
2001年10月6日にリリースされた『サヨナラCOLOR』。竹中直人が監督した2005年の映画「サヨナラCOLOR」のエンディングでも使用された名曲だが、この曲が起こした奇跡の繋がりを改めて振り返る。
SUPER BUTTER DOGの永積タカシの実体験が生んだ名曲
めったにはないことだが、レコーディング中にOKテイクが録れた瞬間、「いずれはスタンダード・ソングになる」と予感させる歌がある。
2001年10月にリリースされた、SUPER BUTTER DOGのシングル曲、『サヨナラCOLOR』は、そんな歌だった。
バンドのヴォーカル担当だった永積タカシが、自分自身の体験から生まれてきた、夢と現実の狭間における切実な想いを綴った歌詞が秀逸だ。
この歌を最初に広める役割を果たしたのは、小泉今日子だった。アイドルから女優への道に活動をシフトしつつあった2003年の春、23枚目のオリジナル・アルバム『厚木I.C.』で、誰よりも早くカヴァーしたのである。
また、初めて聴いた時からすっかり歌に惚れ込んだという竹中直人は、それから4年後、原田知世と自らの主演で『サヨナラCOLOR』を監督して、その思いを実現させることになった。
SUPER BUTTER DOGの永積タカシくんが僕の家に遊びにきてくれて、ギターを弾きながら「サヨナラCOLOR」を歌ってくれたんです。その時のタカシくんの歌が本当に心に染みてね、「この歌をテーマに映画を撮りたい」と思ったんです。
日本にはその昔、歌謡映画というジャンルがあった。ヒット曲を題材にした映画が次々と作られていた時代のことだ。しかし、主題歌にしたいほど、歌への思いを監督が先に持っていて、そこからインスパイアされた映画が生まれてくるのは稀だった。
竹中はもう一つの夢を抱いていた。歌に触発されて生まれた映画のエンディング・テーマを、忌野清志郎と永積タカシのデュエットで流したいという夢だった。
忌野清志郎と永積タカシ、奇跡のつながり
RCサクセションのシングルとして1976年に発表された『スローバラード』は、忌野清志郎による夢と予感についての歌だった。
発売当時はまったくヒットしなかった『スローバラード』だったが、クチコミで少しずつ発見され、時の経過とともに聴き手に共有され、名曲と呼ばれるようになった。
忌野清志郎は「竹中、映画を撮っているそうじゃないか、出番はないか」と、映画を撮るたびに必ず駆け付けてくれるほど親しい友人だった。そして清志郎と永積タカシは、偶然にも国分寺市立第三中学校の先輩と後輩の関係にあった。竹中の夢はこうして叶うことになるのだった。
映画には、中島みゆきを筆頭に、忌野清志郎、永積タカシ、高野寛、三宅伸治、斉藤和義など、自身の交友関係から多くのミュージシャンが友情出演してくれた。
映画が公開された後、2006年に大阪城ホールで行われた忌野清志郎のイベント『新・ナニワサリバンショー』で、二人はライヴでも共演している。
その夜、清志郎に「国分寺第三中学校の後輩!」と呼ばれて登場したハナレグミこと永積タカシは、二人でギターを持って楽しそうにRCサクセションの『君が僕を知ってる』をデュエットし、開口一番、「先輩、気持ちいいです!」と場内を沸かせた。
それに続いて『サヨナラCOLOR』が始まると、ざわついていた会場全体は一瞬にして静まり返った。忌野清志郎の哀切な声がハーモニーで加わり、名曲は広くスタンダードとして知られていくことになった。
文/佐藤剛 編集/TAP the POP