意を受けた。関係者によると、へずま市議は一連の発言を反省しているという。
「びっくりして身の危険を感じました」と漏らす市議も
「市長!あなたね、どのツラを下げて市長をやっているんですか!」
市議会にへずま市議の怒鳴り声が響いたのは9月12日の出来事だった。県庁所在地である奈良市では現在、市議会が開会中で39人が議論を繰り広げている。そんな中、へずま市議は奈良市議会の一般質問で、相次ぐ奈良公園のシカへの暴力行為をめぐって罰則強化を訴えていた。
へずま市議は突然市長を怒鳴りつけたあと、「16年市長をやって市民の思いも届かなくなったんですか? 動物はしゃべれませんよ。でも市民はしゃべれる。そんな声が届いていないのって、おかしいですよね」と訴えた。
奈良市議会の関係者が語る。
「仲川市長は決して、へずま市議の答弁を無視しているなどではありません。奈良のシカは文化財保護法や県の条例で守られています。そのため、市の条例の適用範囲が狭いことから市でできることが少ない現状を課題と認識しています。また、規制についても、県や保護団体と協議を進めるとしています。
奈良市議の間ではへずま市議は『未知の相手』として認識されており、彼と絡むことによるSNSでの炎上が怖いと思う人たちがいます。
へずま市議が大声を上げたことである女性市議は周囲に「びっくりして身の危険を感じました」と漏らしているという。
地方自治法132条では、議会における議員の言動の規範を規定している。議員は議会中などで無礼な言葉を使用したり、他人の私生活にわたる言論をしたりしてはならないと定められている。
事態を重く見た議会側は、16日に各会派の幹事長会を開いたうえで、対応を協議した。結果、へずま市議の発言は市議としての品位に欠けるとし、今回の口頭注意に至った。
口頭注意の状況を、前出の関係者はこう語る。
「へずま市議は議会の昼休みに議長と副議長に呼ばれました。12時過ぎのことです。そこで口頭注意を受け、反省している表情だったそうです」
へずま市議に名指しで批判された市議には昼夜問わず非通知電話が…
へずま市議は今年7月に行われた奈良市議選で8320票を集め、3位で初当選した。市長を怒鳴りつけた日はへずま市議の初めての一般質問だった。
へずま市議は同日の議会が閉会後、自身のXで、
<人生初の議会が終わりました。面白く思わない議員が複数いましたがあんたらが適当な仕事しかしないから元迷惑系YouTuberが当選したんですよ。
と投稿し、
<因みに隣の柿本氏からは議会が終わりダダ滑りやったなと言われました。鹿さんどうでもいい人からしたら熱意など感じずただの騒いでる馬鹿にしか見えないんでしょうね>
とほかの市議を名指しして、苦言を呈した。
へずま市議に批判された柿本元気氏は集英社オンラインの取材に応じ、こうツッコミを入れた。
「noteに書いた通り、彼はやる気とバイタリティに溢れた男です。でも、自分の実力や立ち位置を客観的に見れていないんですよね。勉強会を開催していると話していますが、2日間にわたる新人研修の日に彼は1日も参加しませんでした。
参加しなかった結果、資料の読み方や議員ポータルの使い方がわからず、議会の話し合いには入れない状態。また、議員が残っていると事務局職員が帰れないことから、議員はできるだけ残業せず帰るのですが、議員の出欠ランプの前に立ち、最後まで残業しましたとアピールしたりもするわけです。
そして今回の問題の発言も、市長としては課題感を持っているにもかかわらず、突然の怒鳴り声に会場がついていけませんでした。正直、どういう意図で彼が話したのか(わかりません)、彼と市長とのやりとりで会話が全然つながっていないからです。
その後に柿本市議は13日、自身のXでへずま市議の発言に対して、
<こんなん笑うやん。1回笑った後にもう1回噛み締めてまうし、慰めてあげなあかんと思うやん。
こんなに鹿を愛する人たちに嫌われてしまうなんて、俺はよっぽど鹿でなしなのか>
と投稿した。それに反応するかのようにへずま市議も同日、
<ごめんなさい。パワハラ上司を思い出し涙が出ました。何故、頑張る人を笑うのですか?柿本さんダダ滑りしてるよ。本当に悲しくなりました。>
と投稿。このへずま市議の投稿はいいねが約9万回され、1100万を超える表示回数を記録した。
その後、柿本氏には1日100件を超える非通知電話がかかり、時には深夜2時に電話が何十件もかかってきた。
へずま市議がDM
柿本市議は当時の様子を、「迷惑ですね。へずま市議が勉強不足なのは事実なはずなのですが、彼に絡まれるとこんな感じなのかと実感しました」と語る。
そのうえで、
「一連のやり取りで炎上しているときに、彼からDMが届いた。柿本さんの子どもの安否が心配なのでもうやめよう。柿本さんの子どもの写真も消したほうがいいという内容でした。
私は、これを脅迫であると受けとっています。なぜなら、本当に心配なら、自分の支持者にそんな卑劣な真似はやめろなどと注意喚起をすれば済む話です。また、私の子どもの写真はすでに拡散されており、いまさら隠したところで、なにも解決しないから。
彼の狙いとしては、私をびびらせて写真を消させたうえで、やり取りを終わらせることだったのでは。そうすることで、私が子どもを守るために話を終わらせたと印象付けることができる。そして、それを狙うということは、私にこれ以上内情を暴露されたくないので、なんとか体裁を保ってやり取りを終わらせたいという意図を感じました」
と明かした。
柿本市議はこの提案を一蹴し、「続けるならとことんやろう。逃げるなら追いかけない」と送ったという。へずま市議は、「わかりました」とだけ返事をし、それ以降柿本市議の名前を出すことはなかった。
へずま市議が政治家として活躍する日は訪れるのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班