〈メール入手〉「リークしたのは誰だ?」進次郎陣営が犯人探しで疑心暗鬼に…「もはや内部では刺し合い」「みんな自分のポストがほしいだけ」
〈メール入手〉「リークしたのは誰だ?」進次郎陣営が犯人探しで疑心暗鬼に…「もはや内部では刺し合い」「みんな自分のポストがほしいだけ」

今回の総裁選で大本命と言われていた小泉進次郎農水大臣(44)が大失速している。原因は週刊文春が報じた、いわゆる「ステマ」疑惑だ。

すでに小泉陣営内は疑心暗鬼に陥っていて、「内部崩壊している」という声も漏れてくる。政治に詳しいジャーナリストの長島重治氏が陣営関係者への取材を重ね、その真相を探った。 

内部情報がリークされ…小泉陣営に衝撃 

「犯人は誰だ!」

いま小泉陣営内は犯人捜しに躍起だ。内部情報がリークされたことに衝撃が走っている。本題に入る前にまずは問題のおさらいをしておく。

ことの発端は9月25日発売の週刊文春だった。小泉陣営で広報やSNSを担当する班長だった牧島かれん・元デジタル大臣の事務所スタッフが、他の陣営スタッフや地方議員たちにニコニコ動画の配信で小泉氏を応援するコメントを投稿するようにメールで依頼していた。

ご丁寧に24もの例文集まで作る手の込んだやり口だったため、いわゆる「ステマ」(ステルスマーケティング)ではないか、という批判が殺到している。

「ステマ」とは、広告であることを隠して宣伝する手法で、企業などがインフルエンサーにお金を払って自社製品を賛美させるような、いわゆる「やらせ」だ。場合によっては「景品表示法違反」にあたることもある。これまでも名だたる大企業が指摘を受けてきた。

景品表示法は政治や選挙には適用外だ。とはいえ、もっとも公正さが求められるのも選挙だ。

ましてや自民党の総裁選は日本のリーダーを決める選挙のため、それが「ステマ」によってゆがめられた可能性があるとなっては一大事だ。

ネット上では小泉氏に出馬辞退を迫るコメントがあふれ、29日には、小泉政権誕生の際には連立政権のパートナーと目されている日本維新の会の前原誠司・前共同代表が小泉氏に総裁選の出馬辞退を迫った。

同じ29日に、自民党本部総裁選事務局から各自民党議員事務所に一通のメールが送信された。

*****

党所属国会議員事務所 御中

いつも大変お世話になっております。

総裁選挙当日に関するご案内を添付の通りお送りいたしますので、

必ず先生にお渡しいただきますようお願い申し上げます。

また、逢沢一郎総裁選挙管理委員長の声明も発出されましたので、

あわせてお送りいたします。

党本部総裁選事務局 議員投票班

直通XX-XXXX-XXXX

*****

このメールでは自民党の総裁選挙管理委員会、逢沢一郎委員長の次のような「声明文」も一緒に紹介されていた。

「それぞれの陣営の選挙責任者に対し厳重注意を行った」 

「候補者による論戦が活発化する中、複数の陣営の選挙運動に対し、禁止事項に抵触するのではないか、との指摘が管理委員会に届いている。公選規程に抵触しかねない陣営間の感情的対立を煽る恐れのある事案に対しては、事実関係を確認したうえで、選挙管理委員長から、それぞれの陣営の選挙責任者に対し厳重注意を行ったところです」 

要するに、違反が多いからもっとクリーンにやりなさい、ということらしい。自民党再生のための総裁選だったはずだが、まさに「貧すれば鈍する」といったところか。そんな「内部崩壊」をいまもっとも起こしているのも小泉陣営だ。

冒頭にあるように、今回の文春へのリークの犯人捜しに躍起になっているという。じつは総裁選序盤にも陣営の配置図が漏れた。

「リークしている裏切り者が内部にいる」と陣営内は疑心暗鬼に陥っているというのだ。

 陣営内は刺し合いのような状況に陥っている 

「『小林史明氏が主犯ではないか?』『いや木原誠二氏が怪しい』など、陣営内は刺し合いのような状況に陥っている。とにかく雰囲気が最悪です」(陣営中堅)

小泉陣営は告示日の決起集会に92人(代理出席含む)が出席するという大所帯だ。小泉氏と当選同期の斎藤健元経済産業大臣、加藤勝信財務大臣、木原誠二選挙対策委員長、野田聖子元総務大臣、河野太郎元デジタル大臣など、重量級も多数そろう。決起集会でそうしたメンバーに囲まれた小泉氏が感極まって涙ぐむシーンまであり、もはや勝負は決した、と誰もが思った。

ところが政界はまさに「一寸先は闇」といえよう。

この「ステマ」疑惑報道が流れを完全に変えてしまった。ある陣営スタッフは「犯人捜しなんてもそもそも無謀だ」と憤る。よく言えば「重厚」ともいえる小泉陣営だが、逆にいえば、寄せ集めの混成部隊だ。国会議員や秘書たちのメーリングリスト、LINEグループも複数乱立していて、さらに市町村長や地方議員のグループもある。

