〈進次郎の地元党員826人“勝手に離党”問題〉党本部は「高市さん潰しじゃありません」「どうせ党員を継続しないだろうと勝手に判断した」総裁選への影響は限定的か
〈進次郎の地元党員826人“勝手に離党”問題〉党本部は「高市さん潰しじゃありません」「どうせ党員を継続しないだろうと勝手に判断した」総裁選への影響は限定的か

10月4日の投開票が近づき、終盤戦を迎えた自民党総裁選。「文春オンライン」は9月30日に「小泉進次郎の地元・神奈川県で高市派自民党員が離党させられていた」と報道した。

ネット上では“高市潰し”と受け止められているが、総裁選を取り仕切る総裁選挙管理委員会(選管)はどう受け止めているのか。自民党本部の関係者に話を聞いた――。 

勢いづく高市陣営、いっぽう小泉氏は「極めて遺憾です」

『週刊文春』が“ステマ”問題に続いて報じたのは、“勝手に離党”問題だった。

「文春オンライン」は、昨年の衆院選で神奈川9区から出馬し、落選した中山展宏前衆院議員(57)に紐付けられていた826人の党員が、今年6月に意向確認のないまま離党手続きが行なわれ、総裁選の投票用紙が届いていなかった問題について報じた。

中山氏本人が、前回総裁選で高市早苗前経済安保相(64)を支持したと証言していることから、「大量の高市派党員が勝手に離党させられていた」と報道した。

中山氏は、議員秘書などを経て、2012年の衆院選に神奈川9区から出馬し、初当選。甘利明元幹事長に近く、麻生派に所属した。衆院議員を4期つとめたが、小選挙区では立憲民主党の笠浩史国対委員長に負け続け、いずれも比例復活での当選だった。昨年の衆院選で落選後は、それまで務めていた支部長に選任されていなかった。

総裁選の大本命といわれる小泉進次郎農相(44)の地元・神奈川で浮上した問題で勢いづいているのは、ライバル候補の高市氏の陣営である。

“高市側近”として知られる山田宏参院議員(67)は自身のXに「ステマ事案も民主主義を揺るがす行為で倫理的にも完全にアウトだが、この問題は『党費を納入している826人もの党員を本人の同意なく(意図的に?)除籍した』という点で、政治的にも法的にもアウトだろう。自らは知らなかったとしても、小泉進次郎氏は自民党神奈川県連会長としての責任を免れることはできないのではないか」と投稿した。

いっぽうの小泉氏は自身のXで、「2025年9月30日夜に配信された週刊文春オンラインの記事は、事実に反する内容を印象付けるもので、自民党総裁選に不当な影響を与えかねない記事であり極めて遺憾です。

(中略)当該記事は、あたかも、総裁選挙が行われることを前提として、自らに有利になるように私や私の関係者が何らかの動きをしたかのように印象づける内容となっており、著しく事実に反します」などと主張した。

 果たして、総裁選への影響はいかほどなのか――。 

党員投票は「約8割程度がすでに済んでいる」(自民党関係者)との見方も 

こうした事態を受けて、自民党本部の関係者は筆者の取材に対し、「(総裁選を統括する)総裁選挙管理委員会は、この問題を“高市潰し”とは捉えていない」と証言し、一連の経緯をこう振り返った。

「神奈川県で、昨年、一昨年に党費を払って、党員資格を得た人は本来、今回の総裁選における投票権があります。しかし、その人たちに投票用紙が送られていなかった。『どういうことだ?』と問い合わせがあって、確認したところ、昨年の衆院選で落選した方の紹介で登録していた人たちについて、党籍離脱、離党の手続きをしてしまっていたことが判明した。

つまり、県連側の手続きで、『落選した方の紹介で入党した方たちだから、どうせ継続しないだろう』と勝手に判断していた。本来は、年末に本人が継続しなければ、党籍抹消になるだけなので、そんなことをしなければよかった。例外的な手続きで、瑕疵があったのは間違いありません。これはまずいということで、速達で投票用紙を送り、間に合っていると聞いています」

実際、自民党総裁選挙管理委員会は9月27日に、総裁選の投票資格のある党員らの人数を訂正し、神奈川県が5万7344人から、5万8170人に増えると発表していた。全国では、91万5574人から91万6400人になっている。

「ただ、選管としては“高市潰し”だという認識はもっていません。

総裁選目的で、離党手続きをやったとは捉えていないのです。そもそも、手続きが行なわれていた時点では、総裁選があるかどうかも全くわからない状態でしたからね。総裁選の勝敗を左右しようとして、意図的にやったということは考えにくい。

今後、事実確認は進めますが、選管がやる議論ではないのではないか。神奈川県連はもちろんですが、党本部では組織運動本部などで、党員の管理のあり方として、どうあるべきだったかが議論されることになるでしょう」(前出・党本部関係者)

つまり、党本部の認識としては、選管として問題にするのではなく、あくまで「手続き上の瑕疵」だという受け止めなのだ。そもそも、党員投票は「約8割程度がすでに済んでいる」(自民党関係者)との見方もあり、影響は限定的かもしれない。

10月4日の投開票日が近づき、各陣営がヒートアップする中、報道各社も終盤情勢を報道している。

自民党総裁選は、国会議員票(295)と、党員・党友票(295=ドント方式で配分)の計590票の投票が行なわれる。1回目に過半数を占める候補がいなければ、そのうち1位と2位の候補を対象に、国会議員票(295)と都道府県連票(47)の合計342票による決選投票で決める。

時事通信が10月1日に報じた党員票予測では、高市氏と小泉氏が競る展開だという。また、朝日新聞電子版が9月30日に報じた各候補の議員票の動向は、小泉氏が72人、林芳正官房長官(64)が57人、高市氏が37人という結果だった。

「高市氏は党員票に強みがある。

普通に考えれば、小泉氏、高市氏による決選投票になるだろう。そして、決選投票になれば、高市氏の議員票はそれほど伸びず、小泉氏が強い。ただ、ここにきて林氏の議員票の伸びが気になる。可能性は低いが、万が一、進次郎、林さんの決選投票になった時には、結果が読めなくなるな……」

自民党の重要閣僚経験者は見通しをそう語った。結果は、いかに。

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班

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