“田久保派”候補者からも「不信任に賛成」の声も…市長周辺は「何派か問うこと自体が分断を煽る」〈伊東市大混乱〉
“田久保派”候補者からも「不信任に賛成」の声も…市長周辺は「何派か問うこと自体が分断を煽る」〈伊東市大混乱〉

静岡県伊東市では田久保眞紀市長(55)の学歴詐称問題を発端にした混乱で市議会が解散され、10月19日の市議選後に田久保市長の不信任議決が再び行われるかどうかが焦点になっている。市長支援者らは議決阻止に必要な「7議席」獲得を目指すことを隠さないが、支援者とみられてきた立候補者からは田久保氏の不信任に「賛成」と答える人や「未定」と答える人が相次いでいる。

市長の地元の有力支援者の一人は、世論が悪すぎることを理由に支援から手を引くと表明。田久保市長の足元で、支持層はぐらついているとの見方が出ている。 

「田久保派とか何派っていうことに対してすごく抵抗があった」

「2回目の不信任案ですか? はい、賛成します。田久保さんをずっと支援してきたんでね、そこのところはやっぱりすごく辛い立場もあったんですけど、やっぱりはっきりしないといけないなと」

そう話すのは市議選に立候補を表明した新人の女性、A氏だ。ことし5月の市長選で劣勢とみられた田久保市長を表立って支援し、一騎打ちの選挙に敗れた前市長派の市内の財界人からは「田久保派の筆頭」と名指しされる人物である。

市長擁護のためでないなら、なぜ市議選に立候補するのか。

「町がどんどん低迷していくなかで、今回みたいな議員さんと市長のああいう対立を通して市民が分断していくのを見てて、自分が元々やってきた町おこしを広げて、みんなが力を合わせるようにしたいんです。

そういった団体の代表もやっていて、メンバーのなかには田久保さんに反感を持っている人もいるし。だから私は田久保派とか何派っていうことに対してすごく抵抗があったんです。

田久保さんの支援者が7人当選すると今までの(前職で田久保市長の不信任に賛成した)議員さんと揉めると思うんですよね。それはやっぱり市民が見てて1番辛いとこだと思うので」(A氏)

田久保市長は9月1日に市議会で不信任を議決され、これに対抗して10日に議会を解散した。定数20の伊東市議会では、7人が採決に加わらなければ田久保市長の再度の不信任は阻止できる。

9月22日に市選管が開いた立候補予定者説明会には、前市議18人と新人17人の立候補者やその代理人が参加。

地元の伊豆新聞は、このなかに⽥久保市⻑と「特に近しいとされる⼈物が1、2⼈」おり、「再度の不信任決議案に反対や⽋席をする可能性があるのは6、7⼈とみられる」と報じている。

田久保市長と「特に親しい人物」の立候補予定者も市長の評価を避ける 

25日には、この「特に親しい人物」に含まれると地元政界関係者の見方が一致する新人の女性B氏も立候補を正式に表明した。

B氏は東京大学でイスラム学博士号を取得し、研究で海外で長く過ごした経験も持つ経営者だ。反田久保派の市政界関係者も「田久保市長の支持者で最も当選する可能性が高い」と指摘する。

B氏は記者会見で「市政がまともに機能しているところが他の改革の礎になると思っていますので、そこにまずメスを入れていく」と強調し、市政改革を第一の公約に掲げた。

この会見でB氏は、記者の質問を受ける直前、「皆様のご関心の1つである市長に対する不信任案を可決するのかしないのかという点については、現時点では未定です。そのため、この件に関して結論を申し上げることができません」と述べ、田久保市長への評価は話さないと釘を刺した。

だが、市議選自体が田久保市長による議会解散の妥当性を問う性格を帯びているため、当選後に不信任に賛成するか否かは有権者が候補者を選択する大きなポイントになる。会見では当然、「なぜ未定なのか」との質問が出た。

これにB氏は、「私が未定であると申し上げましたので、それを、できれば敬意を示していただきたいと思うんですけれども、そこについてはちょっとコメントを差し控えさせていただいてもよろしいでしょうか。

このことに踏み込むと、やはりまた正直なところ、何を書かれるか分からないなっていうところがございますので、お願いいたします」と述べ、理由を明らかにすることも拒んだ。

そこで質問をした記者は次に田久保市長との関係をたずねた。

するとB氏は「(田久保氏が)市長ですので普通に面識があるという感じですね。市役所の人を知っているように、田久保市長を知っているという感じですね」と回答。

これに納得しなかった記者が田久保市長との関係を詳しく質そうとするとB氏は「その、田久保派、反田久保派かっていう議論自体が分断を煽るきっかけになっていると私は思っていますので、そちらの質問に対してはちょっと今回はお控えさせていただいて、他のことを聞いていただければと思います」と、これも回答を避けた。

立候補予定者で田久保市長に特に近い一人と目されるB氏も田久保市長の評価を避ける姿勢を見せるなか、市長が地盤とする伊豆高原地域でかつて熱心な支援者だったことで知られたCさんが地元の空気を話した。

「私は次に市長選になっても田久保さんの選挙には加わるつもりはないんです。伊豆高原のメガソーラー計画の反対の先頭に立った田久保さんは、同じく反対を表明しながらもその真意はわからないと疑いの目で見られていた前市長よりも信頼できるとして、地域の人が票を入れました。

田久保さんの学歴偽装疑惑が出た6月議会でも、市議会の傍聴席には80人とも100人とも言われる支持者が駆けつけて“田久保さんを守ろう”という空気が強かったんです。

でも、7月初旬に『卒業したと思っていた東洋大学から除籍されていた』とはっきりした時から空気は変わりましたね。結局、市役所職員や教員ら、市の公務員がみんな市長にそっぽを向いちゃって、そんな人はみんな地元の人じゃないですか。

そうすると家族、友だち、先輩後輩の人間関係もあるし、その中で田久保さんを今でも応援するんだ、という声はあまり聞かれなくなりました。

立候補者でも、田久保派だと思っていた人が『不信任に賛成する』と言ったりしていますが、もう関わっていないのでどうなっているのか、わからないです」(Cさん)

かつての強力な支援者の言葉からは、「田久保市長派」を前面に出しては選挙で勝てそうにないという地元の空気が伝わってくる。田久保市長に活路は果たしてあるのか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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