500人以上の地方議員が登録されたLINEグループもあるらしく、「犯人捜しもなにも、そういったところにかたっぱしから『応援依頼』なんて送れば、漏れるに決まっている」と嘆く。

このスタッフはさらに続ける。

「選挙は生き残りをかけた戦争だから、これぐらいのことはこれまでもやってきた。

ただやるからには、口頭で伝えて証拠を残さない。文書で配るなら必ずシュレッダー廃棄するように厳命する。保秘の徹底はこの世界では常識的なことで、メールで依頼するなんて軽率すぎる」

「炎上」の原因となったのは「ビジネス保守」 

犯人捜しをしようにも、メーリングリストを通じて投稿依頼しているので特定のしようがない。ただ、相互不信だけが陣営内に残ったようだ。

陣営内では「例文集」にも批判が集まっている。

【投稿依頼で示された24例文】

・ようやく真打ち登場!

・これは本命候補でしょ!

・総裁まちがいなし

・あの石破さんを説得できたのスゴい

・なんか顔つき変わった!?

・去年より渋みが増したか

・泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね

・困った時のピンチヒッター感ある

・期待感しかないでしょ

・野党への切り返しはするどかったぞ

・コメ大臣は賛否両論だけど、スピード感はあったな

・単純にいい人そうなんだよな~

・確かに若手の面倒見良さそう

・むやみに敵を作るタイプじゃない

・頼む 自民党を立て直してくれ

・「保守政党 自民党の神髄」出ました

・ビジネスエセ保守に負けるな

・奇をてらわず、実直に仕事してくれる人がいい

・もう一度自民党に期待させてくれ

・谷垣総裁みたいに「みんなでやろうぜ!」

・チーム進次郎は仲間が多いからなあ

・前回は議員票が一番多かったもんな

・側(そば)で見てる人は分かってるんだよ

・やっぱり仲間がいないと政策は進まないよ

とりわけ「炎上」の原因となったのは「ビジネス保守」だろう。実際にニコ動の画面にも流されていた。小泉氏を称賛するだけではなく、相手候補、とりわけ高市氏を中傷したことでネットでの大炎上につながった。これらは総裁公選規程にも抵触する可能性がある。

みんな選挙後の自らのポストを当てにしているだけ  

筆者も長年、選挙取材に関わってきた。街頭演説での動員など、選挙に「やらせ」はつきものだ。とはいえ、相手陣営への中傷を、立場を隠して実施したとなると深刻だ。ところが、騒動が発覚しても小泉陣営内では当初、いまいち深刻に受け止められていなかったようだ。

文春発売の当日は小林史明議員が記者へのブリーフでおおむね事実関係を認めていた。

だが、小泉氏が会見で謝罪したのは翌日だ。それも閣議後の農水大臣としての定例会見だった。今回の事態を受けて、陣営サイドが率先して開いた記者会見ではなかった。

小泉陣営は「メディア対応」「SNS対応」「危機管理」というどれをとっても後手後手で統率がとれていない。党内の全派閥、さらには無派閥からもかき集めた混成部隊だからだ。

ある陣営スタッフは言う。

「本気で小泉さんを総理総裁に押し上げようと体を張っている人はいない。みんな選挙後の自らのポストを当てにしているだけだ」

そもそも誰が秘書たちを仕切っているのかもわからない 

本来、総裁選挙とは私たちが見せられる表の討論会などよりも、党員一人一人への電話かけなど地道な作業が大事になってくる。そうした作業は議員よりも秘書たち実動部隊の仕事だ。

ある秘書は「普通の選挙では秘書たちは土日もシフト表が組まれて交代で電話かけをさせられる。小泉陣営は土日のシフト表も作られていないし、そもそも誰が秘書たちを仕切っているのかもわからない」と嘆く。

福田赳夫氏と大平正芳氏が争った1978年の総裁選は、現職の総理総裁が負けた唯一の総裁選だ。当時は田中角栄氏が大平氏の支援に回った。

そのときに史上最強と称されたのが「田中秘書軍団」の地をはうような選挙戦だ。

その結果、地方の党員による予備選挙で大平氏が大逆転した。総裁選の勝敗のカギを握るのは議員たちよりも実動部隊となる「秘書軍団」というのが総裁選の歴史だ。現職の総理総裁ながら予備選に負けた福田氏は「天の声にもたまには変な声がある」と言い残して、本選を辞退している。

『自民党を一つにする』といってぶっ壊す小泉ジュニア

それでも、報道各社の調査を並べてみても、議員票で1位通過が確実視されている小泉氏の優勢は揺らいでいない。2位高市氏、3位林芳正氏と並んで、現状では決選投票で小泉氏が高市氏を下すとみられている。

しかし、「ステマ」疑惑を抱えた小泉氏が総理総裁になって本当に自民党は一つにまとまって再生なんてできるのだろうか。

そんな筆者の問いに、ある陣営の閣僚経験者はため息まじりにこう言って嘆いた。

「小泉パパは『自民党をぶっ壊す』といって延命させた。小泉ジュニアは『自民党を一つにする』といってぶっ壊すんじゃないか」

文/長島重治

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