「ダウンタウン浜田、往復ビンタの効能」「お昼に松潤との妄想」「地上波で23年ぶり生中継」…今週の心に刺さったテレビ番組名シーン5選
「ダウンタウン浜田、往復ビンタの効能」「お昼に松潤との妄想」「地上波で23年ぶり生中継」…今週の心に刺さったテレビ番組名シーン5選

テレビはまだまだトガっている。その週に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

テレビウォッチャーの飲用てれび氏が、気になったテレビ番組5本をピックアップする。

振り返りたい「5本」のテレビ番組

テレビは新しい刺激を求めるメディアだ。常に新しい話題や新しいタレントが供給される。一方で、反復のメディアでもある。同じ曜日・時間帯に、ほぼ同じ出演者が似たような内容を届ける。

新しいものも、やがて反復の周期に組み込まれる。しかし、同じことを繰り返すなかで生じるズレが、新たな“トガり”を生み出す。「古い」「予定調和」「似た番組ばかり」――確かにテレビはそうかもしれないが、それは半面にすぎない。今週、個人的に心に刺さった番組を5つ紹介してみたい。

■『千鳥ノブと渋谷お笑い演芸館』(9月22日、NHK総合)

ノブ(千鳥)がMCの新しいお笑い番組。哲夫(笑い飯)、川原克己(天竺鼠)、国崎和也(ランジャタイ)、堂前透(ロングコートダディ)、川北茂澄(真空ジェシカ)が映像ネタを披露するなどしていた。

ただ、この顔ぶれからもわかるように、流れたのは普通のネタではない。川原は喫茶店で店員を延々と呼び続け、国崎はミニタワーに扮して光るキリンに怯え続け、哲夫は漢字の部首「門構え」に挟まれ続ける。

しつこいまでの反復には、もはや“べき乗の美学”を感じる。

ゲストに「お笑いをほとんどみない」という俳優・長谷川博己が呼ばれていたのも謎だ。しかし、長谷川にあわせたツッコミをノブが入れることで、クセのある芸人たちのネタが程よく翻訳されていたようにも思う。NHKで奇妙なお笑い番組がはじまった。

■『ぽかぽか』(9月25日、フジテレビ系)

そんなノブいわく「古(いにしえ)のタレント名鑑」とも言える『ぽかぽか』のトークゲスト。この日の出演は柴田理恵奥山佳恵だった。

目を引いたのは、奥山が松本潤について語る場面。大ファンだという奥山は、松本との妄想を日々繰り広げているらしい。松本との「理想の死に方」まで熱弁し、「松本くんは死に方も綺麗なのよ」などと語っていた。

お昼の番組でアイドルと一緒に死ぬ話。ちょっとした発言で大炎上してしまうテレビの世界で、生放送の『ぽかぽか』は定期的にこういうシーンがあるから目が離せない。

TBSで51年ぶりに生中継されたスポーツ

■『ラヴィット!』(9月26日、TBS系)

女子プロレスラー・上谷沙弥のシーズンレギュラー “卒業”の日。

スタジオにリングが設置され、プロレスの試合が行なわれた。テレビで女子プロレスが生中継されるのは23年ぶり、TBSでは実に51年ぶりだという。

「夢を叶える瞬間を見届けてもらって、本当に幸せです」――試合後、上谷はそう語った。悪夢を見せるはずのヒール・上谷が実現した夢。2月の『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)出演で注目されて以降、一気呵成に駆け抜けてきた軌跡がここにある。テレビを使って新しいなにかが拡大していくプロセスに立ち会うときは、いつだって心が強く動く。

■『魔改造の夜』(9月25日、NHK総合)

走るブランコに笑い、泣かされる日が来るとは思わなかった。企業や大学のエンジニアが日用品を大胆に改造し、飛ばす・走らせるなどの競技で競い合う異色のモノづくりバラエティ番組『魔改造の夜』。今回のお題は「ブランコ25m走」だった。

この番組にかかれば、あらゆる静物が生命を宿したかのように躍動する。それはこの世になかった映像だ。座板にエンジンを積んだブランコが上下に飛び跳ねながら前進する姿の可笑しみ。

勢いに耐えきれず、ゴール手前で自らを壊しながらも走り切る姿の愛おしさ。エンジニアの計算を超えてモノと心が交わる瞬間、アニミズム的な世界がそこに広がる。

■『芸能人格付けチェック 秋の3時間半スペシャル』(9月27日、テレビ朝日系)

「一流芸能人」であれば正解して当然の問題に挑み、間違えるたびに「二流」、「三流」……と降格していくおなじみの番組。今回の“事件”は、歌舞伎役者の市川右團次が、なじみ深いはずの「能楽囃子」の問題で間違えたことだろう。

一方で、それまで全問不正解だった若手俳優の神尾楓珠は見事正解。一流奏者のほうに「引きの美学」を感じたとして、市川に「(引き算は)必要ですよ」と助言するのだった。

それにしても、浜田雅功のMCぶりはもはや“いつもの浜ちゃん”である。今年、体調不良で一時休養していたことを忘れてしまいそうになる。

豪華出演者に対して、「(間違えたら)私が帰りに往復ビンタ(します)」と言い放ち、パブリック・イメージである横暴キャラを利用して最短で笑いどころを作る。そしてすぐにいつもの笑顔を見せて場をフラットに戻す。この一連の動きは、休養前からほとんど変わらない。

新しさと繰り返しが同居するテレビのなかで、浜田はMCとして“繰り返し”を担う。

そうして、安心する“いつもの空気”をまといながら、新しい話題や旬のタレントを輪に入れていく。この新しさと繰り返しの融合こそが、テレビの強さなのだろう。

文/飲用てれび

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