
フリマアプリ大手「メルカリ」の一部の社員に対して「クソな無能」とX(旧Twitter)などに投稿したとして、今月3日に書類送検された個人投資家でインフルエンサーの田端信太郎氏。本人に事実確認のためにコンタクトを取ったところ、60分にわたるインタビューに応じた。
「ちょっとお話をお聞きしたいこともあるんで」
集英社オンラインは田端信太郎氏が自身のXの投稿をめぐって、侮辱罪の疑いで書類送検されたことを報じた(♯1参照)。一連の騒動について、田端氏に見解を問うべく取材依頼を送ったところ、〈私は警察の刑事さんたちとやりとりし、捜査に全面協力しております。当方にも当方として主張したい立場がありますので、取材は喜んでおうけします(原文ママ>
とメールにて連絡があった。そして次の日、東京都港区内にある田端氏の事務所で、本人が取材に答えた。
――田端さんのXの投稿について、メルカリをはじめ会社経営者のかたなど複数の人物から被害届が出され、「侮辱罪」の疑いで書類送検されたのは事実でしょうか?
正直、僕ね、そろそろこういった取材が来るんだろうなと思っていたんです。いま、侮辱罪をめぐっては3件、事情聴取などの調べが進んでいます。
今年の6月、朝8時半ぐらいかな。家のマンションのエントランスを一歩出たあたりで、「田端さんですよね?」と声をかけられました。
オフィスカジュアルの格好をした刑事さんが5~6人いらっしゃったんです。彼らに警察手帳を見せられて、「ちょっとお話をお聞きしたいこともあるんで」ということで、近くに停まっていた覆面パトカーへ案内されました。
正直、僕もびっくりして。「これは私が被疑者ってことですか」と聞くと、「はい、そうですね」と返事。侮辱罪と言われました。
野球選手に「打てねえなバカ!無能」って観客が言ったら侮辱罪なんですか?
――侮辱罪に心当たりはありましたか?
正直、なかったです。僕はずっとね、名誉毀損(きそん)に関してはかなり勉強してて。どういう条件で名誉毀損が成り立つのか。公益性とか真実性とか、真実相当性とか。または名誉毀損が棄却される条件とか。とにかく気をつけていたんです。
ただ、侮辱罪の場合、単に「アホ」「バカ」でも成り立つっちゃあ成り立つんですよね。そっちは正直ノーマークでした。
正直、こんなこと言ったら誰だってキリがないだろみたいな感じです。ある意味、ネット上でそんなこと言われ放題な状況ですし、実際に僕だってめちゃくちゃ言われてますよ。
でも僕らとしては、別にそんなもんで訴えないけどって思ってたんですけど、警察から自分にかかっている容疑について説明を受けたとき、「なるほど。こんなこともあるのか」ってその時思ったわけですよ。
一瞬だけ、「俺逮捕されるのかな」とも覚悟を決めましたが、「逃げも隠れもしないし、投稿内容については事実で、争うつもりはありません」と話しました。その日は1時間ほどで終わり、その後、都内の警察署で3回ほど事情聴取を受けています。
――メルカリとの事案をめぐっては、田端さんのXでメルカリが社外向けに公表している社員のインタビュー記事について、『無能を雇うのを株主からしたらやめてほしい』などと自身のXで投稿したとして、公然と侮辱した疑いが持たれていますよね。
そうです。その記事内では、社員さんが仕事論を語り、自分の仕事のミッションはある重要な数値を伸ばすことだと話していました。ただ、実際に11月に発表された決算資料を見て、まさにその数値が全く目標通りには伸ばせていなかったので、「無能」と指摘をしただけです。
当時のメルカリは購入したにもかかわらず、出品されたものではない関係ないものが送られてくるすり替え問題や、株価の下落など、いろいろな問題を抱えていました。
去年4月末から株を持たせてもらっていることもあり、ある種の批判というか問題提起をさせてもらっていました。
ちょっと大げさなたとえかもしれないですけど、野球選手に「打てねえな。バカ!お前!無能の年俸泥棒!」って観客が言ったら侮辱罪なんですか。
もちろん「死ね」などの人心攻撃はダメですよ。そんなの論外だ。
「覚悟が足りないのではないかなと僕は思っている」
――無能と書きこんだから警察沙汰になっている。「言い過ぎた」と思いませんか?
僕の言論の自由とか発信の自由が制限されなければいけないのか。正直、僕にはわかんない。
社員1人1人のパフォーマンスが会社を構成してるという以上、言うべきことは言う。あと一般社員と役員との線引きはあって、(CEOの)山田進太郎さんなどのメルカリの経営幹部に対して、僕はもっと強い言葉をつかってる自覚があります。
それに対してで言うと、今回はそのかたが一般社員であって、どれぐらい自発的な意思で社外向けのインタビュー記事に出たかどうかわからないですが、個人に対して受け取られるような言葉づかいをしてしまった点では、配慮がもう少しあった方が良かったとも感じています。
ただ、厳しいことを言うと、社外向けのインタビュー記事なだけにいろんな反論やクレームも飛んでくることは想定できると思うんです。実際にメルカリはいまでも転売ヤー問題などを抱えていることは事実です。
記事公開の結果、攻撃を受けた。それはいわゆる使用者、雇用者としての職場の安全な環境を提供する義務に反してるって、その社員のかたが雇用主であるメルカリに怒ることなら僕は理解できる。
でも、俺には関係ないじゃん。
今回、メルカリさん以外にも2社もしくは2人から刑事事件で訴えられているわけですが、こんなことで訴えていたら、言論を萎縮させることにつながりかねないと思う。株主が自由に物事を訴えられなくなる可能性もある。
なかには上場企業の取締役をやっている方も訴えてきていて、そう言ったクレームなどが警察の力を借りてくることについて、上場企業の取締役を引き受けるということへの覚悟が足りないのではないかなと僕は思っている。
――田端さんはその他にも「過労死は自己責任」といった発言や差別的な発言などで炎上し、批判された過去もありますよね。立場の強いかたが書き込んでファンも一緒になって攻撃をする、それで相手をより傷つけてしまったのではないでしょうか?
嫌になるんであればブロックまたはミュートすればいい、僕は基本この考え方です。
地上波や新聞、あなたたちのように、ヤフトピにも掲載される可能性があるような大手のネットニュースメディアは公共性があることから、発言できる言葉の制約があってしかるべきだというのは、僕はわかる。
でも僕のSNSやYouTubeは個人のものであって、見たくなければ見ないようにできる機能も備わっている。たとえがちょっと飛躍してるかもしんないけど、上の方で登山してて、ポロって1個足を踏み外してしまった。結果、小石がガラガラって落ちてしまいその影響が大きく、下で人が巻き込まれて死んだら僕が悪いのか。そんな無理難題な話として僕には聞こえます。
60分に及んだ田端氏の告白。田端氏は最後、「私は何ら恥じる点はありませんし、問題となったポストの投稿も削除してません。これからも萎縮することなく、投資家や株主の立場から経営に問題提起を続けていきます」と述べた。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班