「刑務所から出たら、僕と結婚してください」50歳バツ4女性弁護士…被告人からアクリル板越しにプロポーズ、刑務所から300通もの文通ほか奇想天外の結婚事情
「刑務所から出たら、僕と結婚してください」50歳バツ4女性弁護士…被告人からアクリル板越しにプロポーズ、刑務所から300通もの文通ほか奇想天外の結婚事情

原口未緒さん(50)。“円満離婚”弁護士として、15年間で1000件以上の“泥沼離婚”トラブルを次々と解決してきた凄腕の持ち主だ。

そんな原口さん自身も、これまで4回の結婚と離婚を経験。その波乱に満ちた結婚・離婚事情に迫った。(全3回の1回目)

仕事一筋の超エリート裁判官と結婚するも…

東京都で生まれ育った原口さん。学習院大学法学部を卒業後、5年かけて司法試験に挑み、29歳のとき、晴れて弁護士として法律事務所に就職した。

その“最初の結婚相手”となったのは、司法試験の勉強中に知り合った同級生の裁判官の男性。4年の交際を経て、30歳のときに結婚に至った。

しかし、いざ結婚してみると、仕事一筋の夫は毎晩深夜帰りで、土日もあまり家にいない。一方の原口さんは、仕事に邁進するわけでもなく、子どももなかなか授かることができず、夫婦生活はすれ違っていった。

「何不自由ないんですよ。お互いが働いて、長期休みの日は旅行に行ったり、記念日はおいしいご飯を食べたり、喧嘩もすることがない。でもお互い気持ちの共有がしづらくなって、そこに面白みを感じなくなった。味気なくなってしまったのが一番の理由ですね」(原口さん、以下同)

原口さんが「離婚したい」と切り出してみたものの、不機嫌になって黙り込むだけの夫。話し合いに持ち込むこともできないまま、そこから1年が過ぎた。

「なんとかこの状況を変えたい」と原口さんが目を付けたのは、北海道紋別市にある法律事務所の募集だった。

そこで4代目所長として採用され、北海道に単身赴任することを決めた原口さん。紋別市で弁護士として多忙を極める中、別居婚状態となった夫との心の距離もどんどん遠のいていった。

「北海道と東京、これぐらいの距離がちょうどいいなと思い始めた辺りから、『これって結婚してる意味あるのかな』って思えてきて…」

そして、この赴任先である北海道紋別市での衝撃的な出会いが、原口さんを1回目の離婚へと導くことになったのだった―。

被告人からアクリル板越しにプロポーズ

原口さんが国選弁護人として、覚せい剤事件の裁判を担当していたときのこと。懲役1年の実刑が確定した被告人の男性とアクリル板越しに接見した際、突然こう告げられた。

「刑務所から出てきたら、先生…僕と結婚してください」

弁護士と被告人という禁断の愛、からのアクリル板越しのプロポーズ。まさにドラマのような展開だが、この被告人と原口さんが会ったのは、これがたったの2回目だったというから驚きだ。正直、このプロポーズを原口さんはどう思ったのか。

「最初は冗談かと思いましたよ。でも1番目の夫との結婚は、私からのプロポーズだったので、『あれ、私プロポーズされたの初めてかも…』って、後からじわじわとボディブローのように染みてきちゃったんです」

そこで拘置所にいる被告人に手紙を出した原口さん。

〈冗談だと思うけど、ちょっと言われてうれしかったです〉

すると、被告人から返ってきた手紙には、こう綴られていた。

〈冗談じゃないよ〉

そんな流れで、彼が刑務所にいった後も、文通で愛を深めていった。

いったい刑期1年間で、どれくらい文通を交わしたのか。

「刑務所では受刑態度に応じて便数に制限があり、彼からは月4回程度でしたが、私からは無制限なのでほぼ毎日送っていました。職業柄、刑務所での生活は退屈だと知っていたので、日々の何気ない出来事から心情を、その都度書いて送ってましたね」

300通以上の文通を交わすなかで、彼のどんな人柄に惹かれていったのか。

「私自身、北海道という縁もゆかりもない土地で、一人孤独に働くなか、彼の手紙に書かれている〈頑張ってね〉という言葉にすごく励まされたんです。正直、刑務所ってタバコもお酒もNGで、味付けも薄味ばかりで刺激物を取らないんです。

早寝早起きでテレビもない。そんな超健康的な生活を送っていると、どんな人でも“聖人君子”“お坊さん”みたいになっちゃうんですよ」

そして“お坊さん”化した彼がついに出所の日を迎えることとなる。

刑務所とシャバでの文通愛深め、2回目の結婚を果たすも…

「人妻でありながら、彼からプロポーズを受けて、文通をしていることに、罪悪感もありました。当時の夫にも失礼だと思ったので、ちゃんと離婚しようと決意しました」

33歳で最初の夫と離婚し、34歳のときに刑期を終えた彼と2回目の結婚を果たした原口さん。しかし、そんな彼との結婚生活も、長くは続かなかった。

「出所後の彼はなかなか就職先が決まらず、結果的に“ひも状態”になってしまったんです。そのとき刑務所で知り合った人たちとつるみ始めて、家に帰ってこなくなることが増えました」

刑期中は“お坊さん”化していた彼も、刑期を終えてシャバにでると、少しずつ変わっていってしまった。

そしてついに離婚の決定打となる事件が起きた。

「彼がヤクザ絡みの金銭トラブルを起こしてしまったんです。それで家に置いてあった私の印鑑証明とか実印を勝手に持ち出して、私の車を売却してしまった。それがかなりショックで…同じ家に泥棒と住むことはできないなと思いました」

アクリル板越しのプロポーズから300通以上の文通を交わした末に結ばれた結婚生活は、わずか1年経たずに終止符が打たれた。そのとき、原口さんは35歳になっていた。

#2 「4度の離婚の末に見えた、元夫と離婚理由の共通点」へつづく

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部特集班

